北米向けSXとしては四代目となるS13
今はなきスペシャリティカー、日産シルビア。復活を待望する声やその具体的な噂が現在も絶えることのない人気車種だ。初代モデルは1965年登場だが、3年ほどで車種消滅ののちに、1975年で二代目モデルが登場。その後に歴代モデルが連なることになるので、実質的な原点は、この二代目・S10型系であると言えるだろう。シルビアはこの二代目から、北米市場にも投入されていた。
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【画像52枚】アメリ感極まる240SXと、その制作工程を見る!
と言うよりは、このS10型自体が北米市場をメインに、あるいは重視して開発されたものであろう。それほどまでにアメリカ志向の強いスタイリングであったが、このアクの強さは三代目・S110以降は脱臭された感がある。それはさておき、その車名はダットサン200SXというもので、1981年にダットサン・ブランドの使用を停止した後はニッサン200SXを名乗った。北米市場では、200SXの車名は四代目シルビア(S12型系)までで、次のS13型系からは240SXとなっている。
この車名の変更は排気量の変化に応じたもので、国内仕様のシルビアが1.8Lあるいは2Lのエンジンを搭載していたのに対し、240SXは2.4Lであった。だがそれ以上に違いとして大きいのはスタイリングである。国内では固定ライトのノッチバッククーペをシルビア、リトラクタブルライトのファストバッククーペを180SXと称したが、北米向けの240SXでは、ノッチバックのボディに、リトラライトのノーズを組み合わせていたのである。ちょうど日本で言うところの”ワンビア”と同じ形だ。
また、240SXにはファストバックもあり、これは日本での180SXと同じスタイルである。さらに1992年にはコンバーチブルも追加された。コンバーチブルは日本のシルビアでもデビュー同年(1988年)に発売されているが、240SXコンバーチブルはもちろんリトラクタブルのフロントノーズを持つので、かなり印象の異なるクルマとなっている。240SXは1994年にS14型へモデルチェンジされたが、北米向けとしてはこれが最後のモデルとなったようだ。
典型的セクレタリーカーをイメージしてフィニッシュ!
S13はミニカーやプラモデルの題材として人気があり、シルビアとしてはタミヤ、フジミ、アオシマの3社から、180SXとしてはタミヤ、フジミの2社から、1/24スケールでプラモ化されている。しかし、アメリカ向けの240SXとしてのキット化は、もちろん存在しない。180SXにシルビアのフロント周りを移植した改造車”シルエイティ”についてはフジミが製品化しているのだが、その逆であるワンビアとしてもキットはないのである。そこで、フジミのシルビアをベースにノーズをタミヤ製180SXと入れ替えて制作したのが、ここでお見せしている240SXだ。以下、作者・松原氏の解説をお読み頂こう。
「左ハンドルの日本車――。幼い頃から、テレビで観る海外映画などに出て来る、左ハンドルの日本車には、特別な興味を抱いていた。昨今、海外、特にアメリカにおいて、日本車をベースとしたカスタム『stance』ブームがあり、左ハンドルの日本車はインターネットやSNSを通じて世界中に発信されており、その存在を知るとともに、より惹かれて行く自分が居た。メーカー純正でリトラクタブルライトを装備した240SXには昔から格別の興味があった。今回は『ニューヨークで働くキャリアウーマンのアシグルマ(笑)』というコンセプトで作例を制作してみることにした。
制作には、長年現行品としてラインナップされているフジミ製S13シルビアをベースに、数年前に再販され、まだ入手が比較的容易なタミヤ製180SXの『顔』を使用した。タミヤのシルビアを使い、タミヤ同士で入れ替えをした方が楽だったかもしれない。しかし私は『フジミのシルビア』の可能性に賭けてみたかった。他メーカーと比べ、僅かにルーフが低くディフォルメされているが、むしろ模型的な『視覚効果』でカッコ良く見えるほど。細部のディテールについては甘い部分もあるが、それはモデラーの腕、好みに合わせて『イジる要素』『化ける要素』が残されるフジミの良さではないかと思う。
作業としては、ボンネット末端からサイドのプレスラインに掛けて斜めにカットをし、それぞれの「顔」を入れ替えることで顔面の移植を行った。メーカーの違いもあり、多少の調整は必要だが、幅、高さなどを含め大方ピッタリと移植ができてしまうことには驚く。合体には瞬間接着剤と硬化促進剤を使い、しっかりと接着を行った。ボディカラーはいかにも『アメリ感』漂うシャンパンゴールドをチョイス。シルバー、ゴールドにホワイト、少量のブラウン、ブラックを混ぜて、少し茶色味掛かったゴールドを狙ってみた。
シャシー周りはほぼキットのまま。車高、トレッド等のバランスを僅かに調整した程度だ。内装も基本的にはフジミのシルビアをそのまま使用。240SX化にあたってやっておきたかった『AT化』も合わせて実現した。アオシマ製ハイラックスのシフトゲート周辺を刻み、フジミのEKシビックに付属するLHD用のシフトノブを使用。シフトゲートはフジミのFCサバンナに付属するデカールを貼った。また、内張りにはアオシマのシルビアの物を刻み、ドアノブ、スピーカーを追加した。
こうして完成してみると、地味でサッパリとした仕様になったが、自分の抱いていた『アメリ感』を出すことができたのではないかと思う。1990年代の海外映画などによく登場したシチュエーション――ニューヨークのビル群の路肩に停められ、街の雰囲気に溶け込んだ様子――を想像しながらご覧頂けたら幸いだ」
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