動力性能の印象を特別にするラリーでの活躍
1992年の初代「エボI」から、2015年のファイナルエディションまで続いた、三菱ランサー・エボリューション・シリーズ。英国で歴代ベストだとみなされているのが、1999年に登場した6代目、VIだ。公道との相性が非常に高いことが、その理由にある。
【画像】究極といえるTME 三菱ランエボVI GTOにFTO、スタリオン 同時期のインプレッサも 全104枚
単に高速なサルーンではない。世界ラリー選手権(WRC)で活躍してきた伝説が、動力性能の印象を特別なものにしている。希少性も低くない。
この時代のWRCマシンの特徴といえたのが、一般市場で販売されたモデルとの関係性の深さ。ランエボVIは、トミ・マキネンが連勝を掴んだグループA仕様のワークスマシンと、基本はほぼ同じといって良かった。
先進的な四輪駆動システムに、ターボチャージャーで加給される堅牢な2.0L 4気筒エンジン、アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)と呼ばれる電子制御技術を中心に、ドライブトレインは構成されている。この洗練度は極めて高い。
オーバーステアとアンダーステアを巧みに抑制したのが、四輪駆動システムと同調して機能するAYC。車両各部に実装されたセンサーの情報をもとに、驚くほどのコーナリングを実現している。その能力は、現在の一般道でも遺憾なく発揮できる。
加えて、1999年当時のランエボVIの英国価格は、3万1000ポンドほど。驚異的な性能を考えれば、破格の安さといえた。
物理の法則を無視した旋回 快適性も維持
「カーブへ侵入すると、路面へ吸い付いたように旋回します。自動車というより、まるで戦闘機といった印象。物理の法則を無視しているといってもいいでしょう」。初期のランエボへ試乗したAUTOCARは、その走りへ酷く驚かされた。
ただし、ステアリングの反応は少し過剰気味。手のひらへ伝わる感覚が薄く、クラス最高と呼べる評価までは得ていない。
最高出力は280psで、0-100km/h加速は4.4秒。0-161km/h加速も11.2秒でこなした。四輪駆動システムの強烈なトラクションで、遥かに高価だった当時のフェラーリ550を凌駕するダッシュ力を得ていた。
もちろん、ランサーだから快適なサルーンでもある。エアコンとパワーウインドウは標準で、座り心地の良いレカロシートが組まれている。
現在の英国では、3万ポンド(約585万円)を用意すれば、歴代のオーナーによってチューニングされたランエボVIを購入できる。とはいえ予算が許す限り、純正状態へ近い車両を探したいところ。
究極といえるTME 価格は上昇傾向
ランエボVIで究極といえるのが、トミ・マキネン・エディション(TME)。4年連続でドライバーズ・チャンピオンを獲得したフィンランド人ラリードライバー、トミ・マキネン氏の功績を記念した仕様だ。
エンジンには、新開発のチタン製ターボチャージャーを採用。エグゾーストやフロントバンパー、ヘッドライト、クイックなステアリングラック、ターマック重視のサスペンション、17インチのエンケイ社製アルミホイールなどは、TMEの専用品だった。
レッドの塗装にブラックのストライプが、常勝のラリーマシンを強烈に想起させた。英国へ輸入されたのは限定で250台。希少性から、現在はかなりの高値で取引されている。AUTOCARでは、このTMEをクラスベストだと称賛している。
登場から25年が過ぎたランエボVI。ネオクラシックとなり、価格は上昇傾向にある。裕福なマニアの手もとへ渡る前に、ラリードライバー気分を味わってみてはいかがだろう。
新車時代のAUTOCARの評価は?
