BYD ドルフィン 「国産コンパクトのようだけど、どこか違う」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

瓜生洋明
瓜生洋明(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
4
走行性能
3
乗り心地
4
積載性
2
燃費
4
価格
5

国産コンパクトのようだけど、どこか違う

2024.5.7

年式
2023年9月〜モデル
総評
日本人と中国人は、同じアジア人ということもあって顔立ちはよく似ている。ただ、実際には言葉も文化も異なるなど、その違いは少なくない。国産のコンパクトカーとドルフィンの関係も、まさにそういったものだ。ドルフィンには、欧州のコンパクトカーのような「特別さ」はあまり感じられず、どちらかと言えば国産のコンパクトカーに近い。ただ、国産のコンパクトカーだと思って乗ってみると、やはりどこか違う。そうした違いをどのようにとらえるかで、ドルフィンの評価は大きく変わるだろう。
満足している点
少なくとも、性能と価格のバランスを総合したコストパフォーマンスにおいては、現代のBEVにおける最高峰のひとつと言えるだろう。「ワールドクラス」のBEVが日本にやってきたという意味では、好むと好まざるとにかかわらず、注目したいモデルだ。
不満な点
ラゲッジルームや各収納など、使い勝手という点では国産メーカーのコンパクトカーに軍配が上がる。また、ややクセの強いインテリアも、場合によってはネガティブに感じるポイントかもしれない。
デザイン

4

独特なデザインはドルフィンの最大の特徴のひとつだ。エクステリアデザインはオーソドックスなコンパクトカーのようであるが、ボディサイドの「Z」状のプレスラインなど、見るべきところは多い。ただ、「クセの強さ」で言えばインテリアのほうが上回っている。「ドルフィン」という名のとおり、イルカや海をイメージしたデザインの数々は、このクルマが「普通のコンパクトカー」ではないことを強調している。こうしたインテリアのデザインに加え、ディスプレイやシフトセレクターなどに潜む数々のギミックは、正直言って好みの分かれるところではある。そのため、ドルフィンの購入を検討する際には、これらのポイントを入念にチェックしてみることをオススメしたい。
走行性能

3

走りに関しては、良くも悪くも「普通」というのが第一印象だ。BEVらしいなめらかな加速感はあるものの決して過剰ではなく、ガソリン車からの乗り換えでも大きな違和感を覚えることはなさそうだ。ただ、ドルフィンの位置付けを考えると、それはむしろポジティブにとらえられるべきだろう。ハンドリングや足回りに関しても、やはり「普通」だ。そういった意味では「BEVらしさ」を求めるユーザーには不向きかもしれない。
乗り心地

4

ドルフィンの位置するクラスを考えると乗り心地は非常にいい。もちろん、路面のノイズを感じないわけではないが、足回りやボディが見事にマッチングしており、十分に成熟されたモデルのようにすら感じられる。「新興BEVメーカー」と称されることの多いBYDであるが、設立からはすでに20年以上が経過しており、2023年のグローバルにおける販売台数は世界トップ10にランクインしている巨大自動車メーカーだ。また、BEVに限定すれば世界をリードする自動車メーカーのひとつである。そう考えると、ドルフィンの乗り心地が成熟されているのもうなずけるところだ。
積載性

2

ラゲッジルームは通常時で345Lと決して大きくはない。また、後輪のホイールハウスが内側に張り出していることや、開口部が少し高い位置にあることを考えると、使い勝手にも課題が残る。また、室内の各収納も同クラスの国産車と比べるとやや物足りない。やはり、この点においては、国産メーカーに一日の長があると言えるだろう。
燃費

4

スタンダードモデルで400km、ロングレンジモデルで476kmという一充電航続距離は、日常生活においては必要十分以上のものと言えるだろう。バッテリーの劣化については未知数な部分もあるが、BYD自身が8年/15万kmまでの新車保証を行っていることを考えると、実用上はほとんど問題ないだろう。また、CHAdeMO対応はもちろん、V2HやV2Lも可能である点はうれしいポイントだ。
価格

5

正直言って、このクオリティでこの価格は驚異的と言わざるを得ない。「安かろう悪かろう」という言葉もあるが、この価格を実現している最大の要因は大量生産をしていることにあるため、原理的には品質を落とさず低価格を両立させることは可能である。いずれにせよ、コストパフォーマンスの高いモデルであることは確かだ。
瓜生洋明
瓜生洋明
自動車ジャーナリスト
1987年生まれ。大手IT企業や外資系出版社を経て2017年に株式会社ピーコックブルーを創業。現在では平均年齢25歳のメンバーとともに毎月300本超の記事を配信している。愛車のボディカラーを社名にするほどのエンスージアストだが、新しいテクノロジーへの関心も強く、最新モデルは常にチェックしている。
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