2020年11月24日に、日産の『新型ノート』が初公開された。そこで明かされたのは、ガソリンエンジン仕様を設定していた従来型とは異なり、e-POWER専売モデルに生まれ変わったことだ。
日産は先に導入した「キックス」も国内向けにはガソリンモデルは入れず、e-POWER専売車とすることを発表している。
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国内でも経済産業省が「2030年代半ばに、 電動化を100%にする」とする方向で検討していると報道されるなど電動化の機運は高まっているが、今後登場する国内向けの新型車はe-POWER専売化が進む可能性が考えられるのか?
なぜ日産はe-POWER専売車を増やす決断をしたのか? そして日産の日本向けの新車戦略は今後どうなっていくのか考察していきたい。
文/御堀直嗣
写真/編集部、NISSAN
【画像ギャラリー】8年ぶりにフルモデルチェンジしe-POWER専売車へと生まれ変わった「新型ノート」のすべて!!
■キックスに続きe-POWER専用車に生まれ変わった新型ノート
日産『ノート』が8年ぶりにフルモデルチェンジし、3代目となった。そして、すべてのグレードで、日産独創のシリーズ式ハイブリッドである「e-POWER」車となる。
すべてがe-POWERという車種構成は、先に発売されたSUV(スポーツ多目的車)『キックス』も同じだ。それまでのジュークに替えてキックスでの小型SUVとなったのも、背景にe-POWERでの市場導入を日産が考えたからである。
2012年に発売された現行型ノートがついに2020年12月に新型へフルモデルチェンジ。キックスまでに搭載されている第1世代より騒音が小さくなった、第2世代e-POWERを搭載
ジュークの後継モデルとして投入された「キックス」。新型ノートに先んじて、2020年6月にe-POWER専売車として登場した
ジュークは欧州で2代目へフルモデルチェンジしているが、それはエンジン車だ。実は、キックスも海外ではエンジン車で販売されてきたが、日本市場への導入をきっかけにe-POWER車が開発されたのである。ここにきて、日産の小型車はe-POWERでという傾向が見えてきた。
その理由は、国内でのe-POWER人気が高まっているからだ。
e-POWERは、日産の電気自動車(EV)『リーフ』の電気駆動系統を応用したハイブリッドシステムである。ガソリンエンジンは搭載するが、それは発電のみに使われ、走行はモーターのみで行う。これに対し、トヨタのハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンとモーターの両方を走行に利用する。
エンジンは発電用で、走行はモーターで行う「e-POWER」。従来型ノートでは、2018年7月にモーターアシスト方式を採用した4WDも設定し、降雪地域のユーザーにも対応した
■燃費の向上以外にも寄与する電動化技術
リーフを持つ日産が、トヨタと異なるハイブリッドシステムを採用することは理にかなっている。そして、モーターのみで走行するシリーズ式ハイブリッドとすることにより、燃費の向上だけでなく、ほかの機能も充実させることができるのである。
象徴的なのが、アクセルペダルだけで発進~加速~減速~停止ができる、「ワンペダル操作」だ。モーターは、減速の際に回生といって磁力の抵抗を利用した減速力を得ることができる。エンジンブレーキのような機能だが、発電制御を行うことでゆっくりとした減速も、急減速も、状況に応じて思いのままになる。
日常的には、アクセルペダルをゆっくり戻せば、交差点の停止線などにピタリとクルマを止めることができる。慣れは必要だが、数回試せばかなりの精度で停止線に止められる。もし、減速が足りなければブレーキペダルを踏めばいいし、手前で止まってしまいそうになったら、そのままアクセルペダルを少し踏めば停止線まで前進できる。そしてペダルを戻せば止まるのだ。
日産によれば、ワンペダルでの運転に慣れると、アクセルとブレーキのペダル踏み替えを7割ほど減らせられるという。慣れれば、9割近く減らせられるという人もいる。実際、ホンダ『ホンダe』の開発者も、ほとんどブレーキを踏まずに運転するようになったと話す。
これは、近年注目を集める高齢者によるペダル踏み間違いの予防に役立つ。
そのほか、アクセルペダルを急に戻すと、強い回生が働き、急減速する。万一の衝突の危険が迫った時、パッとアクセルペダルを戻せば、ブレーキペダルへ踏み替える前に減速がはじまる。たとえば時速20kmというような徐行中でも、ペダル踏み替えの空走時間1秒前後で5m以上前へ進んでしまう。
