さらなる盛り上がりが期待されるヴィンテージクラス
TBCCでは1972年までに生産された車両(およびその継続生産車)を対象に、袖ヶ浦でのベストラップタイム別にクラス分けされたカテゴリーで競われるレース形式走行の他、スポーツ走行枠も用意されているが、とりわけ戦前生産車と戦後のリジッドアクスル車はヴィンテージクラスとして区別されている。ヴィンテージクラスには毎回5~8台ほどの戦前車が参加しており、今回は6台の名車たちがパドックに登場した。
ヴィンテージクラスの今後の展望について自身も1935年型MG PBで参加しているTBCC実行委員の田中伸一さんに伺ってみた。
「現在はまだタウンカーもレースカーも混成でのスポーツ走行ですが、参加車両が15台くらいまで増えればクラス分けやレース形式走行の可能性も見えてきますね」
車齢80年近い戦前車をサーキット走行が可能なコンディションに保つには、多大なる労力と情熱が必要となることが察せられるが、今後いっそうの盛り上がりが期待されるカテゴリーである。
戦前の小さなGTカー、アミルカーが走る
毎回珠玉のヴェテランカーが揃うヴィンテージクラスで、今回特にエンスージァストたちの目を惹きつけた1台のクルマがあった。それが「1929年型アミルカー CGSS」。アミルカーは1920年代にフランスで流行した “サイクルカー” と呼ばれるカテゴリーの小型・軽便な自動車で、その素性の良さを活かして生み出されたグランドツーリングカー CGSSはレースやラリーでも活躍したという。わが国に上陸して日も浅いというこのアミルカーは、現オーナーが欧州の高名なコレクターから譲り受けた車両で、完璧ともいえるコンディションであった。
この車両のオーナーはアミルカーの他にも数多くの名車を所有、「第1回日本グランプリの時には友人とスバル360で鈴鹿まで観に行ったよ」なんてエピソードも飛び出してくるクルマ趣味の大先輩である。わが国におけるモータースポーツを黎明期から愉しんできた粋人は、袖ヶ浦のコースでこの稀少な名車の走りを存分に堪能されていた。
今回登場したアミルカー CGSSのプリペア、メンテナンスを担っているのはスペシャルショップのラ・コルサ・テクニカ。同社代表の佐藤 択さんも車両オーナーよりステアリングを託された1933年型MG Cタイプ・モンテリ・ミジェットで出走していた。様々な年代の車両をサーキットで走らせてきた佐藤さんに戦前車の運転について尋ねてみた。
「戦前のクルマは細いタイヤやシンクロ機構を持たないトランスミッションをはじめ、現代のクルマとはかなり勝手も異なります。現代車ではクルマ側のサポートのおかげで何気なく行える操作のひとつを取っても、戦前車では機械との細やかな対話が要求されます。それをスムーズに速く走らせることができたときに得られる刺激は、洗練された現代のクルマにはないものですね」
限られた性能を引き出すためには高度で危険な作業が必要であった戦前のクルマ。産業技術(と自動車文化)が芽吹き出した頃の先進技術と先人の気概に想いを馳せながら、手作りの宝物のようなクルマを走らせる・・・・・・まさにクルマ趣味の極みといえるだろう。
今回のTBCCは朝こそ薄曇りだったものの、おおよそ2回目の走行枠、各クラスの決勝が始まる頃には雨が降り出し、スーパー/ハイパー・クリスタル・カップ決勝の時点ではヘビーウェットのコースコンディションとなった。しかし、大きなクラッシュなどもなくレースが進行したのは、TBCCのレースカテゴリーがそれぞれに同じぐらいの走行タイム別に分けられているという部分も大きいといえるだろう。
なお、次回のTBCCは9月10日(日)の開催となる。詳細に関してはTBCC公式サイトをご覧いただきたい。
全36枚 「第17回 Tokyo Bayside Classic Cup」詳細レポ
6台がエントリーしたヴィンテージ・クラス。2回目の走行枠は雨に祟られるも快走を見せた。
TBCC初登場となった戦前フランスのグランドツーリングカー、アミルカー CGSS。
小柄なボディながらボートテールやエンジンターンド加工の計器板など、優雅な設えを持つ。
ヴィンテージ・クラス #181 1929年型 アミルカー CGSS 杉田選手
ヴィンテージ・クラス #182 1933年型 MG Cタイプ・モンテリ・ミジェット 佐藤選手
ヴィンテージ・クラス #91 1929年型 ライレー9 12/4 モノポスト 春山選手
ヴィンテージ・クラス #71 1935年型 ラゴンダ・レイピア・スペシャル 小平選手
ヴィンテージ・クラス #51 1935年型 MG PB 田中選手
ヴィンテージ・クラス #152 1934年型 MG NA マグネット 竹林選手
レース形式走行に参加希望者に向けて行われるお試しといえるスポーツ走行枠。今回は24台がエントリーした。
スポーツ走行クラス #173 1971年型 ダットサン・ブルーバード 大快選手
スポーツ走行クラス #174 1991年型 ランチア・デルタ・インテグラーレ 渡辺選手
スポーツ走行クラス #168 1959年型 オースチン A35 澁澤選手
スポーツ走行クラス #180 1999年型 トミーカイラ ZZ 中川選手
スポーツ走行クラス #154 2009年型 アバルト500 岡戸選手
レース形式のエントリー・クラス、クラブマンズ・カップにはミニやMGなど29台がエントリー。
クラブマンズ・カップU2000クラス #150 1973年型 アルファ・ロメオ 2000GTV 小川選手
クラブマンズ・カップU2000クラス #159 1973年型 トライアンフ・ドロマイト 隅田選手
クラブマンズ・カップU2000クラス #80 1982年型 MG B 中河原選手
クラブマンズ・カップU1500クラス #13 1959年型 オースチン・ヒーレー・スプライト Mk-I 石井選手
クラブマンズ・カップMINIクラス #251 1994年型 ローバー・ミニ 佐藤選手
ミドル・クラスのレース・カテゴリー、クリスタル・カップには28台がエントリーした。
クリスタル・カップU2000クラス #38 1968年型 フォード・アングリア 石川選手
クリスタル・カップU2000クラス #72 1972年型 アルファ・ロメオ 2000GTV 佐々木選手
クリスタル・カップU2000クラス #58 1969年型 フォード・エスコートMk-I 小平選手
クリスタル・カップMINIクラス #39 1974年型 BLミニ・クラブマン1275GT 伊藤選手
クリスタル・カップU1500クラス #8 1960年型 オースチン・ヒーレー・アシュレイGT 森住選手
クリスタル・カップ賞典外 #40 1964年型 シボレー・コルベット 小関選手
高レベルなレースが繰り広げられる、スーパー/ハイパー・クリスタル・カップには20台がエントリー。
ハイパー・クリスタル・カップ #155 1967年型 アルファ・ロメオ 1300GTジュニア 佐藤選手
ハイパー・クリスタル・カップ #122 1964年型 ロータス・エラン 藤崎選手
ハイパー・クリスタル・カップ #271 1972年型 アルファ・ロメオ・スパイダー 藤田選手
スーパー・クリスタル・カップU2000クラス #163 1967年型 アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリント・ヴェローチェ 藤田選手
スーパー・クリスタル・カップU1500クラス #117 1990年型 ローバー・ミニ 矢代選手
レース終了後はサーキット内のレストランで表彰式が行われ、引き続き昼食と懇親会が開かれた。
毎回恒例の記念撮影は、雨が降り出してしまったため、レストランのテラスに全員集合してパチリ。
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