国内で新車として売られる小型/普通乗用車のなかで、SUVは全体の約25%を占めている。2000年代の中盤頃は10%以下だったから、この15年ほどの間にSUVの売れ行きは急増した。
販売ランキングの上位に入るSUVには、コンパクトサイズではヤリスクロス、ライズ、ヴェゼルなどがある。ミドルサイズからLサイズでは、ハリアーやRAV4が人気だ。
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これらのSUVは、大半の車種がハイブリッドを用意する。2020年度(2020年4月から2021年3月)に国内で売られた小型/普通乗用車の内、40%近くがハイブリッドや電気自動車などの「電動車」だったから、SUVのハイブリッド比率も高い。
そうなるとSUVを買う時は、多くのユーザーがハイブリッドとガソリンエンジンの選択に悩むだろう。
そこで2020年6月にデビューしてから1年が経つものの、3月/7位、1万428台、4月/6位、7112台、5月/4位、6313台と、人気が衰えないハリアーを例に、ハイブリッドとガソリンエンジンはどちらを買ったほうがいいのか、徹底研究!
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーweb編集部、トヨタ
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■ガソリンNAエンジンに比べて59万円高いハリアーハイブリッド
2020年6月に発売された4代目ハリアーはクーペスタイルの高級SUVとして圧倒的な人気を誇る。ボディサイズは全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mm
質感高く仕上げられたハリアーのコクピット
ハリアーの場合、ハイブリッドの価格は、ガソリンNA(自然吸気)エンジンに比べて59万円高い。この差額は大きな部類に入る。ハイブリッドとガソリンNAエンジンの価格差は、一般的には1.5L以下のコンパクトな車種なら35万~40万円、ミドル/Lサイズでも50万円前後が多い。
ハイブリッドの装備をガソリンNAエンジンよりも充実させた場合は別だが、装備が同等で、価格差が60万円前後に達する車種は珍しい。
背景にはメカニズムの違いがある。ハリアーのガソリンNAエンジンは排気量が2Lだが、ハイブリッドは2.5Lがベースだから動力性能も高い。
そのために価格差も広がった。RAV4のエンジンやハイブリッドシステムもハリアーと共通で、2WD・X同士で比べると、価格差はハリアーと同等の60万円に達する。
それでもハイブリッドは、ガソリンエンジンに比べると、購入時に納める税金が安い。環境性能割と3年分の自動車重量税を合計した金額は、ハリアーにガソリンNAエンジンを搭載した2WD・G(価格は341万円)が10万5000円、2WDハイブリッドG(価格は400万円)は非課税だから徴収されない。
したがって、59万円の価格差から税金の差額となる10万5000円を差し引いた48万5000円が実質的な価格差だ。
■価格差48万5000円 どれくらい走ればモトがとれる?
パワートレインは2Lガソリン(左)2.5Lハイブリッド(右)の2種類。駆動方式はそれぞれFFと4WDを選択可能
ハイブリッドZ(2WD)のWLTCモード燃費は22.3km/Lを達成。動力性能と環境性能の両立を実現した
そこでハリアーのハイブリッドを購入した場合、48万5000円の実質価格差をどの程度の距離を走れば取り戻せるのか計算してみたい。
ハリアー2WDのWLTCモード燃費は、2LのガソリンNAエンジンが15.4km/L、2.5Lのハイブリッドは22.3km/Lだ。
実用燃費をWLTCモード燃費、レギュラーガソリン価格を1L当たり145円で計算すると(直近では150円/Lを超えるが平均すれば145円前後)、ガソリンNAエンジンの燃料代は1km走行当たり9.4円だ。ハイブリッドは6.5円になる。つまりハイブリッドは、ガソリンNAエンジンに比べて1km走行当たり2.9円を節約できる。
実質価格差は前述の48万5000円だから、この金額を燃料代の節約で取り戻すには、16万kmの走行を要する。
ハリアーではガソリンNAエンジンとハイブリッドの価格差が大きく、なおかつハイブリッドのWLTCモード数値はガソリンNAエンジンの1.4倍に留まるため、実質価格差を燃料代の節約によって取り戻せる距離が長くなった。1年間に1万5000kmを走っても10年少々を要する。
この事情もあり、ハリアーではハイブリッドよりもガソリンNAエンジンのほうが多く売られている。現在の販売比率は、NAエンジンが65%、ハイブリッドは35%だ。
■購入3年以内に売却すればハイブリッドが有利に
ボディカラーはホワイトパールクリスタルシャイン、シルバー系のスティールブロンドメタリック、ブラックの3色に人気が集中している
ハリアーの損得勘定では、ガソリンNAエンジンが有利だが、購入してから短期間で売却する場合はハイブリッドの不利が抑えられる。
