利便性と居住性が絶妙な全高 ボディ剛性や足まわりも特筆
今や日本市場におけるホンダの主力モデルと紹介しても過言ではないNシリーズの中にあって、圧倒的に大きなキャビン容量を売り物としたN-BOXほどにポピュラーな存在とは言えないものの、それでも確固たるファン層をつかんで離さないのがここに紹介するN-ONE。
ホンダN-WGNがマイナーチェンジ! ホンダ初の急アクセル抑制機能を採用
エクステリア
セダンタイプのボディながら背は高め、という独自のパッケージ。現行モデルは二代目で、中身は刷新しつつ外観は従来通り(外板パネルは変更なし)のモデルチェンジを施した。最小回転半径はグレードにより4.5m~4.8m。今の時代の軽自動車としては特に”高い〞とは言えない全高は、FF仕様で1545mm。実際に乗り込んでみれば、頭上空間は十二分であるのはもとより、1550mmまでという制限付きが少なくないパレット式の立体駐車場にも乗り入れが可能であることから、「これ以上の背の高さが本当に必要なのか?」と、あらためて自問自答することになるユーザーも少なくなさそうだ。
乗降性
前席後席天井が高めだから乗り降りしやすい。注目は足元で、床とステップの段差がないのが美点だ。スーパ ーハイトワゴン以外でそれを実現しているのは珍しいことだ。そんな現行二代目N-ONEのルックスが、1960年代に一世を風靡した同社の「N360」をモチーフとしていることは、2012年に誕生した初代モデルと同様。それもそのはず、二代目への世代交代に際してはボディ骨格やパワーパック、シャシー、そしてインテリアのデザインなどを一新する一方で、前後のバンパーまわりやライト類、そして法規対応のために必要な部分を除いては、エクステリアデザインはすべて従来型を踏襲という前代未聞の方法で行なわれている。もちろん、フルモデルチェンジに際しては新たなエクステリアデザインを採用という案も模索されたとのこと。しかし、N-ONEらしさを追求していくと結局のところ、初代で提案された姿こそが相応しいという結論に達したのだと言う。
インストルメントパネル
板状の加飾パネルが特徴的。「Original」の場合はホワイトだが、「Premium」系はブラックウッド調、「RS」はスチールヘアライン調とグレードごとに個性化している。かくして、初代モデルと〝うりふたつ〞の姿で現れた現行二代目モデルだが、実車を目前にすると、バンパーなど樹脂部分の新デザインやウインカーの使用時には内周のリングがアンバー色で点滅するクッキリと輝いたDRL(デイタイムランニングライト)、凝ったグラフィックのリヤコンビネーションランプなどを加えることで、新しさを感じられる点が興味深い。一方のインテリアは、ダッシュボードの造形を一新させるなど、こちらは文字通りのフルモデルチェンジが行なわれている。
居住性
後席前席前席はシートは左右が完全に独立し、座った瞬間にフィット感の良さが伝わってくる。サイドサポートの張り出しも大きめで、姿勢をしっかり保持。後席はスーパーハイトワゴンほどの膝まわり空間はないものの、「これだけ広ければ十分」と納得できる余裕がある。座り心地も絶妙で快適だ。テストドライブを行なったのは、ターボエンジンとMTを組み合わせたスポーティグレードの「RS」。「圧迫感の少なさ」や「N360がそうだった」という理由から採用したという〝インパネシフト〞の使い勝手は、やや脇が開く感覚はあるものの操作性は良好。シフトの操作量は少なくないものの、各ギヤがセレクトされた感触は明確で、少々注意深く操作をすれば、アイドリング状態からアクセルペダルに触れずにスタートできる力強さも好印象だ。
うれしい装備
ホンダ車だけの独自アレンジとなる後席座面跳ね上げ機構を搭載。背の高い荷物を積むだけでなく、ベビーカーを後席に積みたいときにも役立つ。床が低いにもかかわらず、床下に深さ190mmのアンダートランクが用意されているのだから凄い。左右幅も500mmに迫る広い空間だ。駐車ブレーキは電動式。軽い力で確実に操作でき、信号待ちなどでブレーキペダルから足を放しても停止状態を保つ機能付き。運転席の脇にあるポケットはスマホ 2 台を挟め、仕切りを外すとドリンクホルダーにもなる。前後席どちらからも手が届く。収納スペースとしてセンターコンソールを備え、ボックスティッシュも置ける。左右席間移動ができるように高さを抑えた設計。運転席のドリンクホルダーはインパネ据え置き型。エアコンの風を当てての保冷/保温ができる。脇にはキー置き場も用意。月間登録台数 1061台(21年8月~22年1月平均値)現行型発表 20年11月WLTCモード燃費 23.0 km/l ※「Original」「Premium」のFF車
ラゲッジルーム
通常時後列格納寺床の低さに驚く。そのおかげもあって他社のハイトワゴンに比べても奥行きが長く確保されている。荷室の拡大は後席を折り畳むことになるが、その際の床は低くフラットだから便利。思いのほか高いボディの剛性感や、しなやかさすら感じさせるフットワークのテイストなどは、端的に言って「とても軽とは思えない」仕上がり。もちろんこのあたりには、外観は踏襲しても〝中身〞が刷新された効果がしっかり発揮されているに違いない。一時の軽自動車の価格からすれば確かにそれなりに高価ではあるものの、そんな対価ゆえの価値を実感させてくれる一台であることは確かだ。
※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.140「2022年軽自動車のすべて」の再録です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/140/
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