拡大を続ける冷食マーケット
冷凍食品──いわゆる「冷食」のマーケットは、年々拡大している。
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日本冷凍食品協会の統計によれば、家庭用冷蔵食品の国内生産量は、2013年から2022年までの10年間で約3割増加した。特に新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令し、巣ごもり需要が高まった2020年には、前年比で1割も増加している。2023年は、8年ぶりに家庭用冷蔵食品の国内生産量が前年比割れ(94.1%)したものの、業務用冷蔵食品はほぼ前年同様の国内生産量を維持(99.3%)し、底堅い需要を維持している。
量販店においても、冷凍食品をプッシュする動きが目に付く。2022年9月に開店したライフ豊洲店では、冷凍食品コーナーを従来店舗より拡大したことが話題を集めた。またイオンでは、冷凍食品専門店である「@FROZEN(アットフローズン)」を、2022年8月にイオンスタイル新浦安MONA店に出店し、以降、店舗を増やしている。1906年に創業し、フランス国内で約1000店舗を展開する「Picard(ピカール)」は、2016年に1号店を青山に出店し、以降、リアル店舗のみならず、オンラインショップも含め、日本市場での拡大を続けている。
こういった新機軸の冷食専門店の特徴は、従来、冷食で人気であったうどん、コロッケ、餃子(いずれも2023年の国内生産冷凍食品TOP3)に加え、ちょっとした贅沢を味わえるラインナップも豊富である点だ。
例えば、Picardでは、日本の家庭では、なかなか自作されないであろう、エスカルゴの料理がラインナップされているし、@FROZENでは、人気店の冷凍ラーメン・冷凍餃子が並ぶ。当然、こういった商品は、通常の冷凍食品よりも若干高価なのだが、プチ贅沢な食事を家庭で楽しみたいという内食需要を支えている。
富士経済によれば、2023年の内食マーケットは、前年比108.4%となる61兆7600億円規模にまで拡大したという。この背景には、店舗販売によるものだけではなく、ふるさと納税による冷凍冷蔵食品や生鮮食品拡大も含めた、EC・通販による販売が含まれている。
悲鳴を上げる宅配業界
運送業界は、産業の裏方である。どんな産業であっても、売るモノが売り手から買い手のもとに輸送されなければ、売買は成立しない。つまり、ビジネスの要を支えるのが、運送業界の役割である。
だから、ある産業が拡大すれば、その拡大を支えるべく、運送業界は人知れず奮闘してきた。だがその奮闘も、現在日本社会が直面している人手不足、そして物流クライシスによって、限界を迎えつつある。拡大する冷食マーケットの一部、冷凍冷蔵食品のEC・通販における宅配を担うクール便も、そのひとつだ。
当たり前なのだが、クール便には商品を冷凍・冷蔵状態を保持したまま輸送できる冷凍冷蔵車両が必要になる。冷凍冷蔵装置を装着していない配達車両でも利用可能な、クーラーボックスタイプの輸送箱もあるが、融解事故の懸念もあり、すべてのクール便荷物を完全にカバーできるわけではない。特に冷凍食品を安心して運ぶためには、冷凍冷蔵機能を備えた専用車両が必要となるが、専用車両はそうそうかんたんに増車できないという事情がある。
同様の課題は、宅配車を送り出す宅配各社の営業所でも発生している。メーカーや商社、EC各社の物流センターなどから出荷された冷凍冷蔵食品は、宅配便各社の中継拠点を経由し、営業所へと輸送され、配達されるまで一時保管される。例えば佐川急便では、この年末年始の需要増に備え、各営業所で冷凍冷蔵食品を一時保管するための冷蔵冷凍コンテナを200個以上、臨時増設したという。
ドライバー負担を減らしにくい課題
あくまで宅配全般の話ではあるが、現在実施されている配達ドライバーの負担を減らす対策は、大きくふたつある。ひとつは、再配達の削減。もうひとつは、配送リードタイムの確保である。
再配達の削減については、消費者への啓蒙活動のほか、宅配ロッカーの設置や、置き配の推奨などが行われているが、クール便については、宅配ロッカー・置き配の利用は難しい。というのも、冷凍冷蔵食品は、
