フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント 「ステーションワゴンでも最強を目指す8代目ゴルフ」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

4

デザイン
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走行性能
4
乗り心地
4
積載性
5
燃費
3
価格
4

ステーションワゴンでも最強を目指す8代目ゴルフ

2023.8.14

年式
2022年10月〜モデル
総評
8代目ゴルフR(320PS/420N・m)のステーションワゴンモデル。ゴルフRの称号にふさわしい走行性能と、ステーションワゴン(ヴァリアント)としての実用性能を組み合わせた。8台目ゴルフ向けに専用設計が各所に施されたMQBプラットフォームは完成の域に達した。荷物を積載するシーンが多くなるであろう走行状況でも、ゴルフRならではの一体感あふれる走りが楽しめる。オプション装備の19インチタイヤをしっかり履きこなす電子制御可変ダンパーの働きも秀逸。
満足している点
搭載する直列4気筒2.0Lターボエンジンは、ハッチバックモデルのゴルフRと同じ。全域でトルクフルで、DCTである7速DSGを駆使すれば軽快に、そしてジェントルにも走らせることができた。じつは先代ゴルフRヴァリアントにも長距離試乗しているが、荒れた路面では身体に伝わる上下動がキツかった。その点、この8代目では一転、全域でしなやかだ。高い制動力を誇るブレーキシステムだが、市街地走行レベルでのコントロール性が高い。
不満な点
652万5000円(日本導入時)という価格面での不満。ここまでの高価格帯になると、フォルクスワーゲングループであれば、SUVからBEVなど、さまざまなジャンルの車両が購入可能領域になる。Rならではの走り、所有満足度はとても高いが、同様にフォルクスワーゲン各モデルの性能も格段に上がっている。あえてステーションワゴンボディでスポーツモデルを選択する意義をしっかり見いだせるか。ここが大きな分かれ目になる。
デザイン

4

8代目ゴルフは、このステーションワゴンボディのデザインをもってして完成形になる。存在感の高いフロントマスクから伸びやかなルーフ、そして適度なボリュームをもたせたリヤセクションと、全体のバランスがうまく図られているからだ。ゴルフR専用のバンパー形状になりアグレッシブな印象が高められたので、若干バランスを崩したかに思えるが、スポーツモデルらしい演出であり、空力性能など機能性も高められていることから受け入れられる。
走行性能

4

エンジンスペックには文句なし。シャーシもしっかり320PS/420N・mを受け止めるし、4輪駆動である4MOTIONシステムも扱いやすい。ただ単にハイパワーモデルというスタンスではなく、扱いやすさも同時に打ち出している。カタログで確認できるが出力/トルクともに発生回転域が広くとられた。ステーションワゴンでは積荷がかさんだり、多人数乗車の機会が多くなったりする傾向にあるが、そういった場面でもゆとりある走りが堪能できる。
乗り心地

4

ハッチバックモデル同様にオプション装備となるDCCは、ぜひとも装着いただきたい。モード切り替えは明確で、ことラゲッジに荷物を積載する機会が多くなるステーションワゴンでは必須だからだ。なかでもコンフォートモードでの乗り味は秀逸。しなやかさを強調したハッチバックモデルに対し、ヴァリアントでは後輪側の減衰特性をやや高めにした。これにより、標準のヴァリアントで感じていた車体後部の遅れがなくなりすっきりとした乗り味になった。
積載性

5

1995年から、歴代ゴルフのヴァリアントに試乗したり、個人所有者に同乗したりしてきたが、ステーションワゴンボディこそゴルフの真骨頂だ。8代目も広くて扱いやすい。単に容量が大きいだけでなく、フロアはフラットでサイドも張り出しが少ない。開口部の突起も抑えられている。つまり荷物を出し入れすることに特化した本来の姿を貫いている。ここに後輪の荷重変動を意識したスプリング&ダンパーセッティングが組み合わされる。道具としての性能もピカイチだ。
燃費

3

WLTCの総合モード値で12.2km/L、市街地モードで8.6km/L、郊外モードで12.3km/Lと、ここまではハッチバックボディよりも0.1〜0.2km/L悪化している。しかし高速道路モードでは14.9km/Lと0.2km/L良い数値に。空力特性とのバランスも効いている。実際に高速道路で燃費数値を計測してみると、ハッチバックに対して0.5km/L程度、良好な値を示した(いずれも同じ道路での区間計測値)。
価格

4

ハッチバックボディのゴルフRに対して12万7000円高いゴルフRヴァリアント(652万5000円)。ゴルフRが選択肢に入るなら、ぜひともヴァリアントも候補に! 専用設計が施されたMQBプラットフォーム、ワゴン専用のサス設定、そしてまとまり感の高いデザイン。実用性に優れたラゲッジルームなど注目点は数多い。電子制御可変ダンパー&19インチタイヤ仕様となるオプション装備「DCCパッケージ」(22万円)もぜひ、購入候補に。所有満足度はさらに上がるはずだ。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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