積算1万8388km イメージリーダーの役目を果たすMC20
愛すべきマセラティは、いま苦境にある。2024年の業績は、好調とはいえなかった2023年より悪化するらしい。ステランティス・グループを率いるカルロス・タバレス氏は、マーケティングに課題があると考えているようだ。
【画像】心を鷲掴みにする優美な容姿 MC20 最新の電動マセラティ 2004年のMC12も 全137枚
特に、ポルシェにおけるマカンの役目を負った、グレカーレの販売が不調にある。タバレスは、「ドルチェ・ヴィータ(イタリア的な甘い生活)」の刷り込みが不充分だと表現している。お高めの価格も影響しているのではと、筆者は考えている。
今のマセラティは、イメージリーダーの役目を果たせる、スーパーカーをラインナップしている。この稀有な存在、MC20を、もっと活用しても良いように思う。
長期テストでMC20と短くない時間をともにした英国編集部だが、その誰もが、この魅力へ強く惹き込まれていた。マクラーレンやフェラーリのライバルと異なり、ハイブリッドではないし、動的能力でも劣るが、視覚的・聴覚的にはこの上なく素晴らしい。
加えて、普段使いも驚くほどしやすい。英国編集部へやって来た時の走行距離は1万2425kmで、数か月のうちに6000kmほど距離を重ねた。ノーズリフトシステムの警告灯が点灯したものの、自然に消え、それ以外は不具合と呼べるものは起きなかった。
エンジンオイルの消費量は最小限。スタッフの1人がサーキットでの走行会へ挑んでいるが、ブリヂストンのタイヤは1mm程度しか減っていなかった。
見事な長距離移動の快適性 心地いい車内空間
ハイブリッドではないから、燃費は運転の仕方で大きく変わった。8速ATの機械任せにし、穏やかに高速道路を流している限り、V6ツインターボのネットウーノ・ユニットは12.5km/Lを叶えてくれた。60Lのタンクを満タンにし、700km以上は走れる計算だ。
キャビンは居心地が良い。素晴らしく。ステアリングホイールはテレスコピック(前後)方向の調整も可能で、理想の運転姿勢を探し出せる。ただし、ドアポケットはなし。カップホルダーはセンターコンソールの後方で、勝手が良いわけではないが。
インテリアのシンプルなデザインも筆者好み。タコメーターがアナログではないのが少し残念だとしても、小ぶりなメーター用モニターがシリアスな雰囲気を作っている。スーパーカーは華やかさだけではないと、静かに主張するように。
リアの荷室には、フロントの小さな収納と合わせて、大人2名で数日間の旅行の荷物を積める。1人なら、4日分の着替えと一緒でも問題ない。ドイツ・フランクフルトまで、筆者は実際に試みている。
長距離移動の快適性も特筆すべき点だった。ドイツより、もっと遠くを目指したいと思わせるほど。
スタイリングはエレガント。筆者の目には、ライバルのフェラーリ296 GTBやマクラーレン・アルトゥーラより、カッコ良く映っている。
V6ネットウーノ・ユニットの臨場感
スポーツ・モード時の、スタビリティ/トラクション・コントロールの制御は秀逸。回頭を高めるスライドは許容するものの、それ以上深い角度には至りにくい。ソフトとハードを選べるサスペンションの減衰特性も、公道の多くの条件へ見事に合致した。
気になったのは、ブレーキの効き。カーボンセラミック・ディスクが組まれているが、クセを加味しても、冷えた状態では若干心もとなかった。しかし、その程度だ。
時期は重ならなかったが、長期テストではアルトゥーラもレポートしている。同じくカーボンファイバー製タブシャシーを備える、6気筒エンジンのスーパーカーだが、比較するとMC20の方が割高に思えるかもしれない。
アルトゥーラの方が間違いなく更に速く、運転席からの視界は広い。荷室の容量も大きく、電気だけで静かに早朝の住宅地を出発することもできる。
それでも、MC20のネットウーノ・ユニットは、臨場感で負けていなかった。ドラマチックなエンジン音と、現実世界で能力を引き出しやすいパワー特性は大きな強み。僅かな差だが、より長い時間、アクセルペダルを踏んで悦楽に浸れる。
MC20の振るわない数年後の残存価値が、販売にも影響している。同クラスの296 GTBと比べると、下取り価格には明らかな差があるようだ。
だが、30年後の価値はどうだろう。純粋にエンジンで走るスーパーカーとして、他を凌駕する注目を集めるのではないだろうか。スピリットは1980年代で、ストロングポイントは2020年代。美しさは永遠なように思う。
