自動車評論家4人が、ここ2年間でデビューしたモデルのなかで、デビュー時と現在とで評価が変わったクルマについて見てゆく。
国産、輸入車ともにデビュー時と時が経過した現在とでは、その評価も異なってくるはずだが、果たしてそのジャッジやいかに!?
※本稿は2021年5月のものです
文/片岡英明、松田秀士、清水草一、永田恵一 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年6月10日号
【画像ギャラリー】評論家4氏の「評価の上がったクルマ」「下がったクルマ」をギャラリーでクイックチェック!
■その気になって運転すると理屈抜きで楽しいGRヤリス(片岡英明
評価が上がった筆頭はGRヤリスで、電動化が求められるこの時代にホットハッチを出してきただけで賞賛もの。逆に下がったのはヤリスクロスだという。
■評価が上がったクルマ…GRヤリス この時代にホットハッチを出したことが凄い!
デビュー直後に試乗した時より好印象に変わった新型車の代表はGRヤリスだ。初めて運転した時、FFのRSは「GR」を名乗るのだから、もう少し辛口でもいいと思った。
だが、冷静に考えてみると電動化が求められる時代に走りに特化したホットハッチを送り出したのはすごいと思ったし、その気になって運転すると理屈抜きで楽しい。
新開発の直噴直3、1.6Lターボは272psとパワフル。ボディ前半がヤリスと同じBセグで後半がカローラと同じCセグとなり、ヤリスとは別物なのがこのGRヤリスの特色なのだ
ハスラーはデザインに初代ほどのインパクトを感じなかったが、プラットフォームを一新し、エンジンもCVTも新設計とした。トータル性能は初代ハスラーを大きく上回っているから考え直した。
ホンダeも最初に街中で乗った時は、乗り味がちょっと荒削りだと思った。また、肝心の電費もメロメロだったからライバルに負けていると感じた。
が、長い距離を走り、クルマの運転のコツをつかむと電費は200kmレベルまで伸ばせた。ハンドリングはスポーティだし、リア駆動の操る楽しさもわかりやすい。
輸入車では先代とイメージを大きく変えたディフェンダーを好きになれなかった。だから評価は辛口になったのだが、先代を大きく上回る実力の持ち主と改めて感じた。
ほかに評価を上げたモデルとしてはハスラー、ホンダe、ランドローバーディフェンダーの3車を片岡氏は挙げた。そのいずれもがデビュー時から時を経たことでそのよさが再認識されてきたのだという
●評価が上がったクルマ
・トヨタ GRヤリス…登場直後:85点 → 現在:91点
・スズキ ハスラー…登場直後:82点 → 現在:85点
・ホンダ ホンダe…登場直後:82点 → 現在:88点
・ランドローバー ディフェンダー…登場直後:82点 → 現在:85点
■評価が下がったクルマ…ヤリスクロスの質感と乗り心地は今一歩!
残念にも評価を下げたのはヤリスクロスだ。
ルックスは目を引くし、オンロード、そして悪路の走りもなかなかのレベルにある。だが、インテリアの質感や乗り心地などはヤリスと同等レベルに止まっているし、3気筒エンジンもノイズが耳障り。
評価が下がった筆頭モデルはヤリスクロス。販売好調なトヨタSUVでも売れ筋モデルなのだが、片岡氏は走りのレベルの高さは認めつつも質感やエンジンノイズ、インテリアの質感にもう一歩の努力が欲しいとのこと
マツダのCX-30も同じクラスにMX-30が投入されると、差を感じてしまう。
輸入車ではFFに生まれ変わったボトムのBMW1シリーズ。FRの最終型1シリーズに乗ってみたら走りの実力はまだ追いついていない。
CX-30、1シリーズはダウン
●評価が下がったクルマ
・トヨタ ヤリスクロス…登場直後:88点 → 現在:85点
・マツダ CX-30…登場直後:80点 → 現在:77点
・BMW 1シリーズ…登場直後:82点 → 現在:78点
■高速道路での安定性に驚かされたeKクロススペース/eKスペース(松田秀士)
評価が上がった筆頭はeKクロススペース/eKスペースで、ダウンしたのはハリアーとメルセデスベンツBクラスだが……、そのワケとは?
■評価が上がったクルマ…eKクロススペース/eKスペースに刮目!!
