カスタマイズしたり、チューニングするのもクルマ遊びのひとつ。そこで重要なのはチューニングの素材になりうるクルマかどうか。
大好きなクルマをベースにするのが一番だが、どうにもパーツが少ないと触りようがないのも事実。では、どれを買えばいいのか、チューニングに『買い』なクルマ5つをピックアップ。
話題のクラウンヴェルファイア顔負け!? 名門ファミリーでも本家と別物な派生車 5選
文/加茂 新、写真/TOYOTA、SUZUKI、FIAT、加茂 新
【画像ギャラリー】やらなきゃ逆に失礼でしょ!! チューニングベースに最適な『イジってさらに楽しい』車たち!!
■ECUが現代車チューニングの鍵
現代の車はECU(電子制御装置)でエンジンを制御する。ECU内のデータが書き換え可能な車を選ばないと目立ったチューンは何もできないということになる
チューニング三種の神器といえば「ソレ・タコ・デュアル」。ソレックスキャブ、タコ足(等長エキマニ)、デュアル出しマフラーだった。あれから30年。じつは現在もあまり変わっていない。当時のキャブレターにあたるECUがキモになる。
現在はECUでエンジンを制御。ECUがいじれないと速度リミッター解除はもちろん、パワーアップや、燃費向上、アクセルレスポンスの調整など、なにもできない。
ECU書き換えは、自動車メーカー的としては行っていない。アフターパーツサプライヤーがそれぞれ内部データを解析して書き換える。これが可能な車種を選ばないと前途多難である。それをふまえて、これからいじって遊べる5車種はこちらだ。
■キング・オブ・チューニング 86/BRZ
チューニングベースの王道、86/BRZ。チューンナップパーツも豊富にあり、もちろんECUチューンも可能だ
今、チューニングベースにするなら王道は86/BRZ。王貞治と長嶋茂雄が合体したくらいの王道感漂う存在! その名の通り86なんて、AE86の「ハチロク」から来ているわけで、トヨタ側もいじって遊ぶベース車と認識。
ECUチューンは可能。ポイントになるのはツインインジェクターであること。86/BRZは直噴とポート噴射を併用した「D-4S」を採用し、低負荷域はポート噴射、高負荷粋は直噴メインで、併用している。
直噴は燃費も出力も期待できるが、シビアな特性により現在大容量アフター品がない。すなわち直噴エンジン=インジェクター容量が出力の限界、になってしまう。過給器を取り付けてもガソリンが足りなくなってしまうのだ。
それがFA20エンジンだとポート噴射で補えるし、ポートインジェクターは大容量品に交換できるので。、かなりパワーを出せるのだ。
もともと200psのエンジンだが、市販のターボキットで250~300ps、スーパーチャージャーでも同様。エンジンの限界としてはおおよそ400psまで。ミッションはMTが300ps、ATは400psくらいまで耐えられるようである。意外にもATの方が丈夫でスーパーチャージャーと組み合わせるとなかなかおもしろい。
気になる車検もターボやスーパーチャージャー自体はまったく問題なし。すべてキットが出ていて、推奨する排気系にすれば排ガスや音量も問題なし。要約すると「やりたい放題」ができるのが86/BRZなのである。
■ターボチューニング無双 スイフトスポーツ
現行モデルになりターボ化され、よりチューニング向けとなったスイフトスポーツ。車体価格も安いので、色々と盛り込みたくなる
先代もいじって遊べる素材だったが、現行モデルになりターボ化されたスイフトスポーツは素材としてバッチリ。
まず最初の関門であるECUは問題なくチューン可能。ターボ車だけあってその効果が大きい。もともと140psしかないが、ECU書き換えだけで170psくらいが見込める。20%のパワーアップは奥様もお子様も助手席で体感できるレベル。それが10万円ほどなのでコスパ最高である。
マフラー交換もオススメ。最新者は昔のように何十馬力も上がらない。しかし、アクセルレスポンスが激変する!! アクセル全開で行う「パワーチェック」では表れない部分である。
アクセルを踏み込んだ瞬間にトルクが弾けるように出て、瞬時に加速していくのは、クルマとの一体感が高まり快感!! 市街地をゆっくり走っていても楽しくなる、まさにチューニングの醍醐味である。
サスペンションなども豊富に揃い、車体価格の安さから、アフターパーツも低価格で高性能なものが多い。ネックになるのはディファレンシャル。とにかくトルクがあるので、ノーマルのオープンデフではすぐにイン側が空転してしまう。
LSDを装着してみると、「そういえば雨の日の右左折時のフラフラ感もオープンデフのせいだったのか!」と分かるシチュエーションは意外に多い。LSDは本体が約10万円、取り付けに4~5万円と費用は掛かるが、街乗りメインの方にもぜひオススメしたいチューニングだ。
