■スペックをアピールしなくなった最近のクルマのCM
依然として大きな影響力を持つというTVCM。そのなかでも、制作予算や放送される量がケタ違いといわれているのが自動車メーカーのCMです。
自動車メーカーのCMには、芸能人が起用されている例が見られますが、その背景にはどんな事情があるのでしょうか。
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広告の世界では、古くから「テレビ」、「新聞」、「ラジオ」、「雑誌」の4つを「4大マスメディア広告」と呼び、多くの人に自社の商品やサービスを認知させる方法として重宝してきました。
しかし、現在ではインターネット広告が台頭してきたことで、この4大マスメディア広告への予算は年々減っていっているのが現状です。
そんななかで、テレビへの広告(=CM)は、いまだに巨額の予算が投じられています。
電通が発表したデータによると、2020年には1兆8612億円もの広告費がテレビへと投じられており、2兆2290億円というインターネット広告費にはおよばないものの、新聞(3688億円)、雑誌(1223億円)、ラジオ(1066億円)を大きく上回ることがわかります。
ただ、インターネット広告は個人経営の飲食店などでも多く活用されていますが、テレビに出稿できる企業はそれほど多くありません。
その理由は、インターネット広告が数千円程度から出稿できるのに対し、テレビでCMを放映するためには、少なくとも数百万円単位の予算が必要になるからです。
さらに、民放キー局でゴールデンタイムに放映するためには数千万円は必要とされており、よほどの大手企業でないと出稿することはほとんど不可能です。
加えて、放映するCMを制作するための制作費も必要となります。そうしたことからも、多くの人の目に触れる、民放キー局のゴールデンタイムのCMは、必然的に自動車メーカーのような大手企業のものが多くなります。
そんな自動車メーカーの最近のCMを見ていると、芸能人が出演しているものが多くあることがわかります。
クルマという商品をアピールするのであれば、必ずしも芸能人に頼る必要はないと思われますが、どういった事情があるのでしょうか。
ある大手広告代理店の関係者は、近年のクルマのCMに芸能人が出演することが多くなった理由について、「自動車メーカーとユーザー、それぞれの事情が重なった結果」と話し、次のように説明します。
「たしかに、かつては、『280馬力、3.5リッターV6エンジン搭載!』のように、クルマの機能やスペックをアピールしていた時代もありました。しかし、昨今ではそうしたCMはほとんど見られません。
その理由はいくつかあります。
まず、自動車メーカー側の事情でいえば、クルマの技術が成熟してきたことで、以前ほどスペックで明確な差を出しづらくなったという点があります。
一般的に、『大きいことは良いこと』という価値観がありますが、実用性を考えると普通のクルマの馬力はすでに必要十分ですし、排気量も燃費や税金のことを考えるとむしろダウンサイジング化する流れです。
一時期は燃費性能をアピールすることもありましたが、電気自動車が増えつつあるなかでは、わずかな燃費性能の差はほとんど意味をなさなくなっています。
つまり、多くのユーザーに数字でアピールできるような要素が少なくなったのです」
実際に、かつて存在していた280馬力を上限とする最高出力の自主規制が撤廃された現在でも、一部のスポーツモデルなどをのぞいて、多くのクルマの最高出力は以前とそれほど変わりません。
エンジンのダウンサイジング化が進み、排気量が小さくなったなかで同等のパワーを持っているという点では技術は格段に進歩しているといえますが、よほどクルマに詳しい人でない限り、それをアピールしてもあまり響かないかもしれません。
一方で、ユーザー側にも変化が見られます。以前はCMでそのクルマに興味をもち、雑誌や店舗で詳細を知るというのがおおよその流れでしたが、現在では、興味を持ったらまずインターネットで調べるのが一般的です。
そのため、自動車メーカーとしても、15秒や30秒程度のCMで多くを伝えるのではなく、インパクトのあるCMでまず興味を持ってもらい、その後検索することを見越して公式サイトなどに詳細な情報を掲載するようになったのです。
このように考えると、CMのなかで詳細を説明するのではなく、いかにターゲットとなるユーザーに興味・関心を持ってもらえるかということがCMの重要な役割となります。
時間帯にもよりますが、テレビの視聴頻度が高いのは主婦や子どもです。
そうした層にもっとも響くのは、クルマそのものの説明というよりも、話題の芸能人が派手に登場したり、キャッチーな音楽やコピーが耳に残る、インパクトのあるCMということになります。
■広瀬すずや橋本環奈、中条あやみも出演! 自動車メーカーの狙いとは?
最近のクルマのCMでは、以前ほど直接的にアピールすることは少なくなりましたが、実はさまざまな工夫がなされたうえで、そのクルマの特徴が盛り込まれています。
例えば、現在放送されているスズキ「ワゴンR」や「ワゴンRスマイル」のCMでは、広瀬すずさんが起用され若年層を狙っていることがわかります。
現在放送されているスズキ「ソリオ」のCMでは、吉沢亮さんや橋本環奈さん、パパイヤ鈴木さん、そして2人の子役という計5人の芸能人たちがダンスを繰り広げていますが、この「5人」という点が非常に重要です。
ソリオは、軽自動車のようなルックスではありますが、1.2リッターのエンジンを搭載した登録車であるため、乗車定員は5人となっているのが特徴です。つまり、単に芸能人が登場しているだけでなく、「5人」という点に大きな意味があります。
5人乗車が可能という点をアピールするために、過去のソリオのCMでは、「KAT-TUN」や「TOKIO」といった、5人のメンバーのグループ(当時)を一貫して起用し続けてきました。
また、購入者の平均年齢が高いことで知られるトヨタ「カローラ」シリーズのCMにも自動車メーカー側の意図を見ることができます。
カローラスポーツのCMでは、菅田将暉さんと中条あやみさんという、若者の絶大な支持を集める芸能人を起用。そのほか、ダイハツ「タフト」では中川大志さんやお笑いコンビの千鳥、「タント」では大泉洋さん、三菱新型「eKワゴン・eKクロス」には竹内涼真さんが起用されています。
2021年9月に登場したSUV「カローラクロス」のCMでは、大学生アーティストであるVaundyさんを起用したほか、さらに超大型のLEDディスプレイを活用した革新的な撮影手法で制作したりするなどして、若年層へのアプローチを図っています。
※ ※ ※
一方であえて芸能人を起用しない例も見られ、「芸能人を起用すると、クルマを見てもらいにくくなる」として、いわゆる有名人は起用しない方針を採っている自動車メーカーもあるようです。
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みんなのコメント
クラウンに吉永小百合さんやカムリに田中邦衛さん
だったり、今より車のイメージに近い芸能人が起用
されてた気がします。
有名な俳優は起用しないで純粋に車のイメージを大切
にしたケンメリスカイラインのCMが今でも記憶に残る。
最近のCMはダンスが多くて見てるだけでオジサンには
疲れる。
芸能人使うより不正車検やリコールの謝罪CMだけを流せよ