三菱 eKクロス EV 「タフで力強いイメージを抱かせるBEV」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

4

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
4
燃費
3
価格
2

タフで力強いイメージを抱かせるBEV

2022.11.28

年式
2022年5月〜モデル
総評
2009年に「i-MiEV」を世に送り出した三菱だからこそ、軽BEVの優れた点とマイナス点を熟知した上で、今回のekクロスEVへとつなげた。MNKVによるリリースだが、電動パワートレーンの設計思想には同じく2010年の「リーフ」以降、電動化技術を着実に培っている日産の色も濃い。それだけに安心して使える点がekクロスEV(SAKURA)最大のメリットだ。ただ、補助金ありきの車両価格設定はいかにも高価だ。2024年にはホンダも軽BEV試乗に参入するが、より安価だろう。
満足している点
ekクロスEVはベースであるekクロスと外観上の差別化を極力なくした。内装にしても液晶ディスプレイとメーター内部の液晶表示方法の変更を大きな相違点としつつ、ダッシュパネルやエアコン操作部も可能な限り、同じテイストを保っている。電子制御シフト方式となるためシフト操作部のみ、日産SAKURAと同じシフト操作部に変更されている。ekクロスとしてのデザインを完成形としてそのまま残し、ekクロスEV専用とすべき部分のみを最小限に変更。統一感があって好ましい。
不満な点
走行性能には不足はない。高速道路でも大人4名が乗車した状態での登坂路でもなんなく走り、その状態から100km/hを上限に加速させてもガソリンモデルのような高回転域を多用するエンジンがないから車内は静かだ。もっとも、バッテリー容量から高速道路主体の移動には向かないが、それでも日常走行では満足度が高い。ただし、バッテリー保護の観点からせっかく普及しつつある6kWの普通充電器でも2.9kWが上限となるため自宅充電でのV2Hを堪能できない。ここが不満だ。
デザイン

4

BEVになったからといって、ベースとなったガソリンモデルの「ekクロス」との差別化を大きく行っていない。フロントグリルと、前後のガーニッシュ部分が割と大きな識別点だ。ekクロスはメッシュタイプのグリルとし、ガーニッシュをシルバー加飾&丸型フォグランプを配するのに対して、ekクロスEVはピアノブラックの綿処理構成とし、ガーニッシュをボディカラーと同色化&フォグランプは長方形型にした。別デザインを採用し差別化していた日産SAKURA/デイズとは真逆の方針。
走行性能

4

走行性能は兄弟車である日産SAKURAをまったく同一。195N・mの最大トルクはアクセルを踏んだ瞬間から生み出すため力強い。もっとも、ekクロスのターボモデルとの比較で約2倍のトルクをいきなりタイヤに伝えることはない。前輪駆動でもしっかり伝達できるよう緻密な電動モーター制御で加速力を生み出す。エコ/ノーマル/スポーツのドライブモード切替に加え、イノベーティブペダル オペレーションモードを用意する。これは回生ブレーキを積極的に活用するモードだ。
乗り心地

4

ベースである「G」グレードが1060kg、トップグレードである「P」グレードが1080kgだ。同様の装備となるガソリンモデルのターボ「Tプレミアム」が880kgなので、ざっと200kg、ekクロスEVが重い。確かに、きついカーブでは重さを感じるものの、重くなった車体にあわせてサスペンションの設定を行なっているため、乗り心地面では終始、ekクロスEVが有利だ。それは後席でも同じで、主に前後のピッチングが大きく減少している。三菱のコンパクトカー「ミラージュ」並の快適性がある。
積載性

4

ラゲッジルーム幅は最大で1105mm、高さは875mmと十分な広さ。地上から開口部までの高さは660mm(ekクロスは665mm)と低く、重い荷物でもサッと出し入れができる。助手席を倒し後席の背もたれを前倒しすればスキー板などかなりの長尺物も積載可能だ。ベースのekクロス同様、後席はワンアクションで座面のスライドと背もたれの前倒しが、ラゲッジルーム側からも行える。こうした使い勝手をBEVとなっても継承している点は大いに評価したい。
燃費

3

124km/kWhなので8.06km/kWhの電費性能。BEVで興味深いのは電動駆動ユニットなどの性能で、車両サイズに大きく左右されずに電費性能が決まってくる点だ。搭載する二次バッテリーであるリチウムイオン電池は総電圧350Vで20.0kWhのスペック。急速充電であるチャデモに対応するものの、実際にはバッテリー側は充電上限値を約30kWに制限している。普通充電の場合でも現時点2.9kW制限だ。ここを理解しながら充電サイクルを決めるのが理想的な使い方だ。
価格

2

トップグレードである「P」が2,932,600円、ボトムグレードである「G」が2,398,000円だ。クリーンエネルギー自動車導入促進補助金として両グレードともに550,000円の優遇が受けられる。三菱自動車のWebサイトでオンライン見積りをしてみると、補助金受給後参考価格は「P」の場合、諸費用を込みで2,459,020円だ。これに在住する自治体からのEV補助金なるものを加えると、その分、実質的な購入金額は安価になる。なお、2022年11月時点では受注可能だ。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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