高く評価されにくいクラシックカーの再現
グレートブリテン島の南東に、チルストンパークという、18世紀に建てられた邸宅がある。レンガ造りの壁と、美しく装飾された窓を、寄棟屋根が覆う。英国的な上げ下げ式の窓枠や、大きな暖炉を備えつつ、南イタリアの別荘を彷彿とさせる佇まいは見事だ。
【画像】違和感ナシのレプリカ? クーリエ・キャデラックとセビル 現代技術で高度に蘇る名車たち 全103枚
モダンさとクラシックさが、絶妙に融合。現在は高級ホテルとして活用されている。
趣味の良い贅沢が味わえるとして、利用者からの評判は高いという。
チルストンパークの建築は、華やかなローマ時代に影響を受けたといえる。クルマも、懐古趣味的なデザインが好まれることは多い。とはいえ、ローマ時代の馬車へ強く憧れる人はいないだろう。
アメリカ・カリフォルニア州には、1928年のメルセデス・ベンツSSKを蘇らせたいと願った、エクスカリバー・オートモビル社が存在した。同社によるSSの発売は1963年で、数10年ほど遡っただけだが、クルマは建築より時間の流れが速い。
一般的に、クラシカルなスタイリングの再現は、高く評価されにくい。現代的なモデルをベースに、均整の取れたプロポーションを生み出すことは、簡単でもない。その時代感にそぐわないディティールが、与えられがちになる。
BMW傘下後のミニやフィアット500などは、新たにデザインし直すことで、巧みに再解釈されている。しかし、英国のNGカーズや日本の光岡はどうだろう。世界に通用する完成度とはいいにくいと思う。
現代技術で運転しやすい540Kのレプリカ
1936年発表のメルセデス・ベンツ540Kが、1980年代後半に驚くほどの高額で取引されていることへ、疑問を抱いた英国人がいた。企業の展示会用ブースの製作で業績を伸ばした、クーリエ・プロダクツ社を営んでいた、ロバート・メイドメント氏だ。
彼は、過度の出費を抑えつつ、現代的な技術で運転のしやすさを叶えたレプリカを作ろうと考えた。ゼロからの開発は選ばず、手頃な既存モデルを改造するという、賢明な手法で。技術的な変更は、それを得意とする企業へ外注することを選んだ。
自社の株主を説得したメイドメントは、プロトタイプの予算を工面。当時のロールス・ロイスの半額程度へ金額を抑え、受注生産するという新規の事業計画が立てられた。発売目標は1991年。5万ポンドは、モーガン・プラス8の2台分の英国価格に相当した。
多くのレプリカが不自然に見える理由を、彼はタイヤやホイール、ボディのバランスにあると捉えていた。市場に流通するクルマのホイールベースなどを計測し、540Kの再現に最適なベース車両を探すことから、プロトタイプの開発は始まった。
一企業の社長として、メイドメントはキャデラックを好んでいた。偶然にも、540Kにかなり近い比率にあったのが、彼が乗っていた1978年式のサルーン、セビル。長いホイールベースと、幅が細くサイドウォールの高いタイヤを備えていた。
チームは自動車設計未経験 ルーフは維持
開発チームは、自動車設計には無縁だった自社の技術者と、子供用ライドカーの設計経験を持つ人物、メイドメント自身という3名で構成。彼らは中古車市場を探し、インテリアの状態が良い1978年式を別に見つけ出した。
少し無謀な態勢だったことを、彼は後年に認めている。とはいえ、ベース車両のドライバビリティを可能な限り維持しつつ、古いメルセデス・ベンツを再現することへ、果敢に挑んでいる。
オリジナルの540Kはコンバーチブルだが、ボディ剛性を保つうえで、ルーフを切り取ることは危険だと判断。すぐに、セビルのスチール製ルーフを維持することが決まった。しかし、ソフトトップを背負ったように見えるよう、偽装が施された。
これにより、コンバーチブルへの改造という、技術的なリスクからは開放された。長いルーフは中央でカットされたが、ボディの骨格が残されたことで、セビル本来の登録番号も維持できた。メイドメントは、ロードスターだと晩年まで主張し続けたが。
アルミニウム製のボディパネルは、職人による手仕事。その下側には、セビルのボディシェルが残されていた。リアのサスペンションは、基本的にそのまま。フロントアクスルは、幅が狭く加工されたエンジンルームの前方へ移設されている。
丸いヘッドライトを載せるバーも、剛性を担う構造の一部。エンジンルーム前部を支える、スチール製フレームとなっている。
この続きは、クーリエ・キャデラック(2)にて。
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