ホンダが2022年投入を明言! 新型シビックの頂点に「タイプR」設定。燃費規制が強化されるなか、新型シビックタイプRにハイブリッドの可能性はあるのか?
そして、これまでシビック、シビックタイプRを生産してきた英国工場の閉鎖で新型はどうなる? 以下、自動車評論家の渡辺陽一郎氏が最新事情を解説。
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文/渡辺陽一郎
写真/HONDA、SUZUKI
【画像ギャラリー】2021年6月24日に世界初公開された新型シビックをみる
2022年タイプR投入をホンダが明言! どこで作る?
2021年6月24日に世界初公開された新型シビック。2022年にはタイプRとハイブリッドe:HEVのモデルが追加されることも決定
2021年6月24日に、新型シビックが公開された。価格などの詳細は不明だが、内外装のデザイン、直列4気筒1.5Lターボの搭載などが明らかにされている。
そして1.5Lターボ搭載車と併せて、2022年にスポーツモデルのタイプRとハイブリッドのe:HEVが追加されることも発表された。タイプRはクルマ好きにとって気になる存在だ。
そこでシビックタイプRについて販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「シビックタイプRは、開発していることがわかっただけで、詳細は把握していない。どこの工場が生産するかもわからない。可能性が高いのは、日本の寄居工場、北米、タイとされ(以前生産していたイギリス工場は閉鎖された)、工場に応じて納期なども変わる。それでも人気車だから、お客様からの問い合わせは多い」
すでに公表されたシビックのハッチバックは寄居工場が生産する。タイプRも同様と思われるが、輸入する可能性も残る。今のところすべて不明だ。
従来型シビックタイプRの世界販売台数累計4万台以上、そのうち日本国内で約8000台販売された。2022年に導入される新型タイプRは開発中で、どの工場で製造されるのかは未定だという
ちなみに従来型シビックタイプRは、イギリスの工場で生産され、世界販売台数は累計4万台以上になる。このうち、日本国内では約8000台が販売された。比率に換算すれば、国内仕様は20%だから低くはない。前述の通り根強い人気に支えられている。
新型シビックタイプR 注目のパワートレインはどうなる?
写真は、シビックタイプRに搭載されているK20C型2Lターボエンジン。新型タイプRには、実用回転域の駆動力を向上した従来型エンジンを搭載する予定だという
新型シビックタイプRで気になるのは、搭載されるエンジンだ。最も可能性が高いのは、平凡な話だが、従来型のK20C型の2Lターボになる。信頼性の高いエンジンで、実用回転域の駆動力を向上させるなど、改善を加えて搭載する。
次期シビックのプラットフォームは、現行型を踏襲するから、タイプRについてもK20C型との親和性が高い。1.5Lターボエンジンも基本的には従来型と共通だ。
基本的なメカニズムが現行型と共通であれば、車両重量の増加も抑えやすい。それでもホイールベース(前輪と後輪の間隔)は35mm伸びるため、タイプRも走行安定性が向上する。
また、走行性能をさらに高めるチューニングを楽しむユーザーにとっても、エンジンを従来型から踏襲すれば、今までのパーツを使うことが可能だ。
かつてWRX S4のエンジンが設計の新しいFA20型に切り替わった時も、6速MTを組み合わせるWRX STIは、従来から搭載されるEJ20型を継続した。この背景にも同様の事情があった。WRX STIにはモータースポーツを楽しむユーザーが多く、チューニングのメニューが豊富なEJ20型を選んだ。
シビックタイプRは「最速のFF(前輪駆動)車」という称号を守らねばならない。信頼性が高く、車両重量の増加を抑えられる従来型プラットフォームと2Lターボエンジンの搭載には、コスト低減とは異なるメリットもある。
タイプRハイブリッドは追加で設定の可能性も
シビックタイプRに2Lターボ+ハイブリッドが搭載される場合、前輪には2Lターボ、後輪には左右独立した2モーターを備える。後輪の駆動イメージは、レジェンドのSH-AWDに近いと推測される
そのいっぽうで、2Lターボ+ハイブリッドという説も濃厚だ。前輪は2Lターボで駆動して、後輪には左右独立した2つのモーターを備える。カーブを曲がる時は、外側に位置する後輪に高い駆動力を与えることで、車両の進行方向を積極的に内側へ向けられる。後輪側の駆動システムは、レジェンドのSH-AWDに近い。
このシステムの欠点は車両重量の増加だ。後輪にモーターを搭載する4WDを加えるだけで、車両重量が100kg程度は増えてしまう。ノートの4WDも、2WDに比べて120kg重い。
さらにハイブリッドになると、制御システムやリチウムイオン電池の重量も加わるから、大雑把に考えて車両重量が150kg程度は増えるだろう。
従来型シビックタイプRの車両重量は1390kgだから、新たな軽量化を行わなければ、ハイブリッド4WDの採用で1540kgに達する。スポーツモデルとしては重い。
その半面、後輪をモーターで駆動すればパワーアップされ、加速性能も向上する。モーターは後輪を駆動するから、駆動力の伝達効率も高まる。前述の通り後輪左右の駆動力配分を調節できるから、旋回性能も一層優れたものになる。
欧州では、スポーツモデルでも環境に配慮し、モーターを併用する車種が増えてきている。スイフトスポーツ欧州仕様には、マイルドハイブリッドが搭載されている
そして欧州では、スポーツモデルでもモーターを併用する車種が増えてきた。スイフトスポーツも、欧州仕様にはマイルドハイブリッドを搭載しており、環境性能を向上させている。
ホンダの過去を振り返ると、1970年代の排出ガス規制に対応した初代シビックのCVCC(希薄燃焼エンジン)以来、優れた環境性能と運転する楽しさの両立が商品開発の大切なテーマになっている。
かつてはハイブリッドスポーツクーペのCR-Zを用意したこともある。今ではスーパースポーツカーのNSXがハイブリッドだ。
このようなホンダの伝統的な方針も考慮すると、今の時代にホンダが電動技術を使わない単純なスポーツモデルを投入するのは、不自然にも思える。
最近のコロナ禍等の慌ただしさも考えると、2022年に登場するシビックタイプRは、従来型と同様の2Lターボを搭載するかもしれない。その後、2Lターボ+ハイブリッドに切り替えることも充分に考えられるだろう。
あるいは両タイプを併売することもあり得る。従来型シビックタイプRの価格は475万2000円だから、そこに専用開発された2つのモーターを備えるハイブリッドを装着すれば、少なくとも550万円前後には達する。
高価格で、なおかつ運転感覚の違いも大きいため、両タイプをそろえるとユーザーに喜ばれる。そして環境性能のニーズが高まったら、2Lターボ+ハイブリッドに統合するわけだ。
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みんなのコメント
ハイブリッド化は車重・コスト増に加えて、極限域でのパフォーマンスダウンは避けられない。
次期型が性能・スタイル共に洗練されて登場すれば、現行FK-8型を慌てて駆け込み購入された方々は、残念ながら最期の内燃機関タイプRにはならないと思う。