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小粒なイタリアン・スーパーカー フィアットX1/9 ガンディーニxランプレディの秀作 後編

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小粒なイタリアン・スーパーカー フィアットX1/9 ガンディーニxランプレディの秀作 後編

運転姿勢は1970年代のイタリア車的

ジュディ・トロウ氏がオーナーのフィアットX1/9 1300の荷室を開いたら、当時のアクセサリーで特に貴重な逸品が出てきた。イタリアのカロッツェリア、ベルトーネ社がデザインした旅行かばんだ。クルマのシートとコーディネートするように仕立ててある。

【画像】小粒なイタリアン・スーパーカー フィアットX1/9 前後のオープンモデルと最新500eも 全80枚

トランクリッドの前方には、1.3Lユニットへアクセスするためのエンジンリッドが切られている。開いても、エアクリーナーボックスが殆どを覆っていたが。

オリーブグリーンをベースに、ベージュとブラウン、オレンジのストライプがあしらわれたシートへ座る。スマートでスポーティな4スポーク・ステアリングホイールが正面に来る。その奥には、プラスティックなダッシュボード上に4枚のメーターが並んでいる。

センターコンソールにはスライド式のヒーター・スイッチと、複数のロッカースイッチが並ぶ。フェラーリ365 GT4 2+2の車内を思い出させるというのは、褒め過ぎだろうか。

ドライビングポジションは、1970年代のイタリア車的。シートの背もたれはリクライニングできず、膝を曲げて腕を伸ばす格好になる。足が大きいと、ペダルを2枚一緒に踏みそうになる。

エンジンを始動させると、4気筒1290ccのランプレディ・ユニットが小さなハミングを奏で始めた。特にドラマチックなお目覚めではなく、ストロークの長いクラッチペダルを踏み込み、軽く正確なタッチのシフトレバーを倒す。

高回転域でパワフルな1.3Lエンジン

X1/9 1300は、高回転域でパワフルなことが見えてくる。中回転域で若干息苦しそうになるものの、全体的には滑らかに吹け上がり、活発に回すことへ喜びを感じる。反面、4速MTのギア比が離れていることもあってトルク感は細い。

4速では、1000rpm当たり26.7km/hという計算。トップスピードが高いわけでもなく、100km/h出すのに約4000rpmも回す必要がある。

しかし、50年前のモデルとして考えると、操縦特性には心から驚かされる。ステアリングにはアシストが付かないが、素晴らしいのヒトコト。リニアで軽く、クイック。13インチの165/70タイヤから、充分な感触も伝わってくる。

フロントタイヤは不足なくグリップし、路面が乾いていれば、徐々に推移するアンダーステアへ持ち込むには想像以上に気張る必要がある。姿勢制御には締りがあり、見通しの良いコーナーへ果敢に飛び込んでいける。MGBでは、舗装を外れているかもしれない。

かなり攻め込むと、リア寄りのエンジンの重量を感じ始める。リアアクスルを中心にボディロールが強まるが、落ち着きを失うことはない。

心が踊ったまま、1500へ乗り換える。1978年に発表されたシリーズ2のX1/9は、基本的にはシリーズ1と同じユニットながら、ストロークを伸ばすことで1498ccの排気量を得ている。トランスミッションも、1速増えて5速マニュアルが組まれている。

シャシーも基本的にはキャリーオーバー。アメリカ市場に合わせたビッグバンパーが追加され、スタイリングは若干乱されている。全長はシリーズ1より140mmも長い。

1981年からはベルトーネX1/9へ改名

インテリアには大きく手が加えられており、ダッシュボードのデザインは一般的な印象に。パワーウインドウを獲得し、スイッチ類も整然としている。今回の例のように、レザーシートも選べた。

豪華装備もあって車重は880kgから920kgへ増えているが、排気量アップで最高出力は74psから86psに、最大トルクは9.7kg-mから12.0kg-mへ大幅に増強。その効果として、0-97km/h加速は9.9秒へ短縮し、中間加速も目に見えて改善していた。

ライトブルーのX1/9 1500 VSのオーナーは、サム・リード氏。クラシックカーへの入門として最近購入したという、1984年式だ。ちなみにX1/9は1989年まで生産されているが、実際のところ1981年以降はフィアットではなかった。

当初、トリノ近郊のベルトーネ工場でボディを生産し、フィアットのリンゴット工場で最終仕上げが施されていた。だが1981年からは、すべての工程をベルトーネ工場が担当。ベルトーネX1/9へブランド名も改められたが、フィアット・ディーラーで販売は続いた。

2台を並べると、確かに10年間の時代の経過を感じる。絶え間なく変化する、ファッションのように。

特にインテリアでは、1300で見られる当時の近未来的な雰囲気が失われている。垢抜けたといってもいい。だが、ステアリングホイールやメーターパネル、シートポジションなどは変わっていない。

50年後も失わない小さなミドシップの輝き

実際に運転してみると、間違いなく扱いやすい。1300より、日常的に乗りやすいイタリアン・クラシックであることは明らかだ。

X1/9 1500のエンジンは、始動時のアイドリングから厚みのあるサウンドを響かせる。アクセルペダルを傾けると、低回転域から意欲的に反応する。1300とは逆に、反時計回りに回転するレブカウンターの針も勢いよく角度を変える。

5速MTのおかげで、100km/hまで加速しても回転数は約400rpm少なくて済む。ギア比はクロースしており、エンジンのパワーバンドを保ちやすい。能力に優れたシャシーを活かしやすい。

シリーズ2のステアリングは、車重が増えたことを反映するように僅かに重い。それでも落ち着きは変わらず、反応はクイック。刺激的な運転を楽しめる。確かに、大きなエンジンとの相性に優れたシャシーだったといえる。

フィアットX1/9の登場から、50年が経過したことに驚かされる。これほど小気味良い走りを謳歌できるモデルは、現代では極めて限定的。半世紀を経てもなお、小さく軽いミドシップの輝きは失われていなかった。

協力:アンディ・ローリー氏、X1/9オーナーズクラブ、リッデン・ヒル・サーキット

フィアットとベルトーネ 2台のX1/9のスペック

フィアットX1/9 1300(1972~1979年/英国仕様)のスペック

英国価格:2998ポンド(1977年時)/1万2000ポンド(約201万円)以下(現在)
販売台数:約16万台
全長:3830mm
全幅:1568mm
全高:1168mm
最高速度:157km/h
0-97km/h加速:12.3秒
燃費:12.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:880kg
パワートレイン:直列4気筒1290cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:74ps/6000rpm
最大トルク:9.7kg-m/3400rpm
ギアボックス:4速マニュアル

フィアット/ベルトーネX1/9 1500(1979~1989年/英国仕様)のスペック

英国価格:4575ポンド(1979年時)/1万ポンド(約168万円)以下(現在)
販売台数:約16万台
全長:3969mm
全幅:1568mm
全高:1168mm
最高速度:173km/h
0-97km/h加速:9.9秒
燃費:13.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:920kg
パワートレイン:直列4気筒1498cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:86ps/6000rpm
最大トルク:12.0kg-m/3200rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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