マクラーレン セナ 「クルマ版「音速の貴公子」」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

クルマ版「音速の貴公子」

2021.10.29

年式

2017年12月〜モデル

総評

ナンバープレート取得可能モデルでありながら、サーキット走行を前提とした、国産車で言えば「GT-R NISMO」のようなポジションのモデル。ここまでくると走行性能というよりも存在感だけで語れてしまう。

満足している点

速さはもちろんだが、その存在自体に価値がある。日本にも多くのファンがいた伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナの名前を冠しているのは伊達じゃない。

不満な点

しいて言えば、もう新車として手に入れられないこと。限定わずか500台で、すべての車両のオーナーはクルマが正式発表される前に決まってしまった。

デザイン

5

ひとことでいえば「凄い」。一般的なスーパーカーのような美しさはなく、そこにあるのはエアロダイナミクスに裏打ちされた“速さのためのデザイン”。マクラーレンは一般的に巨大なウイングのようなこれ見よがしな空力デバイスは好まないが、サーキット走行を主眼においたマシンであるセナは別。リヤウイングをはじめ各部は空気を切り裂くかのような凄みがあり、空力へのこだわりはバンパー内部の可動式フラップなど見えない部分まで及んでいて、それが速さに直結している。ヘリコプターからインスピレーションを受けたという、一部をスケルトンにしたドアも面白い。

走行性能

5

800psというエンジンパワーからして、常識はもはや通用しない。340km/hという最高速度も、わずか2.8秒しかかからない停止状態から100km/hまでの加速も、ロードカーとは思えないほど強烈だ。しかし、真骨頂はコーナリング。まず軽い車両重量による軽快感が見事。さらに、猛烈なダウンフォースを武器に高めたコーナリングスピードは、安定しすぎるがゆえに、速さを感じるどころか逆に速度感がないことが凄い。

乗り心地

2

最近のスーパーカーは思い通りに曲がって超高速域でも安定するのに、乗り心地はしなやか。だからセナも……と思って走り始めたら、そうではなかった。サーキットを前提にしたモデルだけあってかなり硬めで、きっとこれはレーシングカーの感覚なのだろう（レーシングカーが未経験なので断言できないが）。乗り心地に関しては、サーキット用モデルだということを実感させられる。カーボンのシェルに薄いパッドを貼っただけのシートも硬派だ！

積載性

1

期待してはいけない。用意された唯一のラゲッジスペースは、キャビン後方の比較的高い位置にある、ヘルメットふたつぶんほどの空間のみ。機内持ち込みサイズのスーツケースも収まらないだろう。このクルマはグランドツアラーではないことを再認識させられる。

燃費

2

燃費として公式に発表されている数値は、WLTPモード計測で「280g/km」というもの。これは言い換えれば「約8.3km/L」。800psを誇る排気量4.0L V8ターボエンジンとしてはずいぶん良好な燃費だが、これは超おとなしく走ったときと解釈するしかない。実際の燃費は……サーキット走行はもちろん一般道でも、もっともっと悪い。

価格

1

日本円における定価は定められておらず、日本向けの商品税込み価格は67万5000ポンド。それを為替相場に合わせて円に換算した金額が車両価格となる。デビュー時の価格は日本円で約1億円だった。ちなみに67万5000ポンドという金額は世界的にみてもかなり割安で、たとえば本国イギリスでは税込み75万ポンドとなる。どこに違いがあるかといえば、日本の消費税率が低いことが効いている。さらに、他地域向けに比べると日本は自動車の輸入に関して関税がかからないことも影響している。