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新型レクサスTXの成功は約束された!──トヨタのブランド戦略を考える

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新型レクサスTXの成功は約束された!──トヨタのブランド戦略を考える

レクサスのオフローダーが大幅に進化した! 今尾直樹が考察する。

気合の入った北米市場専用モデル

新型レクサスGXのメカニズムを徹底解説──LXとの共通点にも注目!

6月8日、米国で正式に発表されたレクサスの新型車、TXは、現地メディアの予想通り、3列シートのSUVであった。なので、そのことに大きな驚きはなかった。

筆者的に大いに驚いたのは、TXと同時に、予告されていた新型「GX」が同時に初公開されたことである。いっぺんに新型SUVを2台! というシンプルな、シンプルゆえにインパクトのあるサプライズである。

このことについて考察する前にレクサスTXについてご紹介しておこう。まずもって、この新型車はトヨタ「グランド・ハイランダー」のレクサス版である。グランド・ハイランダーというのは昨年2月にデビューした3列シートSUVの北米市場専用モデルで、3列目にもおとなが乗れるサイズのシートと居住空間、それに広い荷室を特長とする。トヨタいわく“究極のファミリーSUV”である。

ちなみに3 row SUVで検索すると、某サイト、ま、『CAR AND DRIVER』の北米版ですけれど、に3列のミド・サイズSUVのランキングが出てくる。それによると、1位はキア、2位ヒョンデで、日本車は5位にホンダ「パイロット」、その後ろにマツダ「CX-9」の名前があがっている。このセグメント、日本車は少々遅れているらしい。グランド・ハイランダーも、そのレクサス版たるTXも、この遅れを取り戻すためのトヨタからの回答なのだ。

話をレクサスTXに戻すと、グランド・ハイランダーをベースにしつつ、レクサス版は例によって、内外のデザインはまるで異なっている。TXのエクステリでだれもが指摘できる特徴は、新しいグリルである。先日イタリア・ミラノで発表された「LBX」同様、空力性能を意識したというユニファイド・スピンドルという新世代のデザインを採用しているのだ。

プラットフォームはGA-Kというエンジン横置き用で、2950mmホイールベースはグランド・ハイランダーと同一ながら、1710/1720mmの前後トレッドはそれぞれ50mmほど拡大されている。トヨタ版が18インチなのに対して、レクサス版は20インチ、もしくは22インチの大径ホイールを装着し、足元を見られるのは世の習い、ということを知らしめてもいる。

パワートレインには以下の3つがある。まず、日本市場のRX、NXでもお馴染みの2.4リッター直4ターボで、こちらはTX 350 と呼ばれる。ピュア内燃機関の350にはFWDとAWDがある。

次いで、この2.4リッター直4ターボと6ATのあいだにモーターを組み込んだ、いわゆるパラレルハイブリッドと、後輪をモーターで駆動するAWDシステム「DIRECT4」を採用する高性能モデルのTX 500hがある。国内のRX500h同様、“F SPORT Performance”のみの設定で、DRS(ダイナミック・リア・ステアリング)なる後輪操舵を備えてもいる。

注目は、新登場の3.5リッターV6とプラグインハイブリッドで、これもDIRECT4 AWDとなる。詳細は不明ながら、TX 550h+と呼ばれるこれは、EV 航続距離53マイル(約85km)を主張する。プリウスPHEVレベルの能力を持っていることになる。

生産はグランド・ハイランダー同様、トヨタのインディアナ工場でおこなわれる。どちらも北米市場専用で、レクサスの日本のサイトに新型GXの詳報はあるのに、TXは無視されているのはそのためだと思われる。

北米ではTX350と500hはこの秋に発売される。北米で組み立てられる最初のレクサス PHEV となる550h+はさらにもうちょっとあとになる。

なぜTXとGXは同時に発表されたのか?さて、筆者がたまげたTXと新型GXの同時デビューについての考察である。ま、たいした考察ではないです。

いまさらながら、新型車というのは通常は一定期間を置いて計画的に発売となる。発売後の改良モデルの投入時期についても考えておく必要がある。なにしろ1台の新型車を開発するには莫大な費用がかかる。ヒットすれば、大きな収益が得られるけれど、凡打に終われば……。

当たり前すぎる話で恐縮です。それゆえTXとGXの発表時期、発表方法にはいろんなアイデアがあったにちがいない。

そういうなか、全長5mほどの、新型GXは4950mm、ホイールベース2850mmだから、少々小ぶりではあるものの、かたや3列シートを売りにするファミリー向けSUVのTXと、3列シートもあるタフな本格オフローダーで、でもソフィスティケイトされたユーティリティヴィークルでもあるという新型GXをダブル発表する意味はどこにあるのか?

