2020年にテネレの名を復活させたミドルサイズのアドベンチャーモデルがテネレ700。パワフルでトルクフルな特性を備える、MT-07系の270度クランクを採用した688cc水冷並列2気筒エンジンを中核に、軽量で強靭なボディ、ストロークの長い前後サスペンションを組み合わせて、オフロードでの高い走破性を実現。アクセサリーパッケージモデルとして、ローシートとローダウンリンクを装着、シート高を38mm下げたテネレ700Lowも用意される。
文:濱矢文夫、小松信夫、アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行
ヤマハ「テネレ700」インプレ・解説(濱矢文夫)
ロードスポーツのエンジンをベースにまったく異なる個性に昇華
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もしあなたがオフロードを走ることを楽しんでいるなら、もしくはこれから積極的に不整地に飛び出して楽しみたいと思っているなら、このテネレ700は最良の友になるだろう。
現在、広い意味でアドベンチャーとはデュアルパーパスツーリングモデルのことを言っている。しかし本来の意味ではアドベンチャー=冒険だ。パリ・ダカールラリー(今のダカールラリー)で道のない砂漠を駆け抜けたレーシングモデルにルーツがある。そんなことをあらためて思わせてくれる機種だ。
MT-07の水冷DOHC並列2気筒エンジンをダブルクレードルフレームに積んで、フロント21インチ、リア18インチのオフロード車定番のワイヤースポークホイールにチューブの入ったタイヤを履く。成り立ちからだけでなく、メーカーも最初からオフロード走行性能をアピールした。
正直に言うけれど、専用設計ではない上下方向に長いオンロードモデルからの流用したエンジンを使って、いくら特性を変えたとしてもオフロードバイクとしてどうなんだろうという気持ちが乗る前にはあったが、結果としてそんな心配はいらなかった。
公道を乗ることができるオフロードバイクをトレールモデルやオン・オフモデルと呼び、軽い250cc以下の排気量が主流。これは明らかにそれらより重量はあるけれど、生半可な250トレールよりオフロード走行性能は高い。210mm、200mmと、本格派なホイールトラベルがある前後サスペンションに最低地上高は240mmを確保。もうこれだけで、優れた走破性が想像できてしまう。
ちなみに昨年惜しまれつつカタログ落ちになった、同じヤマハの名車、セロー250のホイールトラベルは225/180mm。最低地上高は285mm。比較すると2気筒688ccがどれだけ頑張ったかがわかる。
実際にダートの道を走っているときの感覚はオフロード車そのもの。前輪にオンロードモデルのような荷重がかかっておらず、コーナーへの進入ではライダーが前に重心をかけてフォークを縮ませてやるとグリップが高まり小さくスムーズに曲がれる。
こうしていると、たとえリアタイヤがグリップを失いブレークしても怖くない。それができるライダーならボタンを長押ししてABSをキャンセルした方がいっそう振り回せておもしろさが増す。車体と外装は、ちゃんとライダーが前後に動いて荷重コントロールをしやすいカタチ。
ちょっとしたギャップで大げさに飛び上がってみても、足廻りは剛性があって、初期の沈み込みが速く、奥に向かうにつれ減衰を強めて、ビョンと勢いよく戻らないダンピングの前後サスはへこたれたところを感じさせずにショックを吸収。最初は奇妙に見えた高いところにセットしたエンジンにより重心が高く、オフロードバイク的な軽くてヒラヒラとした動きを出すことに貢献している。
もう、ここまでくると、ちょっとオフロード性能にこだわってみた、というレベルではなく、正面からがっぷり四つになって不整地走行に向き合った、ポテンシャルの高いオフロードバイクと言っても言い過ぎではないだろう。主流と言える、オンロード走行をメインに据えて、オフロード走行をある程度担保したアドベンチャーとは一線を画す。その分、シートは低くないけれど、土の上を走る楽しさを知っている人はそれに慣れているはずだ。
エンジンはMT-07とは違い、低回転域でスロットルを開けたときのトルクのクリック感がしっかりありながら、その領域でのスロットルを動作させる幅が広め、低スピードでの制御のしやすさ、ギャップなどで急に前輪の荷重を抜きたいときのスロットルアクションに応えてくれる。