以前、ベストカーの高速道路120km/h取材で丸1日eKクロススペース/eKスペースに試乗したのだけれども、驚いたのは高速道路での安定性。
試乗会でも高速道路は走ったけれどもエリアがかぎられているので、大型トラックを追い越す際の横風影響や長い上り坂、下り坂といったさまざまなシチュエーションを試せていなかったことなどから、改めてその評価が上がったというワケ。
三菱のeKクロススペース/eKスペース。ベストカーでの120km/h走行テストで実際に走らせてみて、高速での走行安定性に驚かされたという松田氏。走りにうるさい松田氏をうならせた実力は高い
特に4WDのeKクロススペースはリアサスがFFと異なり、高速での横風に対する安定性がより高かった。
それとマイパイロットが115km/hまでの設定だったけれども、車線内の中央を維持して走るようアシストしてくれるので横風や路面の外乱にも安心して走行できる。
プジョー2008はさすがに欧州でヒットしているモデルだけあり運転が楽しくて内外デザインもポップだし、とにかく所有して走らせる高揚感がある。国産車にはこの高揚感は何なのか? をもっと考えてほしいと思っちゃう。
欧州では屈指のヒット車になっているプジョー2008。日本車にはない所有して走らせる高揚感がこのクルマのウリだ、と松田氏は指摘
2008はEVも含めてトータル10日間ほど広報車を借りて試乗したけど、全幅が1770mmと日本の道路事情にピッタリ。
全高1550mmも駐車場探しがラク。室内スペースも後席に余裕があるし、背もたれを倒せばラゲッジスペースがかなり大きく利便性が高いです。
3気筒1.2Lターボのガソリン車の燃費もよく、EVは市街地でのモーターレスポンスがよく、特に車庫入れなどアリさんのようなアクセルコントロールがとてもスムーズ。これモーターの特性なんだね。一戸建てだったらEVお薦めです。
それとプジョーは2008にも508と同レベルのADAS(運転支援)が装備されていて、高速でのACC+LKA(車線内中央維持)がバツグンにラクチンです。
●評価が上がったクルマ
・三菱 ekクロススペース/ekスペース…登場直後:70点 → 現在:85点
・プジョー2008…登場直後:75点 → 現在:88点
■評価が下がったクルマ…トヨタ ハリアー。今になってみると……?
では評価が下がったのは、まずハリアー。これはねRAV4がよすぎるんですよ。
初めはインテリアも含めて走りも先代よりランクアップしたこと間違いないし、ちょっと輸入車に乗っているようなエグゼクティブ感がたっぷり。
ただ、2度目、3度目と走り込むにしたがってこの走りのテイストってRAV4だよね、とフェイク感が込み上げてくる。
RAV4より高級バージョンなのにフェイク!? ってどうよ? となるワケ。
ベースとなったRAV4がよすぎるおかげで評価が下がってしまったと松田氏が語ったハリアー。RAV4よりも高級なはずなのに、フェイク感があるのがマイナス
例えばエアコンのセンター送風口はRAV4には風量個別コントロールダイヤルがあるのにハリアーにはない。夏場は肩口冷えます。
RAV4からオフロード感を取り去り、マルチSUVらしさを重視したんだろうけど、なにか足りない。やるならもっと高級車に仕上げてほしい。
最近のメルセデスは内外デザインが素晴らしい。Bクラスも最初はこのサイズで3列シートを採用したことに注目し、ドライブするとAクラス並みの取り回しなど、日常使いでのウレシイ取り回しに感心した。
しかし、実際3列シートはかなり窮屈ガマン大会。3列目へのアクセスもそれほどよくない。パッケージごともう少し考えてほしいな、メルセデスなんだから。
コンパクトながら3列シートを用意しているメルセデスベンツBクラス。しかし、そのパッケージなどに不満があると松田氏は指摘する
●評価が下がったクルマ
・トヨタ ハリアー…登場直後:80点 → 現在:70点
・メルセデスベンツ Bクラス…登場直後:85点 → 現在:70点
■時間が経つほどヤリスの走りのよさと驚異的な燃費の存在感が大きくなる(清水草)
ヤリスの評価が低かったという清水氏だが、乗るたびにその魅力に引き込まれていったとか。また、アウディA6、アコードの評価にも変化あり!
■評価が上がったクルマ…ヤリスのよさがジワジワきてます!
ここ1~2年にデビューしたクルマで、登場時より自分の評価が上がった代表は、ヤリスだ。
当初はヤリスについて、「デザインとインテリアとパッケージングがダメすぎる!」と思っていた。
ハイブリッドの走りのよさと、想像を絶する燃費にはたまげたけど、デザインとインテリアとパッケージングが悪かったら、実用車として致命的、なはずだった。
でも、時間が経てば経つほど、あの走りのよさと驚異的な燃費の存在感がどんどん大きくなるし、1.5Lガソリン6MTモデルの存在も心に響いてくる。
その一方で、自分が嫌っていた毒虫顔、コンビニ弁当的インテリア、後席の狭さは、どうでもよくなっていった。結局欧州カー・オブ・ザ・イヤーも獲っちゃうし、ヤリスってスゲエ!