セカンドオピニオン
スーパーカーを買える人は限られている。その特別な層は、恐らくフェラーリ296 GTBへより強く惹かれているのではないだろうか。筆者は、この現状へ疑問を抱いている。
MC20は、該当クラスのダークホース。極めて乗りやすく、素晴らしい音響体験で満たしてくれる。希少性が高く、ドアはガルウイング。このモデルの魅力へ、より多くの人が気付いて欲しい。 ウィル・リメル(Will Rimell)
テストデータ
気に入っているトコロ
敷居の低いパワートレイン:ハイブリッドではないからシンプル。ドライブモードもシンプル。シートへ座ったら、すぐに理解できる。古き良き時代を蘇らせる、サウンドも極上だ。
しなやかな動的特性:蝶のように舞い、蜂のように刺す。乗り心地はしなやかでも、パフォーマンスは強靭だ。
長距離での快適性:ダンパーをソフトにすれば、終日運転しても快適。キャビンも広々としていて、シートも疲れ知らず。
気に入らないトコロ
軽くはない車重:実際に計測したら、車重は1.7t超え。運転すれば身軽に感じられるものの、1.5tは切って欲しい。
ややお高めの価格:ライバルと比べると、英国価格はお高め。メカニズムを踏まえると、3万ポンド(約585万円)ほど安くても良いかも。
走行距離
テスト開始時積算距離:1万2425km
テスト終了時積算距離:1万8388km
価格
モデル名:マセラティMC20(英国仕様)
開始時の価格:22万2025ポンド(約4329万円)
現行の価格:22万7100ポンド(約4428万円)
テスト車の価格:31万735ポンド(約6059万円)
オプション装備
エクステリア・カーボン・パッケージ:3万6240ポンド(約706万7000円)
ジャッロ・ジェニオ塗装:9650ポンド(約188万円)
ライトウエイト・モノコック・レーシングシート:5900ポンド(約115万円)
カーボンファイバー・エンジンカバー:4855ポンド(約94万7000円)
バードケージ20インチ・アルミホイール:3840ポンド(約74万9000円)
ソナスファベール・サウンドシステム:3750ポンド(約73万1000円)
ノーズリフト付きスポーツサスペンション:3250ポンド(約63万4000円)
アルカンターラ・インテリア:3000ポンド(約58万5000円)
電子制御LSD:2150ポンド(約41万9000円)
ブルー・ブレーキキャリパー:1100ポンド(約21万5000円)
エンボスロゴ付きヘッドレスト:850ポンド(約16万6000円)
電動ドアミラー:650ポンド(約12万7000円)
シートヒーター:550ポンド(約11万7000円)
燃費&航続距離
公称燃費:8.7km/L
タンク容量:60L
平均燃費:7.5km/L
最高燃費:12.3km/L
最低燃費:3.7km/L
航続可能距離:450km
主要諸元
全長:4669mm
全幅:1965mm
全高:1224mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:2.9秒
CO2排出量:261g/km
乾燥重量:1475kg
パワートレイン:V型6気筒3000cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:630ps/7500rpm
最大トルク:74.2kg-m/3000-5500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
トランク容量:150L(前後合計)
ホイールサイズ:9.0J 20インチ(前)/11.0J 20インチ(後)
タイヤ:245/35 ZR20(前)/305/30 ZR20(後)
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:−ポンド(−万円/1か月)
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:1133.56ポンド(約22万1000円/ガソリン)
燃料含めたランニングコスト:1133.56ポンド(約22万1000円)
1マイル当りコスト:0.31ポンド(約60円)
不具合:一時的なノーズリフト機能の警告表示
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