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クラウンも変わる激動の時代!16代目クラウンの登場に想いを馳せる

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クラウンも変わる激動の時代!16代目クラウンの登場に想いを馳せる

運営元:旧車王
著者 :中込 健太郎

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去る2022年7月15日、トヨタ自動車が新型クラウンを発表しました。

1955年に登場したこのクルマ、16代目となる新型クラウンは、あまりにもそれまでとは様子が違うクルマになっていました。

正直、初めて見た瞬間、とても大きな衝撃を受けたほどです。

今回はそんな新しいクラウンの誕生を受けて、私が抱いた第一印象から、そもそも「クラウンとは?」について、少し考えてみたいと思います。

■新しいクラウンを目にしたとき、もうクルマ好きを辞めようかと思った第一印象で私がどう思ったか。

それはそれはもうショックでした。

この国で生きてきて、何か「絶対に変わらないもの」がクラウンである。

そんなふうに思ってきたのかもしれません。

それも私の勝手な解釈ではあったのですが、そんな身勝手な決めつけは「クラウンに裏切られた」とさえ感じさせたものでした。

そして思ったのが「あんなクラウン、もうクラウンではない。もういっそクルマ好きなんて辞めてしまおうか」そう思ったほどです。

こんなにシャープに、そして明確にそんなことを思ったクラウンは初めてでした。

お役人が運転手付きで乗る。

パトカーに採用される。

日本の社会では、ある種の信用を示す証のようにも受け止められることがあるクルマ。

クラウンに乗っている人は信用しても良い。

この国特有のクルマがクラウンでした。

けれども私が今までこのクルマに抱いてきたそんなイメージを、綺麗にそして大胆に崩しさるだけのものを、新型クラウンは持っていました。

ご実家がタクシー会社だった自動車評論家の故・徳大寺有恒さんもこんなことをおっしゃっていたように記憶しています。

「幼少期から新しいクラウンが登場するとそれがやがてタクシーのフリートとしてとても身近な存在。自動車評論家をしているのは、新しいクラウンをキャッチアップするため」と。

徳大寺さん、ご自身の愛車にはいつも輸入車を乗り継いでこられ、ともすると「クラウンの対局」のようなクルマがお好きという印象があります。

好みは好みとして、ご自身の歩幅と、日本の自動車とどういう位置で歩き続けるかをしっかりと意識されていた言葉という風に感じられてとても印象的な記述でした。

いつも服装初め身につけるものも洒落ていて、ファッションも大切にする。

そういう人がこう口にしたことも、私に「クラウンは信頼のブランド」と認識させてきた大きな理由となってきました。

そんなクラウンの変わりようには正直相当ショックを受けた。

これが正直私の16代目クラウンに対する率直な第一印象でした。

「膝から崩れ落ちるような」ト書きにそう書かれていても多分ピンと来ないでしょう。

しかし、あのときそれがどういうものかわかった気がしました。

私はいっそ、クルマ好きを金輪際やめよう、そう思ったほどの衝撃を受けたのでした。

■「変貌」はしたが、「変容」はしたか?ブロンズのボディカラーに撃ちのめされたただしかし、そんな衝撃は半日と経たずに、撤回を強いられることになるのです。

四つのボディタイプ。その中でも「クロスオーバー」と呼ばれる4ドアクーペでやや車高を上げたようなボディ。

この手の「変わり種」はもともと嫌いではありません。

ネット上を飛び交う写真をいろいろみていたら、これのブロンズのボディカラーが目につき「もしかしてとても良いかも」と思えてきたのです。

これは1980年代頃のザガートのデザインを受け入れていく過程にとても似た現象だと思いました。

第一印象、怒りを帯び、半ば嫌悪感さえ感じるようなあの感覚。

しかしながらそれらを眺めていて「あれ?もしかして秀逸かも」と、ちょっと好感を持ちはじめ、ちょっと気に入ってしまったら最後。

その魅力に取り憑かれ、自分が最初に下したイメージさえ、綺麗さっぱり切り捨てて忘れ去り、その魅力の虜になってしまうものです。

この時点で、クルマ好きを辞めるのを止めることにしたのはもちろんのこと、むしろすっかり「新しいおじさんグルマ」で欲しい車種リストの方に名を連ねる始末。

この優柔不断な感じは我ながらいかがなものかと思いますが、いやいや、柔軟性と呼んでほしいという自分もいたりして。

少なくとも今までに感じたことのない「新型クラウン」の誕生を迎えたのでした。

見た目の新奇さはしかし、4代目クジラクラウンの現代的解釈?と取れなくもないものですが、それ以上に「クラウンの有り様」の面で変革を打ち出したように感じるのです。

「変貌にも勝る変容」それが16代目の本分なのでは?そんな気がしているのです。

■消える伝統と生き延びる革新ボディタイプは4種類、最上位に6気筒エンジン搭載グレードを据えて、FRレイアウトを、というのはいつの時代の話だ、ということなのではないでしょうか。

私の幼少期からこの世に存在するクラウンも、景気が右肩上がりで成長していた頃は4年に一度実施されていてモデルチェンジで現れる新型クラウンも、いつでもそんな構成でした。

