中古車の魅力は現在売っていないクルマを基本的に安く手に入れることができることにある。しかし、中古車は新車と違い、需要と供給により価格がまったく変わり、欲しい人がたくさんいるのに流通量が足りなければ必然的に高くなる。
限定車ではない特別仕様車は、相場を上昇させる要因になりにくいが、限定車、それもファイナルモデルとなれば価格高騰は必至となる。それも半端ではない上昇ぶりなのだ。
アルファード/ヴェルファイア中古車戦線が熱い!! 一気に高騰中で狙い目はどれ?
2019年の東京モーターショーでスバルはWRX STI EJ20ファイナルエディションを発表するが、このクルマも争奪戦になるのは目に見えている。
そこで過去に発売されて現在中古車としてしか購入できないジャパニーズスポーツカーのファイナルモデル、ファイナルに匹敵するモデルの流通量、中古相場の上昇具合について萩原文博氏が調査をもとに考察していく。
文:萩原文博/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、DAIHATSU、SUBARU
【画像ギャラリー】ファイナルバージョンで最も流通しているランサーエボリューション ファイナルエディション研究
ファイナルバージョンはそのモデルの総決算
1991年にFD3Sがデビューしたが、カブリオレは継続生産され、サバンナRX-7の集大成モデルとして1992年にファイナルバージョンが限定発売された
これまで販売されていた車種が生産終了となると、立つ鳥跡を濁さずではないが、いつの間にかメーカーのHPから車名や写真が無くなりフェードアウトというのが一般的だった。
スポーツカー系の車種ではファイナルモデルの特別仕様車が設定されるケースはあるが、最近ではトヨタマークXや三菱パジェロなど何世代に渡って長い年月発売されたモデルでも設定されるようになった。これはユーザーに長く愛された時代を築いてきたモデルに対してのリスペクトであると捉えたい。
ファイナルエディションという名前で特別仕様車が販売されたのは筆者にとっては1992年10月にマツダサバンナRX-7カブリオレに設定されたのが初だったと記憶している。
2019年いっぱいで生産中になるのに伴い、マークII時代から長い歴史を支えてくれたファンに感謝の意味を込めてマークXファイナルエディションが発売された
その後は2002年3月に発売されたRX-7の限定車「スピリットR」シリーズや同じタイミングで設定された日産R34型スカイラインGT-Rの「ニュル」などが続々と発売された。
ランサーエボリューション エディションはエボXのファイナルでありランエボシリーズのファイナルでもあるファンにとっては特別なモデル
最近では、2015年8月に1000台限定で販売された三菱ランサーエボリューションファイナルエディションが記憶に新しい。
こういったいわゆるファイナルバージョンはそのモデルの総決算として発売されることが多く、シャシーやエンジンがスペシャルとなることが多く、中古車となっても高値で安定していることが多いのだ。
2015年4月から先行予約が始まり、8月の時点では完売したランサーエボリューション ファイナルエディションは1000台限定で新車価格は429万84000円
スペシャル装備で人気絶大
例えば、ランサーエボリューションファイナルエディションは、2Lターボエンジンがチューニングされ最高出力313ps、最大トルク429Nm(43.7kgm)に向上。そのハイパワー化されたエンジンに合わせて、サスペンション、ブレーキ、タイヤを採用している。
2L、直4DOHCターボの4B11はノーマルの300ps/43.0kgmに対し313ps/43.7kgmにスペックアップ。350ps程度への大幅アップを期待していたが信頼性を重視
また、R34型スカイラインGT-Rニュルはレースに使用されるN1仕様エンジンをベースとして、エンジンの中心部品であるピストンやコンロッドなどの重量バランスの均一化を図った高精度バランス品とすることで、高回転域における爽快な回転フィーリングに磨きを掛けている。
R34GT-RのファイナルモデルのニュルのエンジンはN1仕様をベースに専用チューニングが施されていた。ゴールドのヘッドカバーが特別感を強調
さらに、限定車専用のゴールドシリンダーヘッドカバーやフルスケール300km/hの専用スピードメーターを採用しているのだ。
この2モデルのように人気の装備を装着するだけでなく、エンジンやシャシーに手を加えてスペシャルモデルとなったファイナルエディションの人気は不滅ということになっているのだ。
日産から正式には発表されていないが、限定販売のニュルの実際に販売された台数は800台いかないくらいと極めて少ない。専用ボディカラーのミレニアムジェイドメタリックはひと目でニュルであるとわかるため人気が高い。新車価格は610万円
