本誌『ベストカー』にて、毎号技術系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。
今回はbZ4Xで注目を浴びる耳慣れぬ言葉「ステア・バイ・ワイヤ」、日立が快挙!インホイールモーター実現に向けての動き、三菱がカーナビに採用した新技術などをお届け!
ピザ屋さんもビックリ!? ガソリン原チャリ消滅? 25年はEV原チャリ大隆盛になるってマジか
※本稿は2021年10月のものです
文/角田伸幸 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年11月26日号『近未来新聞』より
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■bZ4Xで注目の技術ステア・バイ・ワイヤ
bZ4Xが採用するジェイテクトのステア・バイ・ワイヤシステム。操舵系と転舵系を分離し電気信号で情報をやりとりする
ステアリングとタイヤを物理的に切り離す技術=ステア・バイ・ワイヤ(SBW)がいよいよ本格的な普及期に突入しそうだ。
来年発売されるトヨタの新型EV「bZ4X」がすでに採用を公表済みだし、ドイツの部品メーカーであるシェフラーは、ドイツ・ツーリングカー選手権にSBWを搭載する3台のレースカーを投入、みごと完走を果たしている。
「SBWって、もうスカイラインが導入しているじゃん」という人は半分正解。同車のSBWは、物理的なステアリングシャフトも残しており、SBWが故障した際はこいつがバックアップを行う。
いっぽうbZ4Xが積むSBWは物理的な軸を持たない「本物」で、ステアリングシャフトの代わりに電気信号が、操舵情報や路面からの反力を常時やりとりする。
ここへきてSBWが注目されているのは、自動運転と関係がある。レベル4やレベル5の自動運転では、一時的にせよ人間がペダルやステアリング操作から解放されるわけだが、そこではステアリングを「格納したい」あるいは「どっしりと動かないようにさせておきたい」いう欲求が生まれる。
そのためにはタイヤの動きをステアリングと分離する必要があるわけで、SBWの出番となるわけだ。
ドイツのパーツサプライヤー、シェフラーは「スペースドライブ」というステア・バイ・ワイヤのレースマシンを3台、DTMに投入した
もちろんSBWのいいところはそれだけじゃない。ステアリング・ギア比が可変させられるので、「高速道路ではどっしり安定し、駐車時には大きく切れる」といった背反する特性が両立できるし、雪道でクルマが滑った際に自動でカウンターを当てるといったことも可能だ。
開発の上では右ハンドルと左ハンドルを作りわける必要がなくなるから、工数の単純化やコストにも影響するはずだ。
bZ4Xは、テスラが先行した操縦桿型ステアリングで登場する(※欧米は丸形)。SBWはステアリングの形も変えていくのかもしれない。
■インホイールモーター実現に向け日立が快挙
日立の公式動画から。従来のモーターに比べてエネルギー効率がよく、航続距離が最大2割ほど伸びるというから、おおいに期待したい
EVの駆動方法として研究が続いているインホイールモーター。ホイール内側に小型モーターを仕込むというEVならではの発想だが、バネ下重量増加やモーター出力の確保、耐衝撃性や発熱といった問題があって普及していない。
そんな壁を破ろうと、日立製作所と日立アステモが新しいインホイールシステム「ダイレクト・エレクトリファイド・ホイール」を開発した。先に述べたインホイール方式の問題点をクリアすべく、さまざまな新機軸を盛り込んでいる点がミソだ。
たとえばモーターは新方式の磁石と偏平コイルを用いて重量当たりの出力を世界最高峰クラス(2・5kW/kg)に高めたし、モーターとブレーキ、インバーターを一体成型して高いスペース効率や冷却能力も確保している。
現在、1輪あたりの出力は最大60kWというから、4WDなら240kW(約320ps)という高性能モデルが作れることになる。これ以外にもインホイールモーター化の恩恵は大きく、モーターが占めていた空間をキャビン拡大に充てたり、車輪ごとの制御やタイヤの90度転舵(カニ走り)も可能になるだろう。
個人的には、既存の機械式デフが持つ直進安定性をどこまで担保できるかが興味深いが、期待できる技術であることは事実。実用化に期待だ。
■三菱もカーナビに採用! 3つの単語で場所特定
渋谷の一角はこんな名前。what3wordsは場所を定義する新たなプラットフォームとして注目される
目印になるものがない原っぱなどで、自分のいる場所をうまく説明できずに困ったことはないだろうか。そんな不便を解決すべく面白いスマホアプリが登場した。「what3words(ホワット・スリー・ワード)」という。
仕組みは極めて簡単だ。地球上を3m×3mの正方形に区切り、それら一つひとつに3つの単語を割り振ろうというもの。たとえば下の写真では、渋谷センター街のある地点が「はたち・おおすじ・きねんび」という3単語で表わされている。
ユーザーはグーグルマップと連携したアプリで、ある場所の3単語を調べたり、逆に3単語から場所を検索することができる。地名や番地、目印などに頼らない絶対住所なので、世界中どんな場所でもピンポイントで特定ができるのはすごく便利だ。
このwhat3words、すでに多くの企業が自社サービスに利用し始めているのだが、日本では三菱自動車が海外向けエクリプスクロスのカーナビに採用した。
アウトドア派が多い同車のオーナーに向けて、山や海など、住所がわかりにくい場所を、より直感的に案内しようという狙いらしい。三菱に続いてインドのタタも、このサービスを使い始めたようだ。
地球全部を特定するのに、いったいどれだけの単語があればいいのかは不明だが、筆者はだだっ広いキャンプ場でピザの出前に使ってみたい!
■そのほかの近未来系ニュースを20秒でチェック
●ウーブンシティの進捗状況を説明
10月5日、静岡県裾野市が街づくり説明会を行い、列席したウーブン・プラネットのジェームズ・カフナー社長がウーブンシティの進捗について説明した。それによれば現在は地盤の基礎工事を行っている段階で、来年から建屋の建設に着手、2024年から2025年に第1期計画事業が竣工するとのことだ。
いっぽう裾野市は、トヨタが自前で手掛けるこの実験都市を地元地域に溶け込ませることを課題としており、ウーブンシティの最寄り駅となる岩波駅周辺の再開発が進みそう。地方都市の意欲的な挑戦に期待したい。
2021年2月に行われたウーブンシティ地鎮祭の様子。豊田章男社長も出席
●ホンダ、車載OSにグーグルのアンドロイド・オートを採用
ホンダが、来年以降販売する主要車種のインフォテインメントシステムに、グーグルのアンドロイド・オートを採用すると発表した。
アンドロイドが車載OSとなれば、グーグルマップやYouTubeがスマホなしで使えるうえ、ナビの目的地設定やエアコンの温度設定に優れた音声認識が使えるというメリットもある。車載の通信用SIMの利用料がいくらになるかが気になるが、まずは使ってみて使い勝手を検証してみたい。
●バスの隊列走行実験始まる
高速道路では大型トラックの隊列走行の検証が進んでいるが、JR西日本がソフトバンクと共同でバスの隊列走行実験を始めた。バスの輸送能力や定時制・速達性を高める研究の一環で、大型バスに連接バス、小型バスを混在させて行うという。
レベル4自動運転は公共交通から実現する可能性が高いため、バスの進化は必須。早急な社会実装に期待したい。
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みんなのコメント
しかし、もうまるっきり乗り込めるラジコンカーになりつつありますね。
子供の頃に良く妄想してました。等身大のラジコンに乗り込めたら・・・と。
いっそのことプロポ型コントローラーを備え付けて、シートにデ~ンと腰かけて運転できると面白いかな。