身近なスポーティ車として、いまや貴重な存在となるのが、スズキの2台だ。一台は、軽自動車のアルトワークスで、もう一台は登録車の小型ハッチバックであるスイフトスポーツである。いずれも、廉価な車種は200万円以下で買える。
それに対し、身近なスポーツカーやスポーティ車という印象のあった、マツダ・ロードスターはSグレードで260.1万円から、新型スバルBRZ(トヨタ86は10月下旬発売予定)はRグレードで308万円から、ホンダ・シビックのタイプRは、すでに前型が7月に生産を終了しており、モデルチェンジをした新型は来年の発売予定だが、前型でも475.2万円からとなり、いずれも高額商品となっている。
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そこで、若者でも買える身近なスポーティカーとして、スイフトスポーツとアルトワークスの魅力、そしてこうしたクルマを育んだスズキという会社について改めてお伝えしたいと思う。
文/御堀直嗣
写真/スズキ、ベストカーweb編集部
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■200万円以下でこんなに楽しいクルマはめったにない!
車重はFFの5MTが670kg、フルタイム4WDの5MTが720kg、5GSが740kg。エンジンは64ps/10.2kgmを発生する658cc、直3インタークーラーターボ
670kgという超コンパクトで軽量なFFママシンを、5速MTで駆る楽しさをぜひ味わってほしい
スズキの2台の詳細を改めて見ると、アルトワークスは5MTと5AGS(自動クラッチ式自動変速)の選択肢があり、5AGSは4輪駆動車のみになる。5MTと5AGSの基本は、前輪駆動(FWD)だ。
エンジンは、直列3気筒ガソリンターボで最高出力は64馬力である。5MTの場合、車両重量は670kgでしかなく、運転しても軽快な挙動が印象深い。
エンジン性能は軽自動車規格により64馬力が限度だが、最大トルクはターボエンジンのため100Nmある。パワー・ウェイト・レシオを試算すると、10.46kg/PSとなり、悪くない数字だ。トルクの大きさと、軽い車両重量を活かし、瞬発力を味わうことができる。
車重は6MTが970kg、6ATが990kg。エンジンは1371cc、直4ターボで140ps/23.4kgmを発生
6MTのシフトフィールは小気味よく決まる。初心者にも扱いやすい操作性がスイスポの魅力だ
スイフトスポーツは、6MTと6ATの選択肢があり、全車FWDだ。エンジンは1.4L直列4気筒ガソリンターボで、最高出力は140馬力である。パワー・ウェイト・レシオを計算すると、1トンを切る軽い車両重量(970kg)と過給エンジンであることによって、6.92kg/psと一桁台に入る。230Nmの最大トルクであることも含め、かなりの加速感を味わえるはずだ。
他の車種と性能を比較してみると、ロードスターの廉価車種であるSは、6MTの後輪駆動(RWD)で、1.5Lの自然吸気エンジンだから、最高出力は132馬力だ。最大トルクも152Nmに止まる。
こちらも車両重量は1トンを切る970kgで、パワー・ウェイト・レシオは7.5kg/PSになるが、ターボエンジンのスイフトスポーツのほうが上回る。もちろん、RWDの味わいがロードスターの魅力であることは間違いない。
BRZは、廉価車種のRの場合、新型はエンジン排気量が大きくなって(前型は2L)、2.4L水平対向4気筒ガソリンの最高出力が235馬力だ。パワー・ウェイト・レシオは5.36kg/psとなり、車両重量は1260kgだが、エンジン性能の高さが優秀な数値をもたらしている。
前型のシビック・タイプRは、2Lのガソリンターボエンジンで最高出力は320馬力に達し、パワー・ウェイト・レシオは4.3kg/psと、もっとも優れる。
それら他社と比較しても、スイフトスポーツのスポーツ性能は遜色なく、200万円以下で手に入る嬉しさは大きい。また、軽自動車のアルトワークスの価値も、十分高いといえるだろう。
ちなみにひと言加えれば、スイフトの廉価車種といえるXGは、FWDの5MT車で153.56万円であり、それでいて860kgという車両重量の軽さを活かしたパワー・ウェイト・レシオは、9.45kg/psでひと桁となる。91馬力のエンジンでも壮快な運転を味わえるだろう。
欧州車は、高性能車種があることを前提に車体やシャシーが設計され、そのうえで廉価車種の優れた操縦安定性や軽快な乗り味を体験することがあるが、スイフトも同様の魅力を味わえる日本車だと思う。
スイフト(左)とスイフトスポーツ(右)
■スズキはコストの安い軽だけでなく、手頃なスポーツ車を発売した功績は大きい