「対面手渡しが基本」
だからである。冷凍冷蔵機能を備えた宅配ロッカーも開発されているが、市井(しせい)にはまだごくわずかしか普及していない。置き配については、衛生的な問題はもちろん、融解してしまうため、論外である。
配送リードタイムの確保についても解説しよう。現在、政府主導でゆっくり配送などと呼ばれる、注文から配達までのリードタイムに余裕を設けるサービスを推進している。
これは宅配に限ったことではないのだが、輸配送には繁閑の差が生じる。配達荷物がたくさんあり忙しい日もあれば、荷物が少なく比較的余裕を持って配達できる日もある。注文から配達までのリードタイムに余裕をもたせることで、配達における繁閑の差を平準化し、配達ドライバーへの負担を減らすことが狙いである。
ところが、こと冷凍冷蔵食品に関しては、この配送リードタイムの確保が難しい。前述のとおり、宅配各社の営業所(あるいは物流センター)における冷凍冷蔵食品の保管庫はスペースに限りがあるし、また冷凍冷蔵食品については、配送リードタイムが長くなればなるほど、融解などにともなう品質低下のリスクが高まるからだ。つまり、クール便は、
「配達ドライバーの負担を減らすための対策が実施しにくい」
という構造的課題を抱えている。
冷凍技術進化、宅配リソース不足
それでもなお、宅配各社は、配達ドライバーの配置を最適化するなど、対策を練ろうとしている。しかし、お歳暮、クリスマスケーキ、ふるさと納税、おせち料理など、クール便需要が高まる年末年始においては十分ではなく、結局のところ、「配達ドライバーの皆さん、どうか頑張ってください」という、
「極めて前時代的な対策」
が中心となってしまうのが、現実だ。このクール便問題について、市井では以下のような意見がある。
・冷凍冷蔵ロッカーを含めた宅配ボックスの設置を法律で義務化してしまえばいい。
・冷凍冷蔵食品の配達こそ、ドローンが適任ではないのか。
・昭和の頃には普通に行われてきた、「配達先の近隣に荷物を預かってもらう」コミュニティ型配送を、今こそ復活させるべきだ。
・そもそも、冷凍冷蔵食品のEC・通販における販売量を、クール便のキャパシティに合わせて制限すべきだ。
それぞれ、一考の余地はあるが、技術的な課題、投資対効果の問題など、実現へのハードルは高い。コミュニティ型配送については、今の若者の中には
「隣近所の荷物を預かる」
という慣習があったことすら知らない人もいる。筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は、以前某所で若者たちに対し、このコミュニティ型配送について紹介したところ、
「気持ち悪い」
「絶対に嫌だ」
「そもそも隣に誰が住んでいるか知らないし」
などと、“生理的嫌悪感”にも近い反応をされた経験がある。また、宅配リソースが、拡大を続ける冷食マーケットの足かせとなるのは、まず宅配各社が望むことではないだろう。冷食のニーズは、今後も高まっていく。共働き家庭にとって、冷食は家事の手間を省くための有効な手段であり、冷凍冷蔵技術の進化によって、冷食の品質は驚くほど向上している。
先日、筆者は友人たちを招いて自宅で酒宴を開いたのだが、Picardで購入したムール貝のオードブルはとてもおいしく、一同驚いた。今の冷食は、手抜きの一品ではなく、
「生活を豊かにするもの」
なのだ。
クール便問題解決の難しさ
このようにクール便への需要は今後ますます高まっていくだろうが、配達ドライバーの負担を軽減する有効な対策は乏しい。
残念ながら、
「(冷凍冷蔵食品に限らず)宅配は、再配達を発生させないように、一回できちんと在宅し、受け取ること」
という基本中の基本を守る、消費者のモラル向上くらいしか有効な対策はないといえる。しかし一方で、どんなに頑張っても、急に外出しなければならないこともあるだろう。結局、
「ドライバーさん、ごめんなさい!」
と心で謝りながらも、再発達を発生させてしまった経験を持つ人は、読者の皆さまの中にもいるはずだ。
このクール便問題、とても悩ましい。
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