エンジン車のようにそのまま前へ走ってしまうか、回生で減速をはじめるかで衝突回避ができるかどうかに差が出るだろう。人間の心理としても、グッと減速が働けば、そこで気持ちが少し落ち着いて、的確にブレーキペダルへの踏み替えができるのではないか。
モーター特有の回生の働きは、安全運転や事故回避にも一役買うのである。
モーター走行には、さらにエンジンと違う利点がある。それは運転支援での出力調整だ。モーターは、エンジンに比べ1/100の速さで回転を制御することができる。したがって、ACC(前車追従機能付きクルーズコントロール)の速度調整を素早く、適切に行えるので、加速も減速もより自然に調整される。自動での車線変更の際の加減速も、素早く行える。
高速道路など自動車専用道路でハンズオフの運転を実現した日産『スカイライン』の「プロパイロット2.0」が、ハイブリッド車にしか搭載できないのも、ハイブリッドならモーター制御でち密な走行を管理できるからだ。
2019年7月にビッグマイナーチェンジを果たした「V37型スカイライン」。このマイナーチェンジで、ハイブリッドモデルに先進運転支援機能「プロパイロット2.0」を搭載した
「プロパイロット2.0」は、高速道路など自動車専用道路でハンズオフの運転を実現した
先代のノートe-POWERの4WD車で、北海道の雪道を走ったことがある。滑りやすい路面状況で、ほとんど緊張することなく運転できた。これもモーターをち密に制御することで、タイヤの滑りを抑えた駆動力調整ができるからだ。新雪の積もった場所からの脱出も容易であった。
こうした数々の利点のあるe-POWERは、前型ノートはもちろん、ミニバンのセレナも販売成績を大幅に向上させることに貢献した。たとえばノートの場合、前型では6割の顧客がe-POWER車を選び、その9割超が満足しているとの調査があると、アシュワ・グプタ最高執行責任者は新型ノート発表会で語った。そして、また乗りたくなるとか、ずっと乗っていたくなるとの声があるという。
e-POWERの商品性が確立したことにより、キックスからe-POWERは第2世代へ進化した。大きな点は、発電のためのエンジン始動を極力抑え、またエンジンが始動してもあまり気にならないように加速や高速走行時に発電するような改良が施されたのである。これにより、日常的な市街地での運転で巡行している時は、エンジン再始動に気付きにくい。あたかも、充電のいらないEVに乗っているかのようだ。
■今後の電動化戦略の舵をどう取る!? 日産の動向を読む
さて、新型ノートは、日本以外にタイとインドでも販売される。また、e-POWERの機能は、中国や欧州の市場へも展開される予定であるという。
中国は、EVも含め電動化は必須であり、欧州では二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化され、現実的にエンジン車のままでは、小型車といえども基準の達成は難しい。EVの普及を薦めながら、ハイブリッドなど電動化された新車を次々に投入しなければ、クレジットと呼ばれる反則金を支払わなければならないのである。
ホンダも、『新型フィット』について欧州では「e:HEV」と呼ぶハイブリッド車しか販売しない。国内にはガソリンの選択肢があるが、それではCO2規制に対処できないからだ。
ここにきて、英国では2030年から、米国カリフォルニア州では2035年からエンジン車の販売が禁止されることになった。フランスも2040年にはエンジン車の販売を禁止する予定だ。
日産は、リーフでEV販売の先陣を三菱自とともに切り、リーフは2代目へ進化し、そしてリーフで培われた電気駆動技術からe-POWERを生み出し、消費者に歓迎された。
2017年に現行の2代目にフルモデルチェンジ。使い勝手に優れる5ドアハッチバックスタイルは踏襲しているが、デザインが格段に洗練された。このクルマで培われた技術が、日産の電動化をけん引している
星野朝子副社長は「日産自動車はゼロエミッションを牽引するというビジョンがある。電動化に集中し、その象徴となるのがe-POWERであり、e-POWERのみでの新型ノートの販売を成功させ、低炭素社会にこれからも貢献していく」と、意気込みを語った。
単にエコというだけでなく、安全にも自動運転の未来へも適したモーター駆動の先駆者として、日産は大きく舵を切ったといえるだろう。
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みんなのコメント
販売台数ランキングに日産車1車種しか入ってなかったですが。
つまりアクセル全開になる事しか考えられない。どんな予防になるのか教えてください。