よって、もはやそれが常識、自然現象、抗うことのできないこの世の重力のように受け止めてしまっている自分を、改めてこの16代目のクラウンは自覚させるのでした。

しかし、そうでなくてはならない理由などどこにもないのです。

「伝統のクラウン」はこちらの勝手な決めつけであり、初代はトヨダ謹製「純国産乗用車」むしろ大いにチャレンジの旗手であったし、常に新時代の門を開けてきたのがクラウンだったのです。

確かに長いこと変わらなかった部分もあって、初代から、基本となっていたドライビングポジションなどはペダル・ステアリング・着座位置などで初代から相当最近のモデルまで守っていたのかもしれません。

ただ、日本人も食生活も生活様式も変わりました。

平均身長も手足の長さも、ちょっとした外国人のようになった部分があります。

あの佇まい以外にも、いわゆるぼんやりと、なんとなくムードで世の中の要請に応え続けてきたクラウン。

それで良いのか果たして?という部分もあったのではないでしょうか。

白い、コンサバティブなフォルムと佇まいのクラウン。

それを踏襲し続けて「市場よ!果たしてそれで本当に君たちは買うのか?このクラウンを!」とかなり声高に問いかけ、そうはいかないだろう!ならば、そういう声に翻弄されない!という一つの決心のようなものをこのクルマから感じるのです。

語られる「伝統」は往々にしてすでに「過去のこと」であります。

しかし、実は立ち位置を踏まえて、いろいろと試行錯誤を繰り返して、もちろん悩み、迷ったうえででも変革したモノが、後からその足跡を振り返ったときに「伝統」のブランドと呼ぶに足る継続と歴史を積み上げているということなのではないでしょうか。

クラウンとスカイライン。

この国において「伝統」という言葉に緊張感を持って向き合っているクルマだと思います。

それぞれに守るものと捨てるものの間で葛藤し、市場の声に翻弄され続けてきた歴史を持つクルマだと思うのです。

とにかく作り手としての「私はこう行く」というプリンシプルをここまで強く貫いている新型車の登場は、あまり記憶にありません。

■「クラウンである意味」とは?ここまでの変わりようを目の当たりにすると、ここまで変わるなら「クラウンである意味あるの?」という疑問も出てきます。

実際にそんな意見SNSでは見られました。

しかし私が思うにクラウンだから意味があったのではないか、ということです。

おそらく、過去に囚われないクルマ作りはされているかもしれません。

おそらく色んな要素が盛り込まれているでしょう。

その意味では「キャラクター設定」みたいなものもはあったにせよ、その中での自由は案外あったかもしれません(この部分は是非一度実際に乗ってみたい。そして判断したいところです)。

ただ、クラウン自体のあり様に関しては、かなり掘り起こして、読み解き、矛盾も違和感も伴わない再定義のようなことはかなり綿密かつ厳格にやったのではないでしょうか。

「誰が観ても未だかつて観たことのないクラウン」にして「一度乗ればこれが令和のクラウンだと感じることができる」のような匙加減について、そのバランスは、結局未だに一度も実物を見れていないのですが、かなり楽しみなところです。

などなど、考えていくと、クラウンでなくても良いのかもしれないが、やはり「それをクラウンでやる」からこその意味があるのかも、という気がするのです。

■ブレシア森さんにとっても原点はクラウン先日、宇都宮で古くは戦前車から整備修理を手がけるクラシックカー専門ガレージ「スクーデリア・ブレシア」を訪れた際、リフトの上で一台の古いクラウンが整備中でした。

これはなんでも、代表の森さんのお父様が購入されたクラウンとのこと。

「購入してすぐに亡くなってしまったので父の片身でもあるんです。子供の頃空き地でこれを動かしたりしていたもんだから、クルマの道に進むことになったようなもんですね。この音!聞いてみて!塗装は一度やりましたが、そのほかは基本的にフルオリジナル。これがクラウンのクオリティですね」

と話しながら、ドアを開け閉めしてくれました。

厚手な鉄板で作られて、チリも綺麗に整い、半世紀以上経ってもブレのない重厚に整った開閉音。

モノづくりの威光のようなものを感じさせます。

おそらく、日本車の第二章が今からはじまるのではないか。

そのくらいのエポックメイキングさが16代目のクラウンには感じます。

ブレシアの森さんも、新しいクラウン「面白そうだね」と興味あるご様子。

もちろん普段昔のクルマを扱っているからという面もあるでしょう。

反動と言いますか。

しかし、決して「一蹴」しない見立て、筆者のような若輩の身がこういう新登場に心揺さぶられないことはなんだか恥ずかしいことのようにさえ感じたものでした。

同時に、私が受けた衝撃からの心惹かれていく過程。

なかなか今までにないセンセーショナルな一台が登場した、とまでは間違いないように感じるのです。

今まではどこかの国のどこかのクルマ目指してで来た日本車。

今ここにようやくそういうものとは決別した「我が道」で行くクルマづくり、そのスタートラインに立てたのかもしれない。

そんな気持ちにさせる一台、それが新しいクラウンなのではないか。そんなふうに感じたのです。

みなさんは新しいクラウン、どう思われました?

路上でこのクルマを見る日がいまから待ち遠しい。

そしてできればアルプスを超えてヒスイ海岸くらいまでドライブに行きたい。

そんな気持ちでいっぱいなのですが。

[画像/トヨタ ライター・撮影/中込健太郎]

 

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