軒並み相場は上昇中
それでは、前出の2モデルを含めたスポーツカーのファイナルモデルの中古車事情を調べてみよう。
まずはR34型スカイラインGT-R VスペックII ニュルからだ。新車時価格は630万円だったVスペックIIニュルだが、現在中古車として流通しているのは4台で中古車の平均価格は3カ月前が約1530万円で、今月は約1660万円と未だに値上がりが続いている。
この相場には価格応談車は含まれていないので、実勢価格はもっと高くなる。
ニュルはVスペックIIとともにMスペックにも設定されていたが、販売比率では圧倒的にVスペックIIだったため、Mスペックニュルは希少価値が高い
続いては、FD3S型RX-7スピリットRシリーズ。3モデル設定されたスピリットタイプRだが、中古車が流通しているのは2シーター5MT仕様のタイプAのみ。
流通台数は3台で、現在の平均価格は約594万円で、新車時価格の399万8000円を大きく上回っている。
そしてランサーエボリューションファイナルエディション。こちらはまだ販売開始から4年と新しいモデルだけあって、流通台数は41台と豊富。平均価格は3カ月前そして今月ともに約510万円と高値安定が続いている。
スピリットRはA(2シーター・280ps・5MT)、B(4シーター・280ps・5MT)、C(4シーター・255ps・4AT)の3タイプが用意され、A、Bが399万8000円、Cが339万8000円。3モデル合計1500台の限定で2002年3月から販売を開始
ファイナルバージョンの人気は高い!!
そのほかのスポーツカーでもファイナルエディションが設定されていたのは知っているだろうか。
まずはトヨタMR-S。2006年11月にミッドシップオープンカーのMR-SにVエディション・ファイナルエディションが1000台限定で発売。
MTとシーケンシャルMT車それぞれに設定されていたが、MT車が6台で平均価格は3カ月前の約107万円から今月は約158万円へ上昇。
いっぽうのシーケンシャル車は10台で平均価格は約74万円から約69万円と値落ちしており、ミッションによって値動きがことなっている。
2007年7月末で生産中止になるにあたり登場した特別仕様車がVエディション・ファイナルエディションだ。6MT、6速シーケンシャルを合わせて1000台の限定販売。新車価格は6MTが232万円、6速シーケンシャルが240万円となっていた
そしてハイブリッドスポーツカーして注目されたホンダCR-Zは2016年6月にα・ファイナルレーベルという特別仕様車を設定。
こちらはパワートレインやシャシーはノーマルだが、人気装備が充実していたモデル。流通台数は5台と少なめで、平均価格は3カ月前の約203万円から今月は約214万円と値上がり傾向となっている。
2916年6月にその年いっぱいで生産中止になるにあたり、ブラック内装、17インチアルミなどが与えられたαファイナルレーベルを販売。写真のブリリアントスポーティブルー・メタリックは特別色。新車価格は6MT、CVTともに280万円で限定販売ではなかった
そして、ファイナルエディションという名前ではないが、先代のダイハツコペンは2012年4月に最後の特別仕様車として「10thアニバーサリーエディション」を発売。
ブラックメッキフロントグリルをはじめ、BBS製15インチアルミホイール、本革のスポーツシートなどを特別装備したモデルだった。中古車はMT車が9台、AT車が12台流通しており、MT車の平均価格はこの3カ月の間約154万円で横這い。
いっぽうのAT車は3カ月前の約139万円から今月は約157万円へと値上がりしている。
2012年8月で生産中止になるにあたり、最後の特別仕様車として2012年4月から販売を開始したのが10thアニバーサリーエディションだった。新車価格は5MTが182万円、4ATが180万円
この3モデルはランエボやGT-Rのように新車時価格を上回ってはいないものの、値落ち額は非常に小さくなっているのが特徴だ。こうしてみると、やはりファイナルバージョンバージョンの人気は高いということは間違いないようだ。
すでに名機EJ20型2L水平対向4気筒ターボを搭載したスバルWRX STI ファイナルエディションが限定555台で予約を開始している。
スバルの特別仕様車の中でも走りに特化したモデルの人気は抜群で、このファイナルエディションも価格が高騰するのは免れないだろう。 ただ、本当に欲しい人の手に渡ってほしいと願っている。
EJ20を搭載するWRX STIのファイナルモデルとして555台限定で販売。2019年10月24日~11月10日に受付し、11月14日に結果発表。価格は452万1000円と安くないが、購入希望者が殺到し、物凄い倍率になることも予想されている
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