「トランプリスク」に揺れるウクライナ
2025年3月上旬、アメリカのトランプ大統領はウクライナ向け軍事支援の停止を決めました。この決定により、ウクライナ空軍が導入を進めていたF-16戦闘機の運用継続が困難となる可能性がにわかに浮上しています。
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ウクライナは、オランダ、デンマーク、ノルウェー、ベルギーから供与されたF-16で、ロシア空軍の航空優勢に対抗し、戦略的な制空権を確保しようとしていました。しかし、F-16の運用には高度な兵站支援が不可欠です。特に、機体やエンジン、アビオニクス(航空機搭載電子機器)の維持には、継続的な補給と整備が求められます。F-16は多用途戦闘機として優れていますが、高度な作戦能力ゆえに消耗も激しく、西側諸国の継続的な支援がなくなると、戦力としての価値を大きく損ないます。
ウクライナにとって幸いなことに、3月11日にはアメリカの軍事支援が再開されることになりましたが、一時的とはいえアメリカが支援を停止した事実はウクライナやヨーロッパ諸国に大きな衝撃を与えました。
これまで、ウクライナ空軍はアメリカの支援を受けながらパイロットの訓練を進め、運用基盤を整備してきましたが、今回の軍事支援停止により、その取り組みは深刻な打撃を受ける可能性が出てきたといえるでしょう。特に、精密誘導兵器や交換部品の供給が滞れば、F-16が戦力としては期待できなくなり、その早期喪失は避けられないと考えられるからです。
こうした状況下で、フランスが供与した「ミラージュ2000-5」戦闘機が再評価されつつあります。「ミラージュ2000」はエンジン、アビオニクス、兵装が純フランス製であることから、アメリカの支援に依存することなく運用を継続できる強みを持ちます。
2025年3月7日には、「ミラージュ2000」がロシアのKh-101巡航ミサイルを撃墜し、その戦力としての有用性を証明しました。現時点での配備機数は明らかにされていないものの、アメリカとの関係性次第では、今後ウクライナ空軍の主力戦闘機になるかもしれません。
スウェーデン製戦闘機の実戦投入あるか?
また、ウクライナはかねてよりスウェーデン製「グリペン」戦闘機の導入を検討しており、両国のあいだではすでに合意形成が進んでいます。しかし、アメリカ製F-16の供与が優先されたため、この計画は後回しにされていました。アメリカの支援停止を受け、「グリペン」の導入が再び現実味を帯びてきたといえるでしょう。
「グリペン」は、軽量かつ運用コストが低い戦闘機であり、短距離離着陸(STOL)能力を備えるため、ウクライナの限定的なインフラ環境に適応しやすいメリットがあります。さらに、スウェーデンはウクライナへの長期的な軍事支援を表明しており、必要な部品や兵器の供給も継続される可能性が高い点も重要です。
ただし「グリペン」のエンジンRM12はアメリカ製であり、主要な兵装もアメリカ製が多いため、完全に「トランプリスク」を回避できるわけではない点には留意すべきかもしれません。
いずれにせよ、アメリカの軍事支援停止はウクライナ空軍にとって厳しい局面をもたらす可能性があり、早期に再開したとはいえ「最悪のビジョンを見せてしまった」という事実は覆せないでしょう。今回の決定は、ウクライナの航空戦力の中核をアメリカ製戦闘機に依存するリスクを露呈させ、ヨーロッパ製戦闘機の戦略的価値を再評価する契機ともなり得ます。
ウクライナへ供与されるF-16の数は「ミラージュ2000」と「グリペン」を足しても上回りますから、早期の軍事支援再開が最もウクライナにとって望ましいのは間違いありません。しかし、「ミラージュ2000」はフランス政府の継続的な支援と運用の容易さを背景に、今後のウクライナ空軍の主力機として台頭する可能性があり、また、「グリペン」はそのコストパフォーマンスと独立した兵站支援能力により、ウクライナの防空戦略の新たな選択肢として現実味を増します。
ひょっとしたら、トランプ政権の発足が、ウクライナの「脱アメリカ化」を促進させるかもしれません。
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みんなのコメント
ウクライナは冷静だわ。