販売台数は前年同期比で40.2%成長
中国・BYDが2024年第2四半期の決算を発表しました。収益性を大幅に改善させることに成功し、テスラよりも多くの自動車を販売しながら、テスラよりも稼ぐ力をつけている動向も判明しました。
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現在、BYDはバッテリーEVとPHEVのみをラインアップするというメーカーであり、中国国内だけでなく、日本市場をはじめに海外展開を加速させています。他方で、BYDに対する逆風が、2023年冒頭にテスラが始めた、中国国内のEV値下げ戦争です。しかも、2023年初頭までは、バッテリーの原材料であるリチウムのコストが暴騰していたことで、値下げ圧力と原材料コストの高騰というダブルパンチを受けてしまっていたわけです。いずれにしても、BYDがどれほど販売台数と収益性を両立させることができるのか。とくにEV減速と世間でいわれながら、EVだけで利益を出すことも難しいといわれるなかにおいて、世界最大のEVメーカーがどれほどの決算を実現できるのかに注目が集まっていました。
そして、今回判明した2024年第2四半期における決算内容について、まず初めにBYDの月間販売台数の変遷を見てみると、とくに最新の8月は37.3万台超という月間ベースでの史上最高台数を更新し、2024年は2月を除いて毎月販売台数を増やしています。
次に、その売り上げは1761.8億元、日本円でおよそ3兆5500億円と、前年同四半期比で25.9%もの成長を実現しています。他方で、販売台数は前年同期比で40.2%もの成長を実現していることから、BYDの値下げ戦略が一定程度売り上げに影響しているものと推測可能です。
その一方で、BYDの底力が見て取れるのが収益性です。とくに注目するべきは、粗利益について、前年同期比で25.6%もの粗利益の増加を実現しながら、売り上げに占める粗利益率18.69%と、この値下げ戦争下、しかも主力車種がシーガルやQin Plus、Qin Lなどといった、100万円台から200万円台の大衆セグメントであるという点を踏まえると、優れた収益性を確保していると言えます。
さらに、販管費や研究開発費などを差し引いた営業利益という観点も改善を見せてきています。実際に第二四半期の営業利益率は7.24%と、2024年第1四半期に記録した4.64%と比較しても大幅に改善し、史上最高水準に到達しています。
この史上最高水準の営業利益率について、EV製造のさらなるコストダウンに成功しているのではないかと推測できます。
とくに、バッテリーの主要原材料であるリチウムの原材料コストが、2022年に突入して以降、高騰を見せていたことは記憶に新しいものの、直近の価格動向をみると、すでに2021年初頭の水準にまで急落済みです。結局のところ、リチウムの原材料コストの急騰というのは一過性の動きであり、ロシアウクライナ戦争などの政情の不安定さが落ち着きを取り戻すと、EVシフトが加速するなかにおいても、数年前のコストと同様の水準に落ち着いてしまっているわけです。
よって、とくにバッテリーを製造するだけでなく、リチウムの鉱山を所有するなどという垂直統合を進めるBYDは、そのリチウム価格急落の恩恵を受けているものとも推測可能なわけです。
研究開発費はテスラを上まわっている
では、テスラの決算内容と比較していきましょう。まず初めに、売上と販売台数を比較すると、販売台数ではBYDはテスラの倍以上の販売規模に到達しているものの、売り上げベースでは、テスラのほうが台あたりの単価が高いために拮抗している様子が見て取れます。
次に注目するべきは粗利益率の変遷という観点です。黄色で示されたテスラは、2022年Q1を境に断続的に低下。他方で、ピンクで示されたBYDの粗利益率は断続的に上昇を続け、ついに、2023年Q2に初めてテスラの粗利益率を上まわることに成功。しかもその後は、その差をさらに広げて、直近の2024年Q2も、テスラが18.0%なのに対してBYDは18.7%と、いまだにBYDのほうが収益性が高い状況です。
また、営業利益という観点でも、直近の2024年Q2のBYDは7.24%と、テスラの6.3%を上まわるレベルです。とくに黄色で示されているテスラは、前年同四半期に実現した9.6%と比較しても大きく減少しています。
そして、もっとも注目するべきであると感じるのが、研究開発費、および売り上げに占める研究開発比率です。黄色で示されたテスラは4.2%であるものの、ピンクで示されたBYDは5.1%を実現しています。確かにQ1に記録した8.49%と比較すると、Q2は流石に落ち着いているものの、BYDの研究開発費は2022年Q3から一貫してテスラを上まわっている状況です。
つまり、現時点ではBYDのほうが多くの車両を販売しながら、粗利益率でも稼ぐ力をつけ、研究開発費でも多くの資金を投入。それでいて営業利益率でもテスラを上まわるレベルということになります。
いずれにしてもBYDは、とくにEV開発における超垂直統合のアプローチを採用することで、EVのコスト競争力をどれほど高めることができるのか。もちろんコスト低減だけではなく、最新PHEVテクノロジーのDM5.0などのEVや自動運転の最新技術にも注目するべきでしょう。
このようにして、世界最大のEVメーカーであるBYDの2024年Q2の決算内容は、競合のテスラが販売台数を落とすなか、さらに販売増加させることに成功。また、値下げ戦争下において売り上げも伸ばしつつ、その上でテスラをも上まわる収益性を確保。しかも将来への種まきである研究開発費もテスラ以上の額を計上しています。
他方で、BYDに対する懸念点が、バッテリーEVの販売の伸びの鈍化、およびプレミアムセグメントにおけるブランド力の醸成という点でしょう。これは、第5世代のPHEVシステムを搭載するPHEVの販売台数が急増していることで、バッテリーEVの伸びが鈍化しています。よって短期的には、海外でバッテリーEVの需要をどこまで喚起できるのかに注目です。
そして、プレミアムセグメントは、ファーウェイ、NIO、Li Auto、シャオミなどといったブランド力の強いEVブランドが支配しているため、BYDがDenza、FangchengBao、Yangwangという高級ブランドによって、どこまでプレゼンスを発揮することができるのかに注目です。とくにDenzaが9月から発売中のZ9 GTの販売台数には注目でしょう。
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