この記事をまとめると
■パキスタンでは乗用車の新車販売のほとんどが日本車となっている
見た目は「やっちまった感」が拭えない! アジアじゃ人気も日本じゃ不人気車まっしぐらだったフィットのセダン版「アリア」とは
■輸入車の関税が高く販売される新車は国内に工場のあるスズキ・トヨタ・ホンダが占める
■現在は中古車の輸入も禁止されておりこれまで以上に日本車占有率が高くなっている
パキスタンで新車として販売されるクルマはほぼ日本車
クルマ事情について世界を眺めてみると、日本では考えられないような文化や事情に驚くことがあります。世界中に浸透しきったかに思える日本車の人気がまったくなかったり、逆に路上のクルマがすべて日本車かと思える国があるなど、なかなか興味深いもの。その理由を探ってみれば、さらに興味深いメーカー同士の争いや各国の思惑が浮かび上がってくるのです。
インドとイラン、アフガニスタンなどに囲まれたパキスタンは、人口1億9000万人ほどで、面積は日本の約2倍という国。人口1万人あたりの自動車保有台数は約160台と、アジアの平均から見ると4分の1程度で「これからの需要が見込める市場」と捉えることができそうです。ところが、パキスタンにおける日本車率を聞いて驚きました。なんと、乗用車の新車に関しては100%日本車なのです!
世界各国を見まわしても滅多にないことですが、理由はさほど難しいものではありません。パキスタン国内にある自動車工場はスズキ、トヨタ自動車、ホンダの3社であり、新車市場の90%以上を占めているからです。年間25万台ほどの生産量があるものの、トヨタやスズキの人気車種になると「6カ月待ち」というのもザラ。なんだか親近感を覚えそう(笑)。
なお、パキスタンでは輸入された新車には高額の関税(最大90%/2024年5月現在)がかかるため、とても庶民が手を出す値段にはなりえません。それゆえ、パキスタンには輸入車の販売拠点がほとんどなく、国内で生産されている日系メーカーのクルマが「国産車」として(一般的な)価格で販売されているというわけです。
当然、パキスタンを有望な市場と考え、日系メーカーに負けじと参入を試みるメーカーはあとを絶ちません。しかし、これまでも韓国や中国のメーカーが参入してきたことがあるのですが、ディーラー網の構築や技術提携、部品供給といった面でのハードルが高く、日系メーカーに苦杯をなめさせられている模様。
実際、スズキのディーラーはパキスタン内に143店舗も構えており、このうち何軒かは中国メーカーからの買収をもちかけられたこともあるそうです。が、当のディーラーは「新車や部品の供給に不安がある」として、これを突っぱねたのだそう。
これなら、当分の間は日本車100%という状況は変わることなく続くのではないでしょうか。ちなみに、以前は中古の日本車を数多く輸入していたパキスタンですから、日本語の会社名や宣伝文句が描かれたクルマがそこら中で見られたことも有名です。
が、2023年現在のパキスタンは中古車の輸入を認めていないため、残念ながらこうした風景は徐々に少なくなるかもしれません。
いずれにしろ、日系メーカーの着実な展開、つまり一歩一歩確実に地歩を固めるやり方は「(景気や治安によって販売が乱高下する)パキスタンに合っている」といわれることもしばしば。パキスタンのクルマ文化がこれからも日本車とともにあること、我々日本人としては見守り続けていきたいものです。
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