ブラジルの大人気ツーリングカー・シリーズ、SCBストックカー・ブラジルの2018年開幕戦が3月10日に開催され、2年ぶりの開催となるゲスト参加の特別イベント“レース・オブ・ダブルス”に、日本でもおなじみのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラを招待して挑んだ王者ダニエル・セラ組が、見事なコンビネーションで勝利を飾った。
レギュラー参戦するドライバー1名に対し、各マシンとも国際的に活躍を演じる著名なドライバーを招聘して2名1組のペアを結成。耐久色を加えたレース・オブ・ダブルス戦として争われたSCB開幕インテルラゴスは、週末の練習走行から雨模様となるあいにくのコンディションのなかで開催された。
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今季からSCBのシリーズにフル参戦を表明したルーカス・ディ・グラッシやネルソン・ピケJr.を筆頭に、2014年王者のルーベンス・バリチェロのほか、リカルド・ゾンタ、アントニオ・ピッツォニアらが参戦。加えてゲストにも、元F1経験者のフェリペ・マッサを筆頭にフェリペ・ナッセやジェローム・ダンブロジオ、DTMドイツ・ツーリングカー選手権経験者のアウグスト・ファーフス、ジェイミー・グリーン、ニコ・ミューラー、オリバー・ジャービス、フィリップ・アルバカーキなど、豪華なラインアップが集った。
その雨混じりのコンディションの合間を縫って、ドライ路面でのセッションとなった予選では、Q1、Q2と速さを見せたセラ/オリベイラ組のユーロファーマRC、29号車が見事にポールポジションを獲得。フロントロウにディ・グラッシ/ファーフス組のHEROモータースポーツ、セカンドロウ3番手にフルタイムスポーツ、バリチェロ/アルバカーキ組、4番手にシムド・レーシングのフェリペ・フラーガ/ニッキー・キャッツバーグ組が続いた。
迎えた決勝スタート時刻にはトラックに大粒の雨が落ち、ウォーミングアップ走行が赤旗で中断されるほどの雨量に。これにより全車ワンメイク・ピレリのフルウエット指定とされた上で、セーフティカー(SC)先導によるパレードラップでスタートが切られることとなった。
その数分後にSCがピットレーンへと消えレースが開始されると、スタートドライバーを務めたオリベイラが順当にポジションを確保し1コーナーへ。しかし、2番手を走っていたディ・グラッシのマシンが突如コースを外れるアクシデントに見舞われ、なんとかトラックに復帰したものの急遽のピットイン。そこで長らく過ごした後に、開始早々でレースを終える決断を下すこととなってしまう。
この状況についてディ・グラッシは「マシンのデフォッガーが機能を停止して、おまけにワイパーまで動かない状況だった。これではまともにコース上の雨量を視認することもできず、少しでも速度域が上がるとすぐにマシンがアクアプレーニングを起こして飛んでいく。こんな些細なトラブルで大事な開幕戦を失うなんて、本当についてない」と説明し、肩を落とした。
首位を守るオリベイラの背後には、6番手スタートから猛烈なスパートを見せたブラウ・モータースポーツ、セザール・ラモス/ケルビン・バン-デル・リンデ組のラモスが浮上。そこに3番手スタートのアルバカーキも加わり、この3台がパックとなって後続を引き離しにかかる。
レースが中盤に差し掛かる頃には雨量が減り始めると同時に、2番手のラモスがオリベイラにプレッシャーを掛け始め、7周目の1・2コーナー“セナS”でオリベイラをオーバーテイク。これでブラウ・モータースポーツの30号車が首位浮上に成功する。
さらに最終コーナーではアルバカーキも続き、ポジションがめまぐるしく入れ替わるなか、4番手以降の隊列も先頭集団をキャッチアップし始め、バックストレートエンドのターン4、カーブ・ド・ラゴで膨らんだフラーガをかわしたシェルVパワー・レーシングのリカルド・ゾンタ(ローレンス・バンスゥール組)が4番手に浮上すると、そのままの勢いでゾンタがオリベイラを捕捉。12周目には一気にオーバーテイクし、表彰台圏内まで浮上してきた。
