最近のスーパースポーツは、超高性能だけど快適性も充分に確保されていて乗り手を選ばないという傾向にある。
スーパーカーの代名詞であるランボルギーニも例外ではなく、たとえばウラカンは段差でフロントスポイラーを擦ってしまいかねない点と横幅にさえ気をつければ、運転に特別難しいところはない。
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もちろんポテンシャルを発揮するには高いスキルが求められるけれど、ドライの高速道路でアクセルペダルを踏み込み甲高い音を響かせて「ランボってすげえ!」と感心するまでなら、それほどハードルは高くない。
と、思っていたけれど、アヴェンタドールSVJはちょっと違った。このクルマは、ランボルギーニのフラグシップであるアヴェンタドールの高性能版。しかもただの高性能版ではなく、ネーミングからも並々ならぬ気合いが伝わってくる。
SVJのうち、まずSV(スーパー・ヴェローチェ)が特別だ。
1970年代の「ミウラSV(スプリント・ヴェローチェ)」、1990年代の「ディアブロSV(スポーツ・ヴェローチェ)」、そして21世紀に入ってからの「ムルシエラゴLP670-4 SV(スーパー・ヴェローチェ)」と、ちょっとずつ意味は異なるけれどランボが特別なモデルに与えてきた記号がSVである。
さらにはそこへ、「ミウラ」をベースにワンオフで作られたプロトタイプ、「イオタ(JOTA)」を意味する「J」も加わる。
つまりSVJとは、花札で言えば“猪鹿蝶”のように切り札的なグレード名であるのだ。
そのアヴェンタドールSVJに乗り込み、ルームミラーを調整しようとして笑ってしまう。巨大なリアスポイラーに邪魔されて、ルームミラーの後方視界はほとんどゼロといっても過言ではないからだ。後方から忍び寄る赤色灯に気を使わなければいけないモデルなのに……。
ただし、リアスポイラーに代表される空力システムが、SVJのSVJたる所以でもある。
リアスポイラーの根元には空気流入口があり、ここから入った空気をリアスポイラー後端から排出するのか、内部のフラップを閉じて排出しないのかが、速度や加速度に応じて自動で選ばれる。
前者の場合、抵抗が減って速度が伸び、後者の場合は車体を地面に押しつけるダウンフォースが働く。さらには左右どちらかのフラップだけを閉じてコーナリング性能を向上させる機能もある。
といった具合に、空気の流れをコントロールする「ALA(エアロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)」が、アヴェンタドールSVJのキモなのだ。イタリア語で翼を意味するALAは、フロントにも備わる。
スーパースポーツの聖地ニュルブルクリンクサーキットで6分44秒97というラップタイムの新記録を叩き出したことには、ALAが大きく寄与しているという。
6.5リッターNA(自然吸気)のV型12気筒エンジンは、アヴェンタドールS比でプラス30psの最高出力770psを誇る。
主に吸排気系の見直しによって出力アップを果たしたというが、トロトロ走っている限り、それほど気持ちがいいエンジンとは思えない。回転フィールは滑らかでも軽やかでもないし、シングルクラッチ式の7速ATの変速はスムーズさの面でも素早さの面でもとくに感心するわけではない。
路面からのショックをドッシン、バッタンと正直に伝える乗り心地もあって、ブーブー不平を漏らしながら走る、不機嫌な乗り物に乗っているような印象だ。
ところが……。
操作に慣れて、アクセルペダルを一段深く踏み込むと、印象が激変した。不機嫌だった猛牛が快活になった。
タコメーターの針が4500rpmあたりを超えると、エンジンのレスポンスは一気に俊敏になり、ごわごわしていた回転フィールも滑らかになる。
何より、ここまでまわすとその快音に耳が奪われ、心も奪われ、細かいことなどどうでもよくなる。自然吸気のV12は、なんと素晴らしいものか!
ドライブモードをノーマルの「ストラダーレ」から「スポーツ」、さらに「コルサ」に切り替えると、エンジンのレスポンスと音はさらに刺激を増し、不満を覚えた7速ATの変速も切れ味鋭いものになる。同時に変速ショックも増すけれど、アドレナリンが分泌されているせいかまるで気にならない。
ダラダラ運転していたときと、ガッツを入れて運転しているときとではぜんぜんちがう。ダラダラをやめると、クルマがギュギュッと引き締まった感じがする。どれくらい引き締まってシャープになったかというと、ライザップのトレーニング前と後ぐらいの違いがある。
ただし問題は、カットオフが働く8500rpmまでまわすと、1速でも軽く80km/hに達してしまう点だ。つまり日本の一般道で楽しめるのはせいぜい3速まで。正直な話、この程度の速度ではALAのありがたみも体感できない。
というわけでアヴェンタドールのSVJは、誰もが快適に楽しめるスーパースポーツという範疇からちょっと外れている。
草レースでもモータースポーツを経験した人や、ランボルギーニ・アカデミアというドライビングスクールで手ほどきを受けた人が、サーキットでスポーツ走行をする時に真価を発揮するモデルだと結論づけたい。
つまり、乗り手を選ぶモデルであるのだ。
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