テスラ モデルX 「3列目シートがあるテスラ」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

3

デザイン
5
走行性能
4
乗り心地
3
積載性
5
燃費
4
価格
2

3列目シートがあるテスラ

2023.6.21

年式
2016年9月〜モデル
総評
BEV(電気自動車)といえばテスラを思い浮かべる人は多いだろうが、このモデルXをイメージする人は少ないはず。見た目こそずんぐりむっくりしているが、中身はテスラそのもので最新の電動化技術が満載だ。後部ドアが上方へと開く「ファルコンウィングドア」により3列目シートへのアクセスは見た目以上にスムーズ。国内最新モデルでは基本、6人乗りないしは7人乗り仕様が選べる。
満足している点
テスラに共通した高い走行性能が得られる点、そして3列シート化によるマルチな使い勝手だ。先進安全技術にしても最新フェーズが使えるだけでなくOTA経由でアップデートが継続される。ウリであり特徴でもある3列目シートだが、背もたれ、座面ともにシートサイズはゆったりしているし、BEVだから足元も広々。日本のミニバンからの買い換えにも十分対応する。
不満な点
ファルコンウィングドアは3列目シートへのアクセスこそ良いものの、上方に開くことから開閉場所には気を使う必要がある。ボタンを押したり、キーフォブの操作で自動開閉が可能で、開閉時に人や物を検知するとそれに当たる前に停止するが、ドアそのものは大きく重いので操作時には手を挟まないよう注意したい。車両重量がかさむ(最新モデルPlaid では2470kg)点も考慮すべき。
デザイン

5

全長5057mm、全幅1999mm(ドアミラー含めて2271mm)、全高1680mm(車高調整機能の中間位置。最高位置では1740mm)。テスラファミリーらしく面構成は滑らかだ。ボディはものすごく大きいが前オーバーハングは988mmなので躊躇するほど使い勝手は悪くない。もっともこれだけのサイズなので全面投影面積は大きいが、肝心の空気抵抗係数は0.24と優秀だ。
走行性能

4

テスラは車両制御ソフトなど複数のシステムが頻繁にバージョンアップを受けているため、乗るたびにクルマとしての動的な質感が大きく向上する。モデル X Plaidの0-100km/h加速はわずか2.6秒。重量2470kgの重量級ボディにこの加速力が必要か否かは別にして、「燃費(電費)だ、エコだ!」というこの御時世だからこそ一度は味わう価値がある。
乗り心地

3

本来であれば、BEV専用メーカーだし、年間130万台以上も販売(2022年の実績値)と作り慣れているハズなので、当然ながら乗り味は滑らか、と評価したくなるが、ここは多少贔屓目で見ても硬め。路面状態が良い場合はフラットだが連続する荒れた路面では身体へ伝える振動の振幅が大きい。大径タイヤによるバネ下重量の増加にしっかり対応した代償ともいえる。
積載性

5

3列目を使った状態で425L、最大容量はなんと2497Lだ。3列目シートを前倒しすればフラットなフロアとともに、高さ方向にもゆったりした空間が現れる。リヤゲートには電動開閉機能があるので開け閉めそのもは楽だが、ゲートが大きく閉める際、操作ボタンに手が届きにくい。フロントトランクは183Lで50kgまでの積載が可能だ。センターコンソールも使い勝手がいい。
燃費

4

テスラ各モデルは実用的な電費数値(ICEの燃費数値に代わる指標)に優れる。セダンタイプのモデル3では朝の気温がマイナス17度まで下がった極寒の試乗で433km走破して7.11km/kWh。大きく重いモデルXではおおよそ4.5〜5km/kWh台だから、1kWh=21円で計算すると1km走るのに約4.7円かかる。よって計算上ながら同クラスのHVミニバンよりも2倍以上、安価に移動できる。
価格

2

「デュアルモーターAWD」のモデルXが1446万9000 円、上位グレードで3つのモーター「トライモーターAWD」のPlaidでは1666万9900 円(2023年5月12日現在の価格)と非常に高額だ。日本への導入当初は1115万円だった。為替レートや部品価格の向上が正当な理由として挙げられるものの、誰もが入手できる車ではなくなった。現在は左ハンドル仕様のみ。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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