アコードもじわじわと評価を上げている。出た時はとにかく地味で、「なにこれ?」って感じだったけど、乗るとまったく欠点のないとってもいいセダンだし、見た目もカッコいいし。
滅多に見かけないけど、たまに見ると、珍しいだけに見とれてしまう。
登場直後によさがわかるクルマもあれば、少し時間がかかるクルマもある。清水氏の評価が上がった3台、特にA6とアコードはじっくり乗ってわかるクルマということだ
アウディA6
アウディA6もちょっと似たようなところがある。最初は存在感が希薄に感じたんだけど、乗るとこれがもう凄まじくいいクルマだったんだよ! 今まで体験したことのない、信じられないほどステキな乗り心地で。
その後レクサスLSや新型ベンツSクラスやアウディA8に乗っても、A6が一番! っていう確信が深まって、どんどん評価が上がっていきました。あの巨体にして、四輪操舵で最小回転半径5.2mってのも凄いし。うーん、いつか欲しいもんだ。
●評価が上がったクルマ
・トヨタ ヤリス…登場直後:70点 → 現在:95点
・ホンダ アコード…登場直後:65点 → 現在:85点
・アウディA6…登場直後:75点 → 現在:98点
■評価が下がったクルマ…ホンダeへのリスペクトが下降気味
逆に登場時より評価が下がった代表は、ホンダeだろうか。
ホンダeってなにしろデザインがシンプルでキレイでしょ。インパネもすごく印象的だし、RRのEVっていうのもインパクトあった。
ホンダeを見ちゃったらもう、日産リーフなんて完全に時代遅れ! って思ったけど、数を売る気は最初からないし、乗り味も典型的なEVで、すべてがダイレクトすぎる気もしてきた。
ホンダeの評価が時間を経て下がったという清水氏。典型的なEVの乗り味がはじめはよかったが、だんだんきつくなってきたらしい。自然な乗り味のMX-30EVの登場も影響しているとか
同じく売る気がないEVとしては、マツダのMX-30EVみたいな自然な乗り味のクルマも登場したから、ホンダeへのリスペクトは、どんどん小さくなっている。
同じくホンダのフィットも、当初に比べると存在感が低下している。
出た時は凄くバランスのいいコンパクトカーだと思ったんですよ。それは今でも変わりないけど、キラリと光るものが足りないから、なんとなく忘れつつある。
癒し系のデザインもインテリアも好きなんだけど、じゃ欲しいかって言われたら、そこまではいかない。欲しい! と思わせる個性がなかったんだね。
ホンダ フィット
RAV4も同様。姉妹車のハリアーが出たとたん、ややどうでもいい存在になった。
RAV4って見た目はワイルド系だけど、オンロードでの走りはちっともワイルドじゃなかったから、エレガント系のハリアーのほうが、すべてがしっくりきたんだよね。
●評価が下がったクルマ
・トヨタ RAV4…登場直後:60点 → 現在:55点
・ホンダ フィット…登場直後:80点 → 現在:75点
・ホンダホンダe…登場直後:90点 → 現在:70点
■GRヤリスの氷上での感動は、スカイラインGT-Rに乗った人の感動に近いかもしれない(永田恵一)
購入したクルマだけにGRヤリスには一家言ありの永田氏。評価も上がった部分と下がった部分があるようで。そのほかプジョー208の評価も変化した。
■評価が上がったクルマ…プジョーの猫足が復活している
・トヨタ ヤリス……ヤリスは特にハイブリッドが動力性能と燃費を超高次元でバランスさせている点など、全体的に乗ると登場時から「オオッ」と感じるモデルだった。
ただ登場時は乗り心地だけが「悪くはないけど、クルマ全体の魅力に追いついていない」というのも事実だった。
それが今年に入って1万kmほど走った広報車に乗ったところ、ダンパーの慣らしが進んだせいなのか、乗り心地は「まあいいか」というレベルになっており、ディーラー試乗で乗り心地に不満を覚えてもそれほど心配しなくていいと思う。
トヨタ ヤリス
・GRヤリス……GRヤリスは自分で買い、約7カ月で約8000km乗ったので○方向と×方向それぞれがある。
○方向は氷上を走った時のこと。4WDなのでコーナーでのノーズの入れ方にコツは要るものの、それさえ掴めばガンガン振り回せ、大いに楽しませてくれた。
またVSCのエキスパートモード(スロットルは制御なしで、ブレーキは最低限の制御と思われる)が非常に賢く、エキスパートモードにすると振り回しながらでもコースアウトやスピンのリスクを大幅に減少しながら、イージーに楽しめる点も印象的だった。
