ポルシェ 911 「全ドライバーが一度は憧れるスポーツカー」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

全ドライバーが一度は憧れるスポーツカー

2023.12.20

年式

2019年7月〜モデル

総評

リヤエンジン・リヤ駆動であるRR方式の「後輪で曲がる」感覚をつかみやすい。これがポルシェ911が取っつきやすいスポーツカーであると言われる原点。実際には数々のセオリーに則った運転が求められ、よって一定レベル以上の運転スキルを持ったドライバーでなければおすすめはできないが、だからこそ憧れの一台なのだ。

満足している点

たくさんのセオリーに則った正しい運転操作を行うと、それに対して忠実に反応し、挙動で表してくれるところ。市街地走行でも操る楽しさが濃縮されているから所有満足度は高い。水平対向6気筒3.0Lツインターボは低速域からパワフルで、MTとの相性も良い。最新の電子デバイスはスポーツ走行もアシストしてくれる。

不満な点

性能うんぬんではなく、維持に気を使う点。高額な部品を使うことからランニングコストはかさむが、これは高い性能を保つために納得すべし。気になるのは出先での駐車場所や管理スペース確保の面。純粋なスポーツカーであるため、いたずらや盗難に遭いやすい。クルマが悪いわけではないが、オーナーからすれば不満点だ。

デザイン

5

誰がどこから見てもポルシェとわかるデザインはすでにアイコン化されている。初代から通ずるこのデザインテイストはこの先もずっと継承されるはずだ。じつはボリュームのあるボディラインでも全幅は1850mmに収まる。ギュッと塊感があるから運転席からの見切りも想像以上に良い。スポーツカーらしい機能美にあふれるデザインだ。

走行性能

5

筆者が試乗したのはカレラ GTSの7速MTモデルだ。1速を低めに、7速を高め（80km/hで1250回転）に設定する代わりに、2〜6速のギヤ比をクロスさせて途切れのない加速力が得られるよう造り込んだ。水平対向6気筒3.0Lツインターボは480PS／570N・mと見事な台形トルクカーブなので低速域から力強い。

乗り心地

3

純粋なスポーツカーだからソフトライドな快適性は期待できない。バネレートは高く、ダンパーの減衰力も伸び／縮みともに引き締められているので、路面の凹凸に身体が大きく揺らされることもある。ただし、バキバキに硬い足ではなく、芯があるけど硬すぎない減衰特性があるので、運転中の目線はほぼぶれない。

積載性

2

フロントトランクは深さがあるので使いやすいが、振動はそれなりに伝わる。容量はVDA方式で130L前後。また重量物の積載も上限以内であれば可能ながら、回頭性とのバランスを考えて積み込みたい。身の回り荷物の積載でベストなのは車内だろう。ポルシェ乗りの中にはルーフキャリアを使いこなす強者もいる。

燃費

4

カレラGTSの場合、都市高速と郊外路を流れに合わせて70kmほど走らせて12.5km/Lとパフォーマンスからすれば良い数値。試しに夜間の都市高速を淡々と規制速度で50kmほど走らせてみると17.8km/Lを記録した。7速ギヤと高効率エンジンの相乗効果だ。燃費数値を誇るクルマではないが、ありがたい性能でもある。

価格

2

試乗車のオプション品総額は約637万円。これに車両価格である1942万円（2023年時点）を加えると約2579万円と相当な額に跳ね上がる。純粋に性能に見合った価格なのか、バーゲンプライスと感じるか。年を経るごとに新車での購入が難しくなることは確かだから、人生最後の一台にと願うなら即決されたし。