マツダ ロードスターRF 「これぞND型RFの決定版!」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

山田 弘樹
山田 弘樹(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

5

デザイン
5
走行性能
5
乗り心地
5
積載性
3
燃費
5
価格
3

これぞND型RFの決定版!

2024.3.22

年式
2016年12月〜モデル
総評
ロードスターが、登場以来最も大幅な改良を受けた。外観こそ前後のLEDライト化に留まるが、安全面ではACCや「スマート・ブレーキ・サポート」といった先進安全機能が追加され、「マツダコネクト」も進化。さらに電動パワステの質感が大きく向上し、1.5リッターはエンジンマッピングも最適化。「S」以外のグレードには「アシンメトリックLSD」を標準装備するなど、登場から約9年目にして「これぞ決定版」といえる進化を果たした。
満足している点
これまで手応え感なく「スカッ!」と切れ込んでしまっていた電動パワステの操舵フィールが激変したことが、筆者としては一番のグッドポイント。システム的にはステアリングラックの抵抗を低減し、モーターを刷新。その制御を今回からマツダ自身が行うことで大きな洗練を得た。非常に細かな改良だが、油圧パワステ時代に劣らぬステアフィールを得たことで、そのハンドリングは本物になった。人馬一体の操縦性は、さらに高見へ到達した。
不満な点
今回刷新された電子制御系技術の全てが、旧型ロードスターにはレトロフィットできない。理由はサイバーセキュリティ法案への対応をするべく電子プラットフォームを刷新したからで、古いプラットフォームではこれらを動かすことができないからだ。またアシンメトリックLSDは2Lの「RF」や1.5 NR-Aだとそのまま移植可能だが、それ以外の旧モデルではドライブシャフトを始めとした駆動系パーツも新しくする必要があるという。
デザイン

5

マイナーチェンジにもかかわらず灯火類以外デザインに手を加えなかったのは、マツダ開発陣がこれを変える必要性がなかったと判断したからだという。確かに「マイナーチェンジのためのデザインチェンジ」は、筆者も必要ないと思う。代わりにかつてのVスペシャルを彷彿とさせる「Sレザーパッケージ Vセレクション」でタンカラーを復活させ、センターコンソールをソフトパッド化するなど、その質感を大きく向上させたのは素晴らしい。
走行性能

5

1.5L車は国内のハイオクガソリンに適応したエンジンマッピングの変更で約4PSパワーが増えた。重量も増えたため速さに大きな変化はなかったが、ピックアップは良くなった。また6MT車には「DSC-TRACK」モードが加わり、DSC(横滑り防止装置)の制御域が広がった。ある程度のオーバーステアを許容しながらも、発散が大きくなる寸前に制御を働かせてくれるから、サーキットでもより安全にスポーツドライビングが楽しめるようになった。
乗り心地

5

電動パワステの操舵フィールの改善で、まるでダンパーをワンランク上にしたかのような接地感が得られるようになった。今回の改良で重量が増え、一番軽い「S」モデルでも1010kgと1tを超えてしまった。これによって「990S」も生産が終わってしまったが、それを踏まえてもベストな改良だったと言える。大切なのは1tを下回ることではなく、トータルバランスを保つこと。今なおロードスターは最高のライトウェイトスポーツカーだ。
積載性

3

トランク容量はソフトトップが130L。ハードトップの「RF」は電動ルーフを格納する関係か127Lと少し小さい。トランクフードは垂直近くまで開くが、ボディ剛性を確保するためだろう開口部は小さめ。それでも手前側が広くなっており、内部は横幅もそれなりにある。2人で小旅行に行く程度の荷物なら積めるし、それを工夫することこそがロードスターの楽しみだ。昔はトランクルームにキャリーステーを付けるのも流行った。
燃費

5

1.5Lモデルの燃費は16.8km/L〜17.2km/L。2L「RF」の燃費は15.2km/L〜15.8km/L。これはスポーツカーとして考えると素晴らしい燃費性能だ。実際1.5モデルで高速巡航を挟んで移動すると、燃費走りをしなくても18km/L台を普通にマークすることができる。これもひとえにロードスターがいたずらにパワーを追求せず、軽さを大切にしてきたからだ。こんなに健気に頑張っているロードスターが、将来規制で重たくなるのは正直見たくない。
価格

3

2Lエンジンを搭載するRFはプレミアムチョイスだと考えれば379万6100円〜というプライスも納得はできる。1.5Lモデルは一番安価な「S」グレードでも289万8500円で、実際はオプションを付けたり乗り出し価格がそれ以上になることを考えると「オープンカーはやっぱり高級車」という印象を持ってしまうのは事実。35年前は一番安いモデルが170万円だったとボヤいてしまうのは、現状の所得が昔と変わらず、車両価格が上がっているからだ。
山田 弘樹
山田 弘樹
自動車ジャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。この経験を活かし現在執筆活動中。愛車は86年式のAE86と95年式の911カレラ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員
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