ヤマハ発動機はトヨタの関連会社ではない
ヤマハ発動機といえば、日本を代表するオートバイメーカーのひとつ。オートバイ以外にもボートやマリンジェット、船外機といったマリン事業も盛んであるし、PASに代表される電動アシスト自転車も馴染み深いところだろう。そのほか無人の農業用ヘリコプターやゴルフカートなど幅広い事業を展開している。そのなかで、自動車ファンに知られているのはオートモーティブ事業だ。とくにトヨタとの深い関係は、その原点ともいえるトヨタ2000GTの誕生秘話を絡めて語られることが多い。
ただし、ヤマハ発動機はトヨタグループというわけではない。もともと楽器のヤマハから独立したカタチとなるヤマハ発動機であるから、現在の筆頭株主も信託口を除くとヤマハとなっている。その所有数は3464万株だ。一方、トヨタは1250万株で3番手。大株主ではあるが、けっして関連会社というわけではない。
さて、トヨタ2000GTを共同開発したのは1967年のことだが、そこからトヨタとの深いつながりは始まっている。1969年に開設されたヤマハの袋井テストコースのこけら落としでは、トヨタの純レーシングマシン「トヨタ7」がデモランを行ったということもあるし、トヨタ・コロナをベースとした「トヨタ1600GT」に搭載された9R型DOHCエンジンの開発にもヤマハ発動機は関わっているなど、その関係を示すエピソードには事欠かない。
最近では、レクサスLFAに搭載されたV10エンジン「1LR-GUE」の開発を担ったというエピソードも忘れ難い。レクサスの最高峰スポーツカーのエンジンをトヨタが自社開発せず、あえてヤマハ発動機に依頼するというのは、2000GTのヘリテージを感じさせる部分でもあるし、またヤマハ発動機へのリスペクトも感じるところだ。実際、2000GTからLFAまでの間でいっても、「2T-G」、「18R-G」、「1G-G」、「3T-G」、「3S-GTE」、「1JZ-GT」、「2ZZ-GE」、「4GR-FSE」など多くのエンジンについて、開発や生産をヤマハ発動機は担ってきているのだ。
じつはトヨタ以外にもエンジンを供給した実績がある
こうした関係について、ヤマハ発動機がトヨタより技術的に優れているからだ、という見方もあるが、単純にそうともいえない。ヤマハ発動機からすれば事業として展開している限りにおいては安定した受注というのは重要であり、ヤマハを含めた資本関係をトヨタと結ぶことで、事業の継続性を守っているという面もある。トヨタとしても数量が見込めない特別なスポーツエンジンはアウトソーシングすることで、社内人員リソースの有効活用につながる。長く続いてきたWin-Winの関係は、それがお互いに前提条件になっている部分もあるといえる。いまさら離れるわけにはいかないのだ。
また、ヤマハ発動機は前述したマリン事業において、船外機やマリンジェットに四輪用エンジンを利用している。オートモーティブ事業がなくなってしまうと、ほかの事業にも影響を及ぼしてしまう、エンジンの開発・生産事業の継続性は重要だ。
資本関係があるとはいえ、ヤマハ発動機は完全にトヨタの傘下というわけではない。同社のオートモーティブ事業では、過去にフォードやボルボへV8エンジンを供給していたという実績もある。フォードのSHO V6エンジンもヤマハ発動機の手によるものだ。また、チューニングパーツとしても知られる「パフォーマンスダンパー」もヤマハ発動機オートモーティブ事業の製品として知名度を高めている。
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