クルマ好きの聖地「大黒PA」の外にあるふ頭
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
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全国からクルマ好きが集まる場所として、今や海外メディアもこぞって取材に訪れるなど、すっかり有名になった大黒(だいこく)パーキングエリア。オープンは1989年9月で丸30年が経過している。
日本のクルマ文化を発信する、世界的に有名な場所として、海外メディアが取材に訪れることも多い。
大黒PAは大黒ふ頭のほぼ中央に位置しており、首都高速神奈川5号大黒線のループの下にある。訪れたことがある人なら、輸出されるおびただしい数の日本のトラックや様々な種類の中古車をループの上から見たことがあるかもしれない。
大黒ふ頭は1970年代初頭から1990年にかけて整備された横浜港初の本格的な島式ふ頭である。近年とくに、海外へ輸出される日本車や大型建設機械の取り扱いが増加した。
そして、大黒ふ頭の南端にはT-3~8号と名付けられた公共利用のバースが並んでいる。直線距離で約1.2kmにもなる長いバースだ。
先日、T3-8バースのさらに先にある一般利用者向けの「大黒海釣り施設」に向かっていた時のこと。
何とも不思議な光景に出くわした。あまり馴染みのない、たくさんのクルマがフェンスの向こうの広大な駐車場に並んでいたのである。
大黒ふ頭の最奥部に韓国車の大群を発見
見たことのないクルマたちは大黒ふ頭の最奥部にあった。
まず現れたのは大量の小型SUVだ。同じカタチのクルマがたくさん並んでいるから新車なのだろう。最初は日本車だと思ったが、どうも雰囲気が違う。
よく見ると、フロントグリルには大きなルノーのエンブレムがついている。
ルノー製SUVで現在、日本で新車販売されているのはルノー・キャプチャーだけだ。全て右ハンドル車だったが、この顔は明らかにキャプチャーではない。
調べてみたところ、これは2016年春の北京モーターショーで世界発表された2代目「ルノー・コレオス」だった。
初代コレオスはかつて日本でも販売されていたことがあるが、2016年に日本での販売を終了し2代目からは販売されていない。
ちなみに、初代ルノー・コレオスは日産・ルノー・サムスンの3社によってはじめて共同開発されたSUVで、開発のメインは日産自動車、生産はルノーサムスンの釜山工場で行われており、釜山港から全世界に輸出されている。
ルノーサムスン版の車名はQM5(初代)、2代目がQM6となる。
日産で言うと、エクストレイルや北米で大人気となっている日産ローグなどとプラットフォームを共通にしている。
ずらっと並んだルノー・コレオスのフロントガラスに貼られた「行先」はオーストラリア・メルボルンだった。それで右ハンドルなのである。
Tバースのもっと奥に進むと、またさらに不思議な光景が広がっていた。
間もなく消滅 オーストラリア唯一のブランドも
奥のバースにはまた別の右ハンドルSUVが大量に並んでいた。
これはフロントのエンブレムに保護シートが貼られており、一見したところどこのクルマなのかわからない。
ホイールにあるエンブレムでブランドが確認できた。特徴的なライオンのマークだ。ライオンと言えばプジョーがおなじみだが、プジョーではない。
これは、オーストラリア唯一の自動車メーカーである「ホールデン」のエンブレムだ。ごく少数、ピックアップトラックなどが並行輸入で日本に入ってきた記憶があるが……なぜ、ホールデンが大黒にあるのか。
ちなみにホールデンは1913年創業で1931年からGMの傘下にある。オーストラリア唯一の自動車ブランドだが、今年2月にGMからホールデンブランドの終了が発表されたばかりだ。
調べてみたら2017年にオーストラリアでの生産を終了していた。
日産/トヨタ/フォードなどの主要メーカーがオーストラリア国内での生産から撤退した後、唯一頑張っていたホールデンだったが、工場閉鎖後は全車種