私が氷上でGRヤリスに与えてもらった感動は、平成初めにスカイラインGT-Rに乗った人の感動に近いかもしれない。
トヨタ GRヤリス
×方向はヤリスとは対照的に乗り心地だ。私のGRヤリスは一番サスペンションが固いハイパフォーマンスということもあり、最初から「高速道路のつなぎ目くらいの小さな凹凸なら悪くないけど」とあまりいい雰囲気ではなかったが、それは約8000km走っても変わらず。なるべく早くダンパーに手を加えたいと思っている。
・プジョー208……208は国沢光宏師匠に「プジョーは短時間だとよさがわかりにくいことが多いぞ」と言われたことがあったとおり、「それなりによさそうだけど」とは感じたものの、小さなハンドルや液晶メーターといったアヴァンギャルドなところのほうが印象に残ったのも事実だった。
しかし、何日か預かる機会があったのも含め、長い時間乗っているとエンジン音やロードノイズの小ささによる静粛性の高さに加え、初期モデルでは17インチタイヤを履くGTだとちょっと薄かったプジョーらしい猫足感が、最近乗ったロットが進んだと思われる個体ではGTでも期待値に届いている点など、乗るほどいいクルマに仕上がっていることが確認できた。
それだけに208は、クルマ好きが毎日乗るようなコンパクトカーで迷っているなら、ぜひ候補に入れてほしい存在だ。
登場直後よりもある程度距離を走ったほうが本当の実力を感じられるクルマもある。永田氏の場合はプジョー208がそれで、最近乗った試乗車は足がしなやかになっていたらしい。ヤリスの乗り心地も向上していたとか
●評価が上がったクルマ
・トヨタ ヤリス…登場直後:88点 → 現在:90点
・トヨタ GRヤリス…登場直後:90点 → 現在:91点
・プジョー208…登場直後:85点 → 現在:90点
■評価が下がったクルマ…デジタルミラーの違和感が増してきた
・レクサスESのデジタルサイドミラー……初めて乗った時は雨だったこともあり、雨でもクリアな後方視界が確保できる点など、「課題もあるものの、可能性も感じる」という印象だった。しかし昨年秋に乗った際には天候に恵まれたこともあり、後続車との距離感のつかみにくさなどのデメリットばかりが目立ち、「基本的に選ばないほうがいい」という結論になった。
レクサスESのデジタルサイドミラーも評価ダウン。さらなる進化に期待
●評価が下がったクルマ
・レクサスES:評価が下がったのはデジタルミラーのみで採点なし
【画像ギャラリー】評論家4氏の「評価の上がったクルマ」「下がったクルマ」をギャラリーでクイックチェック!
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
日産 新型「“3列7人乗り”ミニバン」初公開に大反響! 全長“5m”級&大開口スライドドア! 利便性バッチリな「エヴァリア」フランス登場! 日本販売熱望の声も
全長9m! 2000万円級のいすゞ「新型モデル」発表! 6速AMT搭載で「豪華仕様」も設定! 機能向上した「新ガーラミオ」発売
名古屋から豊橋まで無料でノンストップ! 国道23号のバイパス「名豊道路」がもうすぐ全線開通。
スバル新型「スポーツ“セダン”」公開! MT採用&パフォーマンス重視設定がイイ! 羨ましすぎる水平対向エンジン搭載モデル! 米に登場の「WRX tS」はどんなクルマとは
ダイハツの「4ドア“クーペ”」!? 全長4.2mボディ×旧車デザイン採用! まるで「小さな高級車」な豪快内装もイイ「DNコンパーノ」とは
フェラーリ初のSUV「プロサングエ」買うなら年収はいくら必要? 価格未公表の「超人気モデル」を手に入れるために“お金よりも必要なもの”とは?
トヨタ 新「プリウス”スポーツカー”」に大反響! “GT風”バンパー&重低音マフラー採用! ド迫力エアロの「ハイブリッドスポーツカー」7月発売へ
初見じゃ動かすコトすらキツイかも…今でいう[マツダ6]的存在!? な[アンフィニMS-8]の内装が衝撃すぎ
トヨタが『GRクラウンスポーツ』を計画中!? 新たな高性能フラッグシップSUV登場となるか
「景色も何もない。真っ白です」Juju、SF初ウエットレースで視界に驚く/第3戦SUGO
みんなのコメント
主観だけで点数を付けるライターってクソだなと思ったら、
納得の「ベストカー」の記事じゃん、草が大量に生えました。