一回り大きなボディ&ハイブリッドもガソリンも優秀な燃費
トヨタのコンパクトSUV「ヤリスクロス」が発売されました。「ヤリス」と共通のパワートレインやプラットフォームをもつSUVですが、ボディそのものは3ナンバーサイズでヤリスとは別物。あくまでも基本骨格レベルで共通の兄弟的な関係にあるモデルです。
パワートレインは1.5L 3気筒エンジンを搭載。ガソリン車の最高出力は88kW(120PS)、ハイブリッドのシステム最高出力は85kW(116PS)。それぞれ4WDも設定されますが、ガソリン車は「マッド&サンド」、「ロック&ダート」、そしてノーマルの3モードから選択できるマルチテレインセレクトをトヨタのコンパクトSUVとして初採用。リア駆動用モーターをもつハイブリッド4WDも「スノー」、「トライアル」、「ノーマル」から選択できるE-FOURシステムをコンパクトSUVとして初めて採用しています。
先進安全性能では「トヨタセーフティセンス」をガソリン車のベーシックグレード以外に標準装備。ADAS(先進運転支援システム)としては、停止までをカバーするACC「レーダークルーズコントロール」や、車線維持をサポートする「レーントレーシングアシスト」といった機能を搭載しています。
さらに燃費性能は、ガソリン車のFFでWLTCモード18.8~20.2km/L、ハイブリッドのFFではWLTCモードで27.8~30.8km/L。ハイブリッドの4WDでも26.0~28.7km/Lと優秀な数値を誇ります。価格はガソリン車が179万8000円~244万1000円、ハイブリッドは228万4000円~281万5000円となっています。
ライバルのキックスは価格、燃費、装備で差をつけられる
ヤリスクロスのライバルとして「日産 キックス」と比べるユーザーは多いでしょう。キックスはe-POWERと名付けられた1.2LシリーズハイブリッドのFFだけで、燃費性能はWLTCモード21.6km/L。ヤリスクロスのハイブリッドには大差をつけられ、ガソリン車にも迫られてしまっているなど、ヤリスクロスに軍配があがります。
そして価格もヤリスクロスが優勢。キックスのメーカー希望小売価格は。275万9900円~286万9900円。ヤリスクロスのハイブリッド(FF)の最上級グレードでも258万4000円ですから、そのまま比べるとヤリスクロス圧勝といった印象です。
細かい仕様を比べても、ヤリスクロスのハイブリッドZ(最上級グレード)は215/50R18サイズのタイヤを履き、8インチディスプレイオーディオを備え、運転席6ウェイパワーシートとなっていますが、キックスは205/55R17タイヤで、オーディオレスが標準で、シート調整は手動式なのでした。
ヴェゼルやエスクードなど他のライバルも旗色が悪い?
スタイリングやパワートレインの好みはあるでしょうが、ヤリスクロスはコスパで完全にライバルを圧倒しているうえ、ガソリン車も選べ、より手頃な価格設定となっていますから全体としてみても勝負ありといえそう。
SUVというとレジャーの道具を積み込む積載性も気になりますが、ヤリスクロスはBセグメントながら奥行き820mm(後席使用時)、荷室幅1400mmとかなり広く、その容量は390Lとなっています。なお、ゴルフバッグは2つ搭載できるとアナウンスされていますが、ライバルのキックスは3個搭載できるということで、ここではキックスがリード。
ただしヤリスクロスには、コンパクトSUVとしてはかなり贅沢な、バンパー下に足を出し入れすることで開閉できるハンズフリーパワーバックドアが用意されているのは差別化ポイント。さらにレジャーシーンで便利な1500WのAC100Vコンセプトをハイブリッド車に設定しているというのも、実際に購入を検討するとメリットと感じることでしょう。
このクラスでは、ホンダ・ヴェゼル、スズキ・エスクードといったモデルもライバルに挙げられますが、燃費性能や装備・機能と価格のバランスを考えると、当分の間はヤリスクロスがコンパクトSUVマーケットにおいて人気を独占してしまうのでないでしょうか。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※
写真1-3枚目:ヤリスクロス
写真4-5枚目:キックス
写真6枚目:ヴェゼル
写真7枚目:エスクード
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