テネレ700は、オフロードを基本に、遠くまで高速道路を自走して林道などにいく場合の余裕のパワーとウインドプロテクション能力を備えていると思えばいい。リッターオーバーアドベンチャーより間違いなく軽くて、自由自在に動かしたくなるサイズも絶妙。
昔から国内メーカーの中でもっともオフロードバイクに力を入れてきたヤマハらしい選択。日本市場ではニッチだけど筆者も含めて「待ってました」とこのゾーンにどハマリするライダーは確実にいる。
ヤマハ「テネレ700」各部装備・ディテール解説
フェイスデザイン
ラリーマシン風の大型スクリーンと共に、フロントマスクを印象付ける4灯式LEDヘッドライト。上側2灯がロービーム、下側2灯がハイビーム、下端にはポジションランプを配置した個性的なデザインが個性的な表情を見せる。
エンジン
MT-07用から発展した水冷並列ツインエンジン。MT同様「クロスプレーン・コンセプト」に基づいたメカニズムをベースに吸排気系などを改良し、豊かな低中速トルクと伸びやかな高回転の伸びを併せ持つ。ギアレシオなどの変更でオフロードでの楽しさとオンロードでの扱いやすさをバランス良く備える。
フロント 足まわり
Φ43mm倒立フロントフォークは210mmという長いストロークを備え、優れた接地感、ショック吸収性を備える。フロントブレーキはΦ282mmローターにブレンボ社製2ポットキャリパーを組み合わせる。オン・オフ切替え可能なABSも標準装備。フロントホイール径は21インチ、軽量スポークのアルミ製リムを使用する。
リア 足まわり
スイングアームは軽量で良好な剛性バランスを備える重力鋳造されたアルミ製。リアブレーキはΦ245mmの軽量ウェーブディスクに1ポットキャリパーという組合せ。標準装着タイヤはオフロード、オンロードでバランス良く走れるピレリ製のスコーピオン・ラリーSTR。
リアサスペンション
リアサスは専用設計のリンク式モノクロスサスペンション。減衰特性とバネ定数、リンクレシオを最適化することで、一般路での快適な乗り味とオフロードでの粘り強い特性を両立したリアサスペンションを装着。プリロードと圧側、伸側ダンピングの調整が可能なフルアジャスタブルタイプ。
ハンドル
アルミ製のワイドなテーパーハンドルバーを採用するなど、ハンドル周りはオフロード車そのものというべき造り。ハンドガードも標準装備。
メーター
縦型デザインのフル液晶多機能メーターは、強い太陽光の下でも表示されている情報を読み取りやすいように作られている。デジタル表示の速度計を中心に、バー表示のタコメーター、燃料計、使用中のギアがわかるようギアポジションインジケーターをわかりやすく配置している。
燃料タンク
コントロールしやすいスリムな造りのボディだが、それでも燃料タンクの容量は16Lを確保している。WMTCモード値で航続距離を計算すると約380kmに達する。
シート
走行状況に応じて好みのポジションを取りやすく、積極的にライダーがポジションを動かしてライディングすることができるフラットシートを採用。シートは前後別体で、リアシートはキー操作だけで簡単に取り外しが可能だ。
テールまわり
スリムなデザインのテールカウル後端に、コンパクトなLEDテールランプをマウント。純粋なオフロードモデルのような軽快なデザインだ。
ヤマハ「テネレ700」主なスペックと価格
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
文:濱矢文夫、小松信夫、アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行
[ アルバム : 【写真16枚】ヤマハ「テネレ700」 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
アメリカやアフリカのダートを100㎞で突っ走るタイプ?
日本のセセコマシイ林道を走るにしては大きくて重たい
まずは250㏄で乗りこなしてからのステップアップでしょう
海外でもシングルトラックみたいな日本の林道・けもの道級の細い道は300~400くらいの小排気量車(日本と同じ車体の排気量増し)がメインに見える。
好きなのに乗ればいいけど、日本の林道には大きくて重いよね。転んだ後に起こして家に帰るまでが遠足です。