羽目を外したようなクルマ MGモーター MG4 EV Xパワー(196点)
自動車メーカーは、時々羽目を外したようなクルマを作る時がある。メルセデス・ベンツは、初代Aクラスに2基の1.9L 4気筒ターボエンジンを詰め込んだ、A 38を生み出した過去がある。
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フォルクスワーゲンは、ベントレーに載るW型12気筒エンジンを6代目ゴルフに押し込んだこともある。その結果、GTI W12-650という馬鹿げたホットハッチが生み出された。ただし、コンセプトカーやプロトタイプ止まりという場合が殆どだ。
ところが、MGモーターは量産まで振り切った。一見すると、英国では珍しくないMG4と大きくは違わない。5ドアハッチバックの、穏やかな電動ファミリーカーだと感じるだろう。
しかし、MG4 EV Xパワーはツインモーターで、最高出力435psを誇る。0-100km/h加速を3.8秒でこなす。数字だけを見れば、ポルシェ911 カレラを上回る。そして不思議なことに、今回の6台では最も安価な価格で英国では売られている。
この事実を確認すれば、3位の得点を獲得したと聞いても不思議ではないだろう。だが優勝には届かなかった。正確性や方向性が、今ひとつ磨き込まれていないためだ。
スリル満点な走りが楽しいホットロッド
MG4 EV Xパワーはロケットのように速く、英国郊外の起伏が多い路面を流暢にこなす。一方でサスペンションは柔らかすぎ、操る自信を抱きにくい。パワーデリバリーも、もう少し洗練されていいだろう。
英国の電気自動車としては安価な、3万6495ポンド(約660万円)という値段を考えれば、動力性能に見合う高性能なダンパーを奢ることは難しいのだろう。スプリングレートが、通常のMG4より15%高められただけに過ぎないそうだ。
パワーを追求したホットロッド的といえ、本当の意味でのドライバーズカーとは呼べない。もしかすると、ベーシックなMG4の方が高得点を狙えたかもしれない。
とはいえ、スリル満点な走りが楽しいことも事実。もう少し、アイデアが練られるべきだったといえる。
MGモーター MG4 Xパワー(英国仕様)のスペック
英国価格:3万6495ポンド(約660万円)
全長:4287mm
全幅:1836mm
全高:1504mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:3.8秒
航続距離:384km
電費:5.3km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1800kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:61.8kWh
最高出力:435ps(システム総合)
最大トルク:61.1kg-m(システム総合)
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(四輪駆動)
普段使いできる小さなバッテリーEV アバルト500e(208点)
お手頃価格な電動ドライバーズカーを選ぶ今回の審査では、最大300点満点で評価した。しかし、230点を超えるモデルはなかった。100点満点なら、75点を超えなかったということ。残念なことに、優勝車にも改善の余地は少なくない。
それでも、ドライバーズカーとして真剣に受け止められるクルマが2台あった。週末のために、中途半端な内燃エンジンのホットハッチを選ぶより、積極的に勧めたいと思える魅力があった。
2位にランクインしたアバルト500eが、その1台。ボディサイズは小さく、実用性は限られる。航続距離も、同クラスのモデルで比べれば短い。英国価格も正直高い。それでもこの順位を掴んだわけは、それだけ運転が楽しかったということだ。
アバルト500eは、普段使いできるコンパクト・バッテリーEVの丁度いいパッケージングにある。イリヤ・バプラートが、2+1レイアウトの小型車だと表現したが、確かにそのとおり。助手席の人がシートを少し前へずらせば、リアシートにも大人が1人座れる。
もう片方のリアシートは、背もたれを倒して荷室と繋げられる。日常的な買い物に困らない空間を作れる。全長3631mmというサイズを考えれば、まともな広さだ。
ドライビングポジションは、完璧とはいえない。通常のフィアット500eより自然だが、身長の高いドライバーの場合、ステアリングホイールの位置がしっくり来ないかもしれない。オフセットしたブレーキペダルは、左足で踏んだ方が楽だろう。
公道で使い切れるシャシーとパワー
しかし、1度慣れてしまえば大丈夫。比較的身長の高い筆者でも、車内は窮屈ではない。アバルトが追加した、スピーカーから響いてくるエンジン音は、オフのまま運転した方が良いかもしれないが。
一般道では、そのコンパクトなサイズが光る。ノース・ヨークムーアズ国立公園の道が、500eのために設計されたように感じたほど。タイトなヘアピンを抜け、急勾配を勢いよく登る。航続距離が短めでも、徹底的に楽しい。
英国郊外の公道で使い切れるシャシーとパワーこそ、500eの強み。路面の凹凸でボディは激しく揺れるものの、落ち着きを失うほどではない。適度な緊張感が気持ちいい。
シャシーは、ある程度の自由を許す。ステアリングホイールには、しっかり感触が伝わり、反応は活き活きとしている。23.8kg-mのトルクを解き放てば、不満のないダッシュを披露する。グリップ力も充分ある。
ただし、歴代の傑作ホットハッチのように、アクセルペダルの加減での姿勢制御は難しい。プジョー205 GTiのようなタックインはできない。コーナーでは早めにアクセルペダルを蹴飛ばし、アウト側へ膨らまない加減を見つつ、前へ押し出すのがいいだろう。
確かに、少しやりすぎな部分はある。だがむしろ、それが6名の審査員が好印象を抱いた理由ではないかと思う。実用性で及ばない部分を、小型犬のように活発な個性で見事に補っている。
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)のスペック
英国価格:3万8195ポンド(約691万円)
全長:3631mm
全幅:1683mm
全高:1529mm
最高速度:154km/h
0-100km/h加速:7.0秒
航続距離:252km
電費:5.4km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1410kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:37.8kWh
急速充電能力:85kW(DC)
最高出力:154ps
最大トルク:23.8kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(前輪駆動)
この続きは、手頃で楽しいEVのベストは?(4)にて。
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