■まもなくブレイクのネクストランエボ GRヤリス
GRヤリスはWRCのホモロゲーションモデルとして開発されているだけに、今後のチューンドカーの中心となりえる存在だ
ここ20年のチューニングはランエボ、インプレッサ、スカイラインGT-Rという4WD勢が中心にいた。残ったのはWRX STIとちょっと高価なR35なわけだが、そこに登場したGRヤリスは次の中心になる存在。
1.6L+ターボ+4WDで272psは相当な原石である。2021年7月時点でECUチューンは不可。しかし、各メーカーが開発中なので、遠くない未来に可能になるはず。
北国を中心に車両販売は好調で、北海道では爆発的にチューニング好きに売れているという。トヨタからもGRパーツとして、LSDなどがラインアップされており、メーカー公式パーツでのチューニングも可能。
アフター品も日々増え続けていて、サスペンション、ブレーキ、シート、マフラー、冷却系などなど、発売から1年経たずしてほぼパーツは出揃っている。
メカニズム的にカギになるのはトランスファー。エンジンからの駆動力をリアデフに伝える部分で、ここを意図的に滑らすことで前後の駆動配分を変えることができるシステム。滑らすがゆえに熱が発生するので、これがどこまで持つか、後付けのオイルクーラーなどで対策ができるのかはまだ不明。
駆動力配分は前6:後4と、5:5、3:7が選択可能で、FR的な走りも楽しめる。ECUが解析できれば、任意で駆動力配分をいじれるセレクターも作れるかもしれないという。セレクターと駆動系オイルクーラーが確立されればさらに面白い存在になる。
■かわいい見た目で過激な走り ABARTH595
かわいらしいフォルムのアバルト595だが、ノーマルからしてなかなかに熱い特性を持つ。サス選びがキーポイントとなりそうだ
現代版フィアット500のホットモデル、アバルト595。
「かわい~!!」なんて声が女子から飛ぶが、中身は1.4L+ターボのFF。もっとも性能が高い「コンペティツィオーネ」は180ps/23.5kgmで車重1120kgと、そこそこな運動性を持つ。しかも、それが2300mmのホイールベースに搭載され、結構じゃじゃ馬な特性。
ここにきて国内最大のチューニングパーツメーカー「HKS」がアバルトチューン開始を表明。「そういえば、結構熱いパッケージのクルマだよね」と俄然注目を集めている。
気になるECUはチューニング可能。ターボ車なのでサクッと200psオーバーが狙えるので、費用対効果が大きい。
キーポイントはサスペンション。リアダンパーが「水平?」というほど斜めにマウントされ、そのストロークは極小。ホイールベースの短さもあり、正直ハネて乗り心地が悪い。そこでパワーを引き出して、雨でも降ろうものなら、そこはかとない不安感を覚える。
ノーマルが決して快適なサスではないので、アフター品でしなやかなものを選びたい。海外メーカーや国内のアバルトパーツメーカーに加えて、HKSでは、サスペンション、マフラーを開発中。同社の「パワーエディター」的な簡易ブーストアップができるパーツも開発中とのことで、これからアバルトは熱くなる。
■この先10年のチューニングを担う存在 GR86
2021年秋には登場すると言われる2代目86/BRZ。先代で不評だった部分が改善されてくる可能性が高いので、よりチューニング向きになるといってもいい
2021年秋には登場すると言われる2代目86/BRZももちろんチューニングベース車として推しておきたい。
発売前なので詳細はわからないが、現時点の情報をまとめると、
・エンジンは同じベースでNAのまま2.4L化
・ツインインジェクターの「D-4S」も継続
・足まわりも基本の設計は同じ
・あとはだいたい同じ(笑)とのこと
ツインインジェクター方式が継続されたので、これで安心して(笑)過給器後付けチューンも可能。ミッションはやや弱かったがトヨタ側も問題を認識しているので、改善されてくる可能性が高い。
サスペンションも大まかな設計は同じなので、ストラット&マルチリンクのベターなもの。室内もほぼ同じだという。となるとチューニングベース車として素質は高いはず。
最大の難関であるECUチューンだが、これはトヨタ側もECUチューンできないクルマは、結果として車両販売も低迷することがわかっているので、とんでもないプロテクトは掛けないはず。
「ダメだよ、触っちゃダメだよ、絶対ダメだからね!!」とゆるいプロテクトで発売するという、ダチョウ倶楽部的な可能性が高く、GR86もチューニングベースとして最高レベルの素材になるだろう。
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