マツダというメーカーは実にユニークである。縦置きFRプラットフォームに直6ディーゼルエンジンやプラグインハイブリッドを載せて、さらに3列シートを有するフルサイズSUVを作り上げる・・・クルマ好きにとっても興味津々な、そんなモデルで旅に出かけた。(文:中村圭吾(本誌)/写真:井上雅行 MotorMagazine 2024年12月号)
贅を尽くした高級車の新たなカタチ
マツダCX-8に代わる新たな3列シートSUVのフラッグシップとして、CX-80が登場した。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
日本国内では2022年9月に発表されたCX-60から始まったマツダSUVのラージ商品群のひとつ。その大きな特徴は縦置エンジン+FRレイアウトのプラットフォームを採用していることである。グローバルではCX-60からCX-90まで全4モデルのSUVが展開されることが発表されている。
その中でひと足先に登場したCX-60は、前述したプラットフォームを採用した初の日本導入モデルということで、デビュー前からクルマ好きの間でもその期待は高かった。だが、登場後にはその尖りすぎた足まわりや乗り心地が一部で指摘され、さらには生産品質に問題を抱えてしまうなど、良くも悪くも話題に欠かなかった。
私が試乗できたのは最近(24年5月号掲載)で、対策後のモデルとなったが、その時には引き締まった足まわりや正確性の高いハンドリングなど、まるでロードスターのような、かなりスポーティに振ったSUVという印象だった。
では、それを踏まえて、長い時間を掛けて開発されたCX-80はどうなのだろうか? さっそく試乗会場の徳島空港からCX-80の後席で移動することになった。これはマツダ開発陣の自信の現れなのか。CX-80の出来栄えを見てくれと言わんばかりに、後席へと案内される。
2列目シートは、アームレストとコンソールがつくキャプテンシート仕様だった。これはCX-8にも用意されていたが、現在の国産SUVではレクサスLXの一部グレードに用意されるぐらいで貴重なキャプテンシートに腰を掛ける。まだ9月の残暑でこの日も暑く、さっそくシートベンチレーションをON、サンシェードも降ろして、と快適装備を駆使して移動する。BOSEのスピーカーからは上品な音楽も流れている……。
とてもリラックスできそうな環境だが、そんな中、走り出すと我々スタッフとマツダスタッフの間に妙な緊張感が漂う。が、最初の段差を超えた瞬間にホッとした。そこからは後席を堪能しつつ、あっという間に最初の目的地に到着した。そこで昼食を済ませると、今度はドライバーズシートに座り、いよいよ淡路島から神戸までのショートトリップへ出る。
実はこの旅(試乗会)にはマツダが用意したテーマがあった。それは「大切な人と巡る旅」である。だが、私と同行してくれるのは、当然小誌カメラマンである。ある意味、雑誌を作るために大切な人に変わりはないが、どうせならば大切な家族と旅したかった・・・。
それはまたの機会に譲るとして、“大切な”人との旅の始まりである。
大柄でありながら美ボディ。その存在感がラグジュアリー
まず初日に試乗したのは、匠塗の特別色アーティザンレッドプレミアムメタリックのPHEVプレミアムモダン(4WD)である。
このボディカラーは、ワインのように深みのある赤で、CX-80の造形の美しさを際立たせる。あらためてエクステリアを見ても、CX-60を間延びさせることなくデザインされ、フロントフェンダーからリアフェンダーにかけての躍動感を感じさせるボディラインが美しい。その存在感にあらためてこのクルマがラグジュアリーSUVであることを実感する。
空港からの送迎によって、後席での乗り味は体験済みだが、実際にハンドルを握ってすぐに感じたのは想像以上に運転がしやすいことだ。全長は5m以内に抑えたと言っても4990mm、ホイールベースは3mを超える3120mmである。ただし、後輪駆動でハンドル切れ角もあるので、最小回転半径は5.8mとCX-8と変わらない数値をキープしている。
運転席から前方はもちろん後方視界も良く、実際に駐車場内や道路で転回をする場面もあったが、大きさを持て余すようなことはなかった。シースルービューの付いた360度ビューモニターなど便利な機能も活用すれば、意外やサイズは問題はなさそうだ。
肝心の足まわりはCX-60ほどではないにしても、やはり走りを重視したものであることは変わらない。車格やクルマの性格からも、ゆったりとした乗り味を想像していたが、ワインディングロードでは車体の大きさを感じさせない回頭性の良さでよく曲がり、全輪がしっかりと追従してラインをトレースできる。
4気筒の軽さが優れた回頭性につながっている
それでいて路面のギャップを大きく拾うこともなさそうなので、快適に気持ちよく走ることができる。このあたりは好みの部分になるが、同じプラットフォームを使うCX-60とかなり共通性の高い走りの味だ。
