トヨタ GRヤリス 「走行性能を考えるとバーゲンプライスな1台」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

走行性能を考えるとバーゲンプライスな1台

2022.1.21

年式

2020年7月〜モデル

総評

3ドアハッチバックというボディ形状ながら、そのすべてがWRCで勝つために生まれたというその生い立ちを考えれば、とても完成度の高いモデルであると感じさせる。走行性能の高さもさることながら、コストパフォーマンスの高さにも驚かされる。こんなクルマもう出ないと言われる類の1台だが、過去にも類似したモデルはそうないと思う。

満足している点

現実的な価格帯でありながらハイブランドのスポーツモデルにも引けを取らない走行性能の高さは大きな魅力と言える。また、扱いやすいエンジン特性と高速域での安心感が織りなすそのドライブフィールは、間違いなく「踏める」クルマである。その点もスポーツモデルとしては非常に良い点と言える。

不満な点

走行性能が高いことは間違いないが、そこに運転が楽しいという要素も備わっているかは疑問と感じるポイント。もちろんハイパワー4駆ならではの楽しさはあるが、スポーツモデルだから確実なファントゥドライブがあると思うと期待外れと感じてしまう人もいるかもしれない。スポーツモデルに何を求めるかによってこの評価は大きく異なってくる。

デザイン

4

美しいとかカッコいいとかは置いておき、機能性が優先されたデザインだと感じる。そこに機能美を見出す人は多いことだろう。コンパクトハッチヤリスをベースとしながらも、大きく膨らんだフェンダーや冷却性能を考えた各種ダクト、空力を考えた細部の処理などによりエボリューションモデルである雰囲気は抜群に出ている。

走行性能

5

走行性能に関しては文句なしと言える。実際に運転してみると思ったよりも速度が速いことに驚かされる。ハイパワーな1.6Lターボながらターボラグも無く、扱いやすいトルク特性のエンジンと高いボディ剛性によりドライバーには加速感を感じさせないが、スピードメーターを見ると実力が高いことを確認できる。緊張せずに自然体でハイスピードを楽しめてしまうポイントに驚かされる。

乗り心地

5

足回り自体はハードな印象を受けなくもないが、ボディ剛性が高いためそんなハードな足回りをしっかりと受け止めているというイメージで、乗り心地も比較的良好。各種操作系やエンジンのフィールなどはスポーツモデルそのものだが、コンフォート性能も優れていて、長時間乗ってもさして疲れないという印象を受ける。

積載性

2

3ドアハッチバックというジャンルで見ると積載性は高いとは言えない。トランク開口部も狭いため同ボディ形状のモデルと比べると不便と言わざるを得ないだろう。しかし、実質2シーターであることを考えるとこの積載性で困るというユーザーはそういないと思われる。

燃費

2

このモデルに燃費性能を期待する声はそうないと思われるが、コンパクトで比較的軽量な車体である割には良くないと言える。当然ながらハイオク指定なので燃料単価も高い。その加速性能と高速域での安定感についついアクセルを踏みたくなってしまうクルマであるが、踏みすぎてしまうと想像以上にガソリンを消費するので注意が必要だ。

価格

5

走行性能を考えればバーゲンプライスと言える。500万円以下だがサーキットでのラップタイムなどで言えばそれ以上の金額帯のスポーツモデルとも十二分に渡り合える戦闘能力がある。それでいて日常使いもさほど苦でないというのは物凄くコストパフォーマンスが高いと言えるだろう。チューニングベースとして考えてもスタート地点は高いところにある。