すぐさま浮かぶのはインパクトを強めることである。芥川賞と直木賞の同時発表はいつものことだけれど、衆参同日選挙とか、週刊新潮と週刊文春の新聞広告の同日掲載とか、プロレスでいうところのシングルとタッグのダブルタイトルだとか、ダブルはシングルに勝るわけである。それをレクサスはやっている。レクサスはなんて元気なんだ! と、アメリカのひとたちも思ったことだろう。元気があればなんでもできる。そう思ったにちがいない。

もうひとつの狙いは、おおらかなアメリカのひとたちに2台をゴッチャにして混同させる……というと誤解を招く。つまり、異なるキャラクターの2台を2台いっぺんに紹介することで、より魅力的に見せることができたのではあるまいか。

たとえば、である。これがTXだけだと、なあんだ。グランドハイランダーのレクサス版か……で、終わったかもしれない。あるいは新型GXだけだと、GXの従来のコアなファンにはウケたかもしれないけれど、それ以外のもっと大きな層には届かなかった可能性も否定できない。GXはフレーム付きのマニアックな本格4×4だから、である。

つまり、この2台を同時発表することによって、高級ファミリーSUVを求める層にも、高級4×4を求める層にも、レクサスはアピールすることができた。さらに申し上げれば、ふたつのコアなファンがSNSで盛り上がることによって、どちらにも関心がない層にも訴求することができたのである。おそらく。

そして、ここが大事なところ、というのが筆者の主張なのですけれど、無関心な層には新型TXと新型GXの区別がつかないのである。具体的には、3列ラグジュアリーSUVの新時代を告げる新型TXについてレクサスU.S.の責任者はこう表現している。

“It’s only human to want the best seat in the house. And it’s only Lexus to make every seat the best seat.”

(家のなかでいちばんよい席を望むのは人間だけです。そして、すべての席をいちばんよい席にするのはレクサスだけです)

話は少々飛びますけれど、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』なんて大恐慌時代の話なのに、1台のクルマに一家全員と家財道具を載せて西を目指す。やっぱりアメリカのひとびとの記憶には、西部開拓時代の幌馬車以来の記憶が刻み込まれているのである。これまた、たぶん、ですけど。

でもって、新型GXというのは、2002年の導入以来、20年にわたってGXがつくり上げてきたタフなイメージを、洗練させつつ、継承する本格4×4である。そもそもSUVというのはジープであり、ジープというのはヤンキースピリットの歴史と伝統を引き継いでいるものであり、ということは西部開拓史のスピリットに連なるもので、それをニッポン流に解釈したのがレクサスGXということになる。

つまるところ、レクサスはTXとGXを同時発表することによって、新しいことにも挑戦するタフなブランドであることを、アメリカのより多くのひとたちに、より強く、より深くアピールできたわけである。

それもこれも、どっちかといえば、新参者のTXを成功させるためであろう。TXはメイド・イン・U.S.Aのレクサスであり、レクサスU.S.の関係者にとってはより重要で、より近しい存在だからだ。もちろん来年の発売となる新型GXにとって、マイナスになることはひとつもないから、それでいいわけである。

ということで、新しいレクサスTXは計画通りの成功を北米市場でおさめるだろう。というのが、蛇足ながら、筆者の予想である。

文・今尾直樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

41件
  • アンチがいくら騒ごうが売れるんだろうな。
  • > このセグメント、日本車は少々遅れているらしい。グランド・ハイランダーも、そのレクサス版たるTXも、この遅れを取り戻すためのトヨタからの回答なのだ。

    車雑誌のランキングを見てもね。2023年最初の四半期のミッドサイズSUV販売台数(2列含む)は、

    1. フォード・エクスプローラー 58,061台
    2. トヨタ・ハイランダー 55,344台
    3. ジープ・グランドチェロキー 54,502台
    4. ジープ・ラングラー 37,971台
    5. スバル・アウトバック 32,767台

    プレミアムカテゴリでは、
    レクサスRX 25,947台
    BMW X5 17,315台
    メルセデスGLE 15,910台

    米国に住めば分かるけれどミッドサイズSUVではトヨタはもうずっとトップ組だし、3列ミッドサイズでは敵無し。グランド・ハイランダーもTXもこのリードを広げるため。ハイランダーやRX-Lでは狭いという市場の声に応えた車。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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