ちなみに、ドライブモードには「スポーツ」が用意されているのだが、これにセットすると、メーター表示が変わってサウンドの変化やアクセル開度に応じてレスポンスも向上、高回転まで活発に回るようになる。前述した足まわりとあわせて、より研ぎ澄まされたスポーティな走りが可能になる。
後で開発者にも確認したところ、このPHEVモデルは6気筒モデルより鼻先が軽いことや、バッテリーを搭載することで重量バランス的には一番優れているモデルになるという。どおりで回頭性も良いわけだ。エンジンもモーターが加わると力強く回るので、そこでストレスを感じることもない。これなら4気筒モデルでも不満は出ないだろう。むしろ4気筒の恩恵を受けた走りを求めるならこれだ。
では、高速道路ではどうだろう。ロングホイールベースのおかげで直進安定性も高く、乗り心地も良好である。段差を超えると多少前後動が気になる部分もあったが、後席に乗っていたカメラマンは気持ち良さそうに眠っていたので、快適なのは間違いなさそうだ。
PHEVとしては、EVモードやチャージモードも用意されているが、マツダコネクト画面から操作しなければならないのがひと手間。走り出しはEV走行が基本で、バッテリーがほぼ満充電でスタートしたというのもあるが、市街地では長い間EVで走行することができた。ちなみにEV走行距離は約60kmとなっているので、充電環境が整っていれば日常使いを電気のみで補うこともできそうだ。
クリーンディーゼルの美点を引き出すMHEV
初日はPHEVの試乗で終えて、翌日XDハイブリッドのエクスクルーシブモダン(4WD)に試乗した。
パワートレーンは3.3L直6ディーゼルエンジンにモーターを組み合わせたMHEVで、こちらも共通のトルコンレス8速ATを採用する。加速時に大きなショックやギクシャク感も皆無で、むしろ550Nmという大トルクにモーターアシストが加わり、低回転からスムーズに気持ちよく回る。
先に試乗したPHEVモデルと比べると、車両重量は120kgも軽いのだが、こちらの方がどちらかというとゆったりとした乗り味という印象で、足まわりの感触もよりマイルドに感じた。
滑らかなディーゼルエンジンの性格も含めて、ラグジュアリーSUVらしさで選ぶなら、こちらの方があっているかもしれない。
今回の試乗モデルはPHEVとXD MHEVの2台だった。純ディーゼルエンジンには乗ることができなかったので、近い内にぜひ試乗して確かめてみたい。
これでマツダSUVのラインナップはコンパクトからラージサイズまで6車種。それぞれ独自の個性を放つ、バリエーションに富んだモデルが揃った。そのフラッグシップのCX-80もまた、スポーティであり、ラグジュアリーであり、と二面をうまく両立したマツダらしいフルサイズSUVだった。
図らずも先行したCX-60によって、開発のプロセスまで見直して挑むこととなったマツダの新作。心血を注いで生まれたCX-80は、マツダの旗艦車として、ユーザーに受け入れてもらえるのか。これからの動きにも期待したい。
【CX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン<CX-80 PHEV プレミアムモダン>主要諸元】
●Engine 型式:T3-VPTH<PY-VPH> 種類:直6DOHCディーゼルターボ+モーター<直4DOHC+モーター> 総排気量:3283<2488>cc ボア×ストローク:86.0×94.2<89.0×100.0>mm 圧縮比:15.2<13.0> 最高出力:187kW(254ps)/3750rpm<138kW(188ps)/6000rpm> 最大トルク:550Nm(56.1kgm)/1500-2400rpm<250Nm(25.5kgm)/4000rpm> 燃料・タンク容量:軽油・74L<レギュラー・70L> WLTCモード燃費:19.0<12.9>km/L CO2排出量:136<180>g/km
●Motor 型式:MR<MS> 種類:永久磁石式同期電動機 最高出力:12kW(16.3ps)/900rpm<129kW(175ps)/5500rpm>最大トルク:153Nm(15.6kgm)/200rpm<270Nm(27.5kgm)/400rpm>
●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4990×1890×1710mmホイールベース:3120mm 車両重量:2120<2240>kg 最小回転半径:5.8m
●Chassis 駆動方式:4WD トランスミッション:8速AT ステアリング形式:ラック&ピニオン サスペンション形式 前:ダブルウイッシュボーン/後:マルチリンク ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク タイヤサイズ:235/50R20<235/50R20>
●Price 車両価格:6,022,500円<7,199,500円>
[ アルバム : マツダCX-80 試乗 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
どう考えても、初期の60みたいな評価になるのを恐れての変更だろ。
ものは言いようの域を越えとるぞ。