2022年8月、スバル「フォレスター」に最上級グレードとして「STI Sport」が追加設定された。フォレスター「STI Sport」は、フォレスター用に専用チューニングしたサスペンションによって、SUVでありながらスポーツセダンのような操縦安定性と上質な乗り心地を両立させているという。STIロゴの追加を含む内外装の専用加飾も加わり、STI好きにはたまらないモデルに仕上がっている。
フォレスターSTI Sportの詳細をご紹介しつつ、スポーツSUVとして登場したフォレスターSTI Sportはユーザーに受け入れられるのか!??? 考察しよう。
フォレスターに最強ブランドSTI Sport登場!! 激戦市場に挑む実力とお願いしたいこと
文:吉川賢一
写真:SUBARU
国内に適したサイズ感の「骨太SUV」
フォレスターとして5代目となる現行フォレスターが登場したのは、2018年6月のこと。ホンダCR-V(2018年8月~)やRAV4(2019年4月~)など、同時期に登場したミドルサイズSUVが、(ミドルサイズとはいえ)大型化をするなか、フォレスターは全長4640×全幅1815×全高1715mmと、他社モデルに比べると比較的コンパクトな姿で登場。特に全幅1815mmは日本国内で使うには良心的で、剛性と強度の高いSGPの採用や、安心感の高いシンメトリカルAWD、そして悪路にめっぽう強いX-MODEなど、最先端のスバル独自のメカニズムがぎっしりと詰まった、男前な骨太SUVだ。
現行フォレスターのここまでの販売台数は、2018年が28,751台、2019年は32,384台、2020年は24,056台、2021年は22,903台、そして2022年の1~8月で16,743台と、コンスタントに毎年2万台以上を売り続けている状況。スバルは、「STI Sport」を含むフォレスター全5グレード合計の月販目標を1,900台、年間22,800台としているが、強烈なライバルが登場するなどがなければ、実現可能だろう。
最大の「ウリ」はフロントの周波数感応ダンパー
今回のフォレスターSTI Sport最大の「ウリ」は、フロントサスに搭載した日立Astemo製のSFRD(Sensitive Frequency Response Damper)、日本語でいえば、周波数感応ダンパーだ。シリンダー内部に小ストローク(高周波振動)用と大ストローク(低周波振動)用の2つの油圧経路を持っており、入力の大きさで減衰力が切り替わる構造。コーナリング時にはロール抑制とタイヤの接地性を向上させ、通常走行時は微振動を軽減し、快適な乗り心地を実現する。リアダンパーは通常のショックアブソーバーだが、フロントに合わせて再チューニングされている。
また、エクステリアにはブラック塗装のトリムパーツを追加し、アルミホイールには「スーパーブラックハイラスター塗装」が施されている。インテリアにもブラックパーツを装着したことで、スポーティテイストが演出されている。車体の前後には、STIオーナメントを装着し、ボルドー&ブラックの専用ナッパレザーシートも特別感があり、所有欲を満たしてくれるだろう。パワートレインはSPORTグレードと同じく、1.8L水平対向直噴ターボDIT(最高出力130kW(177ps)、最大トルク300Nm)で、WLTCモード燃費は13.6km/L(市街地10.3、郊外14.3、高速道路15.2)だ。
フォレスターSTI Sportの車両価格は税込363万円、これまでのSPORTが税込335万円なので、27万円のアップとなる。ダンパー変更と再チューニング、専用トリムパーツの付加、専用本革シート装着、と考えれば、妥当な価格設定だろう。とはいえ、「STI」を名乗るグレードがこれでいいのか、と思うスバルファンは多いのではないだろうか。
フロントサスに搭載した日立Astemo製のSFRDや、専用のブラックカラーのエクステリアパーツなどが奢られたフォレスターの「STI Sport」だが、ぱっと見では違いが分かりにくい
心躍るようなフォレスターが欲しかった!!
先代4代目フォレスターには、280馬力を発揮する2.0L水平対向ターボエンジン(FA20DIT型)を積んだ、最強のSTIグレードがあった。ガソリンを大量消費して、怒涛の加速を誇ったフォレスターSTIの速さは、当時イケイケだったスバルを象徴するようなモデルだったが、現在はそんなハイパフォーマンスなターボエンジンを用意するような世の中ではない。
パフォーマンスと環境性能の両立は、自動車メーカーとして生き残るために必要なこと。他の国内自動車メーカーが、ストロングハイブリッドやPHEV、バッテリーEVを続けざまに出す中で、スバルは、ハイブリッドなどクルマの電動化に関しては、明らかに出遅れている。トヨタとバッテリーEVのソルテラ/bZ4Xを共同開発したことは当初話題とはなったが、これまでのスバル車の持つイメージとのギャップは大きく、スバルファンの多くは、ソルテラを受け入れられずにいることだろう。
北米市場では、フォレスターに「Wilderness」という日本未導入のグレードが存在している。オフロードテイストにあふれたエクステリアで、最低地上高を233mmまでアップさせ、ヨコハマのオールテレインタイヤ「ジオランダー(ホワイトレター付)」を装着したフォレスターWildernessは、まさに野性味あふれるSUVといった印象。北米のスバルサイトに掲載されている泥まみれのフォレスターWildernessの写真からは、かつてスバルが活躍したラリーシーンも想起させる。
オールテレインタイヤは、無骨な外見になるほど、高速直進性が弱い傾向にあるが、スバルならば、シンメトリーAWDやX-MODEなどのセッティングでクリアできるはずだ。この北米のフォレスターWildernessくらい外観を派手にして、たとえば「STI Wilderness」と名乗るくらいの「特別感」があってもよかったのでは、というのが、筆者の率直な感想だ。もちろん車両価格は上がるだろうが、スバルは、ユーザーが内容に満足すれば買ってもらえるブランドだ。
◆ ◆ ◆
スーパーGTでのBRZの活躍や、ニュル24時間耐久レースへのWRX のチャレンジなど、スバルがスポーツシーンで活躍していることは広く知られているところではあるが、トヨタがGRシリーズでさまざまなチューニングのレベルのモデルを用意しているように、「STI=(オンロード)スポーツ専門」という考えから脱し、前出した「STI Wilderness」のように、オールラウンダーで勝負ができるブランドとして選択肢を用意していった方が、未来のスバルにとってはよいことではないか、と筆者は考える。
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みんなのコメント
パワーもない、燃費もよくない、赤魔道士か?と思う中途半端さ。
逆にトヨタのほうが今イケイケになってるじゃないですか。
スバルは何がしたいんだ?
こんな車が本当に作りたいのか?本当に作りたい車は「STI Sports」ではなく、「STI」じゃないのか?!