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現状を打破したい人へ──ランドローバー・ディフェンダー110試乗記

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現状を打破したい人へ──ランドローバー・ディフェンダー110試乗記

ランドラーバーの新型ディフェンダー110に今尾直樹が試乗した。一般道とオフロードを走った印象はいかに?

快適なオフローダー

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東京駅12:24発の上越新幹線はくたか563号に乗っておよそ2時間、上越妙高駅に到着すると、新型ディフェンダー110が待っていた。駅前の空は広く、駐車場はガラガラで、そのせいもあって新型ディフェンダーはさほど大きく見えなかった。

運転席に乗り込む際、試乗車にはたまさかサイド・ステップが付いており、あったほうが楽チンに思えた。最低地上高は本格オフロード4×4らしく216mmある。

新型ディフェンダーにはショート・ホイールベースの90とロング・ホイールベースの110の2種類のボディがあるわけだけれど、90は新型コロナウイルスのため生産が世界的に遅れており、日本への導入は2021年春以降になるという。

そんな事情もあって、今回の試乗会は110のみだった。グレードは90、110共通で、車名の後ろになにもつかないスタンダードと、数字の後ろにS、SE、HSEの記号がつく機種がある。アルファベットの文字が増えるほど装備が豪華になっていくのは、ジャガー/ランドローバーのほかのモデルと同じだ。

H.Mochizuki上越妙高の駅前から試乗会のベースのホテルまでの20数kmをともにしたのはSEという上から2番目のグレードで、レザー内装にメーターがデジタルになっている。ホイールは20インチ、タイヤは255/60のグッドイヤーのオフロード用が選ばれていた。

いざ運転席に座ると、助手席とのあいだにずいぶん距離がある。ちょうどこの下に副変速機付きの8速オートマチックがあるからだろう。その幅を利用して、スタンダードのグレードは前列と2列目とのあいだで移動がしやすいようにウォークスルーになっている。

S以上のグレードにはカップ・ホルダーとアームレストの付いたセンター・コンソールが置かれているけれど、無償オプションでそれを取っ払うこともできる。シフト・レバーがダッシュボードから生えているのは、前席左右の移動をしやすくするためもあるだろう。運転席まわりはシンプルかつ機能的で、余分なものはなにひとつない、という印象を受ける。Aピラーとフロント・スクリーンが立っているおかげで、視界はたいへん良好だ。

H.Mochizuki走り出して驚いたのは静粛性の高さである。雪国だけに路面はそうとう荒れているはずだけれど、ロード・ノイズがきわめて低い。2.0リッターの直列4気筒ターボ、ジャガー・ランドローバー独自開発の“インジニウム”エンジンは、こんなでっかい4×4に2リッターのガソリンで大丈夫か? と、乗る前は思ったけれど、ぜんぜん大丈夫。最高出力300ps/5500rpm、最大トルク400Nm/2000rpmのこのインジニウム・ガソリンと8速オートマチックの組み合わせにより、高性能とは表現できないにしても、必要十分より、ちょっと上の動力性能を確保している。

乗り心地も、レインジ・ローバー並みに洗練されている。20インチということもあって、オフロード4×4らしいゴツさをときに感じさせつつも、110には全車標準になるエア・サスペンションと、いかにも堅牢感のある、新設計のアルミニウム製モノコック・ボディ、それに前ダブル・ウィッシュボーン、後マルチリンクの独立式サスペンションが、4輪リジッドのジープ「ラングラー」はもちろん、トヨタの「ランドクルーザー」とかメルセデス・ベンツ「Gクラス」等の後輪リジッド・サスペンション勢とは一線を画する快適性を実現している。

スムーズかつ気持ちよくまわるエンジン

しばらく一般道を走ると、やがて山道にいたる。慣れるまではあまり曲がりたがらないように思えた。ホイールベースが3mを超えることもあって、まっすぐ走ろうとしているに違いない。撮影もあって、同じ山道を何度か走っているうちに、ようやくにして早めにステアリングを切ることのたいせつさに気づいた。

4気筒エンジンはフロント・アクスルの内側に置かれており、前後重量配分は50:50、車検証でも1150:1130kgと、いかにもグッド・バランスである。モノコック・ボディで、4輪独立懸架だし、ステアリングがややスローなことにさえ慣れれば、素直に曲がる。

