市街地での運転を考えたリフトアップ
トヨタ・アイゴX(クロス)が発売された。アイゴといえば、欧州では一般的なトヨタのコンパクトカー。だが従来モデルの車高を上げて、クロスオーバー風のボディキットを装備させたわけではない。
【画像】クロスオーバーになったアイゴX 欧州の競合モデルと写真で比較 全99枚
斬新な見た目のとおり、これは完全なニューモデル。Bセグメント・ハッチバックのヤリスも採用するプラットフォームを、短縮して採用している。
都市部向けのコンパクトカーは、純EVへのシフトが進んでいる。それでも、内燃エンジンを搭載した手頃な価格のモデルへの需要は消えていえない。クロスオーバーという流行の波には、しっかり乗ったようだけれど。
クロスオーバーといっても、オフロード性能を重視したわけではない。先代のアイゴ比で11mm持ち上げられた地上高は、歩行者やサイクリストと視線を近づけることが目的だという。混雑した市街地でも発見しやすくし、事故を減らすことができる。
動きが速い自転車が入り乱れる都市部では、運転時のストレスに大きな違いが生まれるだろう。道順があやふやだったりすると、なおのこと。
搭載するエンジンは、1.0L 3気筒ガソリン。マイルドハイブリッドでもなければ、ターボチャージャーで過給もされない、ベーシックな自然吸気となる。加えて前輪駆動のみで、メカニズムはシンプルで安価なものだ。
シフトレバーを積極的に操る楽しさ
純EVの登場が相次ぐなかで、旧式的な内容に聞こえることは確か。しかし、コンパクトカーであっても純EVは価格が高い。フィアット500 エレクトリックでも、英国価格は2万ポンド(約310万円)以上する。
一方で、アイゴXは1万4795ポンド(約229万円)から。訴求力のある数字だ。
最高出力は72psだから、電気モーターのように鋭い発進加速は得られないものの、都市交通の流れへ着いていくことは可能。50km/hを超えてくると、加速は緩やかになっていくが。
ターボエンジンとは異なり最大トルクは4400rpmで得られ、力の山を活用するには頻繁に5速マニュアルを操作する必要がある。だが、アクセルペダルを踏み込んで、シフトレバーを積極的に操ることが楽しい。近年ではなかなか味わえない体験だ。
アイゴXでは、CVTも選択できる。渋滞時の左足の運動から開放されることを考えると、選ばれる割合は多いだろう。
ただし、アクセルペダルを深く踏んだり、急な登り坂へ差し掛かると、CVTらしい動作が気になる。必要なパワーを得るためにCVTが悩み始め、エンジンの回転数が不意に上下してしまう。
不快なほど賑やかなわけではない。だが、右足の操作と関係なく変化するエンジン音は、聞いていて心地良いものではない。
シフトレバーを倒すか、ステアリングホイールのシフトパドルを弾くと、マニュアル・モードを選べる。反応が鋭いわけではないが、フィーリングを改善できる。
しなやか乗り心地 好印象なコーナリング
5速MTなら、もっと軽快にアイゴXを運転できる。アイドリングストップ機能が付き、頻繁に発進と停止を繰り返すような場面でも動作は滑らか。クラッチペダルは軽く、シフトレバーの動きも正確だ。
乗り心地は硬めだが、感心するほどしなやか。ホイールサイズは18インチと大きいにも関わらず、舗装のツギハギを通過しても大きな振動は伝わりにくいようだった。
コーナリング時は、サスペンションが適度にボディロールを抑えてくれ、姿勢制御は良好。落ち着きも失いにくい。パワーが少ないため、トラクションが失われる心配もない。ステアリングの反応も悪くなく、重み付けも丁度良く、正確に小さなボディを導ける。
都会派のクロスオーバーとして、穏やかに運転する方が向いている。優れた燃費も返ってくる。それでも、トヨタ・アイゴXの運転は楽しい。郊外へ足を伸ばしても。
モデルチェンジに伴い、英国価格は僅かに上昇した。そのかわり、高度な運転支援システムとインフォテインメント・システムを搭載している。
ダッシュボードの中央には、アップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応するタッチモニターが備わる。3.5mmのミニピンジャックのケーブルでiPodとつないでいた時代は、とっくに過ぎたようだ。
新鮮なまでにシンプルなドライビング体験
英国で提供されるトリムグレードは、ピュア、エッジ、エクスクルーシブの3種類。エントリーグレードでも、17インチのアルミホイールにパワーウインドウ、オートヘッドライト、エアコンなどが搭載される。基本装備も充実している。
リアシートの空間を重視したいなら、ヒュンダイi10の方が有利ではある。ターボエンジンも選べるから、僅かながら、より活発な走りも得られる。とはいえ、アイゴXの新鮮なまでにシンプルなドライビング体験は、大きな魅力だと思う。
リアシートへ頻繁に人を乗せる予定があるなら、オプションのキャンバスルーフを装備するのが良いかもしれない。天気が良ければ背中を丸めず、大人4名での移動も可能になるだろう。身長が高いと、頭が少し飛び出すかもしれないけれど。
トヨタ・アイゴX 1.0 VVT-i エクスクルーシブ(欧州仕様)のスペック
英国価格:1万4795ポンド(約229万円)
全長:3700mm
全幅:1740mm
全高:1510mm
最高速度:160km/h(予想)
0-100km/h加速:14.9秒
燃費:20.4km/L
CO2排出量:110g/km
車両重量:940kg
パワートレイン:直列3気筒998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/6000rpm
最大トルク:9.5kg-m/4400rpm
ギアボックス:5速マニュアル
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みんなのコメント
これこそ純EVでシティコミューターとして生きる気がします。