三菱ランサー・エボリューション VIをヒトコトで表現することは難しくない。英国で販売された中で、最もエキサイティングな1台だからだ。
郊外の一般道で、驚異的なスピードを叶えるだけではない。実用性は高く、能力の幅も極めて広い。(1999年3月24日)
専門家の意見を聞いてみる
モーガン・ギブソン氏:トルクGT社
「ランエボVIは、標準のままならかなり信頼性は高いといえます。ただし、AYCの稼働状態とリアブッシュ類の劣化、ブレーキの摩耗などには注意したいですね」
「日本から並行輸入された車両は、走行距離が短め。シャシーの状態は、良い例が多いです。今後の価値に関しては一概にいえませんが、TMEは間違いなく買いだと思います。既に高値で売られているとしても」
「メンテナンス用の部品は、今のところ入手は難しくありません。サスペンションは、アップグレードの選択肢がふんだんにありますよ」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
これまでの整備履歴を確かめる。全合成のエンジンオイルは7200km毎、AYCフルードは1万4400km毎の交換が、英国仕様では指定されている。点火プラグとタイミングベルトは、7万2000km毎での交換が望ましい。
エンジン始動直後に排気ガスが白く煙るのは、特に問題ない。灰色や水色に見える場合は、ターボチャージャーやシリンダーに不調を抱えている可能性が高い。冷間時から試乗して確かめたい。
エンジンが冷えた状態で聞こえるカチカチという金属音は、温まると消えるはず。ターボ・ウェイストゲートの調子や、ラジエター・クーラントタンクの漏れもチェックポイント。
トランスミッション
走行時に異音が聞こえる場合は、インプットシャフトやトランスファーボックスの劣化を疑う。試乗して、すべてのギアを滑らかに選べるか確かめたい。シフトレバーが引っかかるようなら、ギアの回転数を調整するシンクロメッシュの不調だろう。
標準のクラッチは減りがち。7万km使えれば良いようだ。
サスペンション
サスペンションアームやブッシュ、スプリングは消耗品。路面の凹凸を超えて、不自然な衝撃が生じないか確かめたい。
インテリア
レカロシートのサイドボルスター部分は擦れがち。状態を観察したい。
ボディ
日本仕様のランエボVIは、アンダーコートが施されていないため、下回りが錆びやすい。予め状態を観察し、購入後にはアンダーコートの処理を考えたい。
知っておくべきこと
2000年から2001年まで提供されたランエボVI TMEの他にも、同時期に特別仕様が提供されていた。AYCシステムとアンチロックブレーキを省略した、RSとRSXが英国には導入されている。オーバーステアに持ち込みやすい、過激なランエボだ。
更に英国の三菱は、ランサー・エボリューション VI RS450をリリースしている。ラリーアートUKがチューニングを施し、444psと56.8kg-mを発揮した。
ランエボVIは英国でも需要が高く、状態の良い英国仕様を探し出すことは難しい。日本からの並行輸入を考えるなら、評判の良い代理店を選びたい。
英国ではいくら払うべき?
2万ポンド(約390万円)~3万9999ポンド(約779万円)
英国では、個人売買が多い価格帯。走行距離は全般的に長めで、16万km前後は珍しくない。怪しいチューニング車両には警戒したい。
4万ポンド(約780万円)~5万9999ポンド(約1169万円)
走行距離が伸びたランエボVI TMEが、英国では売られている価格帯。走行距離が短めの、悪くない状態の標準仕様も選べる。日本からの並行輸入車両も多い。
6万ポンド(約1170万円)~7万9999ポンド(約1559万円)
走行距離がそこまで長くない、綺麗なランエボVIを選べる価格帯。英国仕様の場合は、走行距離が長めになる。
8万ポンド(約1560万円)以上
艶のあるパッション・レッド塗装に、ラリーアートのストライプが入った、走行距離の短いランエボVI TMEをご希望なら、英国ではこの価格帯から。状態の優れた通常の英国仕様も含まれる。
英国で掘り出し物を発見
三菱ランサー・エボリューション・トミ・マキネン・エディション(英国仕様) 登録:2001年 走行距離:6万7600km 価格:8万9991ポンド(約1755万円)
英国の三菱が正規に輸入した、250台のトミ・マキネン・エディションの1台。希少性の高さが、価格に反映している。
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速さもライバルのインプはもちろんNSXやGTRをも圧倒して国内最速でしたね