H.Mochizukiいかにも重心が高そうなのに、電子制御のエア・サスのおかげだろう、コーナリング中、ロールは許してもグラリときたりはしない。

撮影のために山道を行ったり来たりしたのは、素のグレードで、オプションの3列シートを装備、ホイールは19インチ、タイヤは255/65を履いていた。車重はカタログで2240kg、車検証でも2280kg。ボディのサイズ的にはほぼおなじだが、ただしV8を搭載する現行トヨタ・ランドクルーザーより150kg軽く仕上がっているところが新型ディフェンダーの強みでもある。

H.Mochizuki軽い、といっても2.3トン近くあるわけだけれど、インジニウム2.0リッター直4ターボは2000rpmで400Nmという大トルクを発揮するから、登りでもかったるくはない。6000rpmを超えても、スムーズかつ気持ちよくまわることも、このエンジンの美点だ。

それと、19インチのほうが路面の凸凹とか段差を乗り越えた際のショックが俄然小さくて、もしも筆者が新型ディフェンダーを選ぶのであれば、こっちがいいと思った。

サイド・ステップはなければないで、室内へのアクセスが容易なことにも気づいた。サイド・ステップは、あれば便利だけれど、なくても困らない。

年内入荷分は完売

オフロードのアップ・ダウン・コースも試すことができた。スイッチひとつでエア・サスペンションが最低地上高をさらに145mmあげてくれる。シフト・レバーをニュートラルにし、オフロード走行を示すピクトグラムの描かれたスイッチを押すだけで、ロー・レインジに切り替わる。

2.0リッター・ターボは、2000rpm以下というホントの極低速でトルクがない印象はあるものの、それ以外、不満はない。むしろ筆者は、もしも自分で手に入れたら、2.0リッター以下の自動車税で乗れることに大いなる感謝と満足を感じる。なんてお得なんだぁ。

H.Mochizuki下りではヒル・ディセント・コントロールが強力に速度をコントロールしてくれる。オフロードでも乗り心地がいいのはエア・サスのおかげだろう。

2000年登場のBMW「X5」に始まり、ポルシェ「カイエン」も参戦して独自の進化を遂げてきた高級SUVセグメントは、主にオンロードでの高速性能を追求してきた。

対して、ランドローバーは、第2次大戦後、イギリスの高級車メーカーのローバーがジープを参考に、主に農作業用を企図して開発、1948年に発表したのが始まりだった。

H.Mochizuki最初は単に車名だけだったのが、1990年に「ディスカバリー」を送り出すことになって、ランドローバーをファミリー・ネームに昇格させ、ディフェンダーを名乗ることになる。

そうした歴史と伝統を踏まえ、新型ディフェンダーは、およそ70年ぶりの全面改良に際して、オフロード4×4をオフロード4×4として進化させることにより、オンロードも快適に走行できるオフロード4×4に生まれ変わった。ラダーフレームでリジッドの先代ディフェンダーなんて、そりゃあもう、まっすぐ走らないし、遅いし、雨は漏るし、でたいへんだった。

H.MochizukiH.Mochizukiなので、もちろん好き好きですけれど、新型ディフェンダーはやっぱり、素のグレードを徹底的に使い倒す、というような使い方がオシャレなように筆者には思える。それでこそ、素のディフェンダー110、619万円の価値が生きてくる。この価格でエア・サスが付いてくるのだ。

オプションはものすごく豊富で、たとえばアームレスト付きセンター・コンソールは素のグレードの場合、3万円の、3列目2座シートは26万2000円のオプションである。あれもこれもと選んでいくと、アッという間に200万円にもなり、合計800万円の高級SUVになってしまう。

もっとも、あれこれ、いろいろあると、あれこれ、いろいろつけたくなるのが人情というもの。ようはディフェンダーがウチの納屋にあるようなライフスタイルがいいよねぇ。と、筆者も思うわけですけれど、そう思うかたは多いようで、新型ディフェンダーの年内入荷分は完売したそうだ。

納車を早めるべく、国内向けにCURATED SPEC(キュレイテッド=精選されたスペック)という、素のディフェンダー110、あるいはSEをベースに、輸入元があらかじめ7人乗りとした仕様等も用意している。

みなさん、きっと、現状を突破できるようなクルマを求めておられていて、新型ディフェンダーはそうした需要にピタッとはまった。新型ディフェンダーの進撃はしばらく続くにちがいない。

H.Mochizuki文・今尾直樹 写真・望月浩彦

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