全31周レースの中盤で、各陣営がドライバー交代のためのピットイン・タイミングを計り、その際にドライタイヤに履き替えようと各チームがチェンジオーバーの時期を探るなか、14周目にニコ・ミューラーのドライブしていたイピランガ・レーシングの21号車が右リヤタイヤのパンクに見舞われ緊急ピットへ。ここでチアゴ・カミーロとドライバー交代の上、給油とタイヤチェンジを行うも、交換作業に手間取り大幅にタイムロス。
このミューラーがコース上に落としたデブリ、タイヤ片を除去すべくSCが導入されると、ここが最適なピットウインドウと見たライバル勢が一斉にピットイン。イピランガ・レーシングはまだ21号車がピットに留まっていたものの、同じく3号車の女性ドライバー、ビア・フィゲレイド組のマシンもバーストに見舞われたためピットに呼び寄せ、大破した右リヤのボディワーク修復を急ぐ必要に迫られ、他陣営のマシンも入り乱れてピットレーンは大混雑に。
一方、SCが引っ張る隊列に残り、さらなるドライタイヤへの交換タイミングを計っていたシムド・レーシングのカカ・ブエノ/マッサ組、フルタイムスポーツ、バリチェロ/アルバカーキ組は、18周目のレース再開と同時にピットへと向かい、それぞれマッサ、バリチェロをドライタイヤで送り出し、元フェラーリF1ドライバーによる表彰台争いの直接対決構図に。
その時を同じくして、ターン4でバトルを演じていたピケJr.が、プラティ-ドナドッツィの1号車ピッツォニア/ジャービス組のマシンをヒットし、ピケJr.は自走不能となりエスケープゾーンでストップ、これが3度目のSC導入の引き金となった。
このタイミングで、長らくステイアウトで首位を守っていたラモスがバン-デル・リンデにスイッチすべくピットへ。完全ドライトラックへと変貌したインテルラゴスでのアドバンテージを得るべく、最小限の給油とスリックへの履き替えを行い3番手でコースへと復帰。
SC背後、先頭にはゾンタからドライバー交代を終えたバンスゥールが残り、2番手にダニエル・セラが着け、リスタートではセラとバン-デル・リンデが揃ってバンスゥールを仕留め、激しい首位攻防戦を展開。その背後からはマッサとのバトルを制したバリチェロが猛烈なペースで追い上げ、バンスゥール、バン-デル・リンデを交わして2番手にまで浮上。
しかし、王者経験者の追い上げもわずかに届かず。WEC世界耐久選手権のアストンマーティン・ワークスドライバーでもあり、2017年SCB王者の貫禄を見せつけたセラが2秒のマージンを維持してトップチェッカー。以下、バリチェロ、バン-デル・リンデの順でフィニッシュとなった。
しかしレース後、3位に入ったセザール・ラモス/ケルビン・バン-デル・リンデ組にセーフティカー・ピリオド中の規定違反により、20秒のタイムペナルティ加算の裁定が下り、12位まで降格。代わって4位でフィニッシュしていたフルタイムスポーツのリカルド・マウリシオ/フェリペ・ナッセ組が最後の表彰台に上がっている。
また、5度のチャンピオン経験者ブエノからバトンを受けたマッサは、シェルVパワー・レーシングのアッティラ・アブレウ/マーク・ウインターボトム組と激しいバトルを演じ、2008年の参戦時には2位表彰台を獲得しているVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー2015年王者ウインターボトムにプレッシャーを掛け続けたものの、終盤にはエンジントラブルが発生し13位に終わっている。
次戦、SCB第2戦は4月8日にクリティバ・ラウンドが開催され、こちらも今季初となる2ヒート・レースが予定されている。
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