この背景には、ハリアーが中古車市場で高い人気を得ていることが挙げられる。ガソリンNAエンジン、ハイブリッドともに、残価設定ローンを組むと、3年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)は59%に達する。一般的な残価率は43~48%だから、59%は相当な好条件で、アルファードS・Cパッケージの55%を上まわる。
仮に3年後に新車価格の59%で売却できれば、ハリアー2WD・Gは201万円に達する。3年間の価値の低下は140万円だ。2WDハイブリッドGは236万円で売却され、3年間に下がった価値は164万円になる。
3年後に売却するなら、ガソリンNAエンジンとハイブリッドの差額は24万円に収まり、しかもハイブリッドは前述の通り税額も10万5000円安い。差額は13万5000円まで縮まる。
さらに燃料代も1km走行当たり2.9円、3年間/3万kmの走行であれば8万7000円節約できるから、3年間に4万8000円(1年間に1万6000円)を多く払えばハイブリッドを使用できる。
1年間の走行距離が1万5000kmなら、3年間に4万5000kmを走るため、13万5000円の差額がほぼ解消される。
クルマの売買には、必ずメーカーや販売店の利益が上乗せされるから、基本的には故障が増え始めるまで10年以上にわたって乗るのが得策だ。
このような使い方をすると、ハイブリッドでも売却時の金額は下がり、ガソリンエンジン車と大差はなくなる。従って前述の16万kmで差額を取り戻せる計算が成り立つ。
しかし短期間で売却する場合は、特にハイブリッドは高値で売られるため、3年程度の使用であれば負担を小さく抑えられる。
ハリアーで3年間の残価設定ローンを均等払いで組んだ場合、月々の返済額は、ガソリンNAエンジンの2WD・Gは5万1100円、2WDハイブリッドGは6万円だ。月々8900円の差額でハイブリッドを使えて、購入時の税額も10万5000円安い。
ハリアーのグレードと価格
■結論:長く乗るならNAエンジン、それ以外ならハイブリッド!
ハリアーの4WD車は電気式4WDシステム「E-Four」を採用。前後輪のトルクを100:0~20:80のなかで最適な配分に調整する
以上のように、長く乗るならガソリンエンジン、短期間で乗り代えたり、残価設定ローンを使うユーザーにはハイブリッドのメリットが大きい。使い方や乗り方に応じて、ガソリンエンジンとハイブリッドの損得勘定も違ってくるわけだ。
このほかガソリンエンジンとハイブリッドでは、動力性能、加速感、静粛性などにも違いが生じる。特にハリアーでは、ガソリンエンジンは直列4気筒2Lで、ハイブリッドは2.5Lエンジンにモーター駆動を組み合わせた。そのために性能や運転感覚の差も開きやすい。
ハリアーに2LガソリンNAエンジンを搭載する2WD・Gの車両重量は1570kgだ。実用的にはパワー不足はないが、上級SUVとしては少々物足りない。特に2000~3000回転の実用域では、もう少し粘り強さが欲しい。4500回転を超えると、吹き上がりが活発になるが、ノイズも耳障りに感じられてしまう。
その点でハイブリッドは、登坂路に差し掛かってアクセルペダルを踏み増した時など、反応の素早いモーターが駆動力を滑らかに高める。ガソリンエンジンほど、アクセルペダルを深く踏む必要はない。モーター駆動の併用でノイズも小さく、上級SUVのハリアーに相応しい上質な運転感覚が得られる。
ハリアーは実用指向の車種ではないから、数値に示される動力性能や燃費だけでなく、アクセルペダルを踏み増した時の力強さ、吹き上がりの滑らかさ、エンジンノイズの静かさといった感覚的な要素も大切だ。
購入する時は、ガソリンエンジンとハイブリッドの両方を乗り比べてグレードを決めたい。そのために1年間の走行距離が1万km以下で、燃料代の節約によって価格を取り戻しにくいユーザーが、走りや運転感覚の違いでハイブリッドを選ぶことも多い。
またハリアーの場合、ハイブリッドであれば、100V・1500Wの電源コンセントを4万4000円でオプション装着できる。1500Wの容量があれば、電子レンジやヘアドライヤーも使用可能だ。キャンプなどに使えて、災害時にも役立つ。1500W電源コンセントのニーズはユーザーによって異なるが、ハイブリッドでなければ得られない貴重な付加価値だ。
現実的には、ハイブリッドとガソリンエンジンの価格差を、燃料代の差額で取り戻せるユーザーは少ない。後半に述べた運転感覚、静粛性、ハイブリッドを活用した電力供給機能など、付加価値のとらえ方でガソリンエンジンとの選択も左右される。
また損得勘定ではなく、環境負荷を抑えるために、走る距離が短くても可能な限りハイブリッドを選ぶユーザーも多い。これも強い説得力を伴うハイブリッドの正しい選び方だ。
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ハイブリッドは余裕のありそうなオジさんが乗ってるイメージ。