日本の量産軽自動車としては初となるスズライトは、1955年10月に発表。スズライトの「スズ」は”スズキ”の略、「ライト」”軽い”という意味のほか、”光明”を意味している。当時、四輪車に2サイクルエンジンを搭載して成功させたのも、FF方式を日本で初めて採用したのもスズライトだった。エンジンは15.1psの351cc、空冷2サイクル2気筒
身近な価格設定だけでなく運転の楽しさを提供するという面で、スズキはかねてよりそうした思考を持ち続ける自動車メーカーではないか。
1963年に、国内の本格的な自動車レースとして、鈴鹿サーキットで日本グランプリが開催された。その際、スズキはスズライトで参戦し、軽自動車のクラスで1~2位を獲得した。
スズキも、同じ静岡県のホンダ同様に、自転車にエンジンを取り付けた2輪車から作りはじめ、いずれは4輪自動車への参入を狙っていた。その最初のクルマがスズライトだ。スズライトの登場をきっかけに、スバル360、マツダR360、三菱ミニカといった軽自動車が続々と誕生する。
スズライトの後継がフロンテで、高速性能を上げ、イタリアの高速道路をミラノからローマまで平均時速125kmで走った。運転したのは、有名な英国のレーシングドライバーであるスターリング・モスと、2輪ライダーの伊藤光夫だった。
1968年、当時速度無制限だったイタリアの高速道路、太陽の道、ミラノ→ナポリ間全746.9kmを平均速度122.44km/hで走破。360ccの軽自動車としては驚異的なスピードと耐久性を世界に知らしめた。写真は元F1ドライバーのスターリング・モスが運転した赤いフロンテSS 。もう一人のドライバーはGPライダーの伊藤光夫
ホンダZから遅れること約1年の1971年9月、スズキは満を持してフロンテクーペを発表した。 ボディサイズは全長2995×全幅1295×全高1200mm。ベルトラインは美しいコークボトルラインになっており、それがリアクオーターウインドウを経てルーフへとつながる。リアエンドも大胆にカットされている
1971年には、フロンテクーペという2人乗り(のちに4人乗りも追加)の軽自動車を世に送り出した。排気量は当時の360ccだったが、2ストロークの3気筒で37馬力を出し、このエンジンが、日本特有のフォーミュラレースだったFL500の主流となるのである。
ミニF1と表現されることもあったFL500には私も1978~79年に参戦し、ほかにホンダエンジンを搭載する選手も一部にいたが、スズキが圧倒的優位を誇っていた。
初代アルトは1979年5月、4ナンバーの軽商用車として発売された。開発の指揮をとったのは現スズキ会長の鈴木修氏
初代アルトワークスは1987年、2代目アルトに追加された。軽量ボディにフルタイム4WDと550ccの3気筒DOHCターボエンジンを組み合わせた
1979年に、「アルト47万円」という衝撃的な低価格で初代アルトが誕生した。2代目で、さっそくアルトワークスが現われる。そして、ワークスカップと呼ばれるレースも開催されるようになった。
スイフトでは、2002年にイグニス(海外)の車名で世界ジュニアラリー選手権(JWRC)への参戦をはじめた。2004年と2007年にドライバー選手権のタイトルを獲得する。この活動は2010年まで続けられ、また世界ラリー選手権(WRC)へも2007~08年とSX4で参戦している。
そのほか、田嶋伸博(通称モンスター田嶋)が米国のパイクスピークヒルクライムに参戦したのも、スズキ車が基となった。車両の中身は特別仕様だったが、モータースポーツ活動と関係を保ち続けるスズキの姿を、国内外含め歴史のなかで見ることができる。
大手自動車メーカーに比べ、広告宣伝を含めた参戦規模で必ずしも目立つ活動ではなかったかもしれないが、手近な車種で誰もが参加できるモータースポーツと関りを持ってきたのがスズキといえるだろう。
そうした歴史を顧みれば、いま改めて手ごろな価格で手に入れられるスポーティ車種としてのアルトワークスやスイフトスポーツに乗ることは、運転することを楽しむ人々にとっての誇りといって間違いない。
クルマの喜びは、一つの姿ではなく、スズキにはほかに他社では類を見ないジムニーがあり、SUVとして独自の存在であるハスラーがあり、遊びに出かけるクルマとしてのワゴンRがあり、というように、単なる移動手段というだけでなく、クルマがある喜びに目を向け続けるスズキの姿勢がみえてくるのではないか。
2代目スイフトスポーツはJWRCにも登場直後から投入され、当初は信頼性が足りなかったものの2回のドライバーズタイトルを獲得。スズキのWRC撤退後もJWRC参戦は2010年まで継続
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みんなのコメント
それでもアルトワークスのCMにあった
「いま、マニュアルに乗る」というキャッチコピーは
優等生アピールのCMが多い御時世で
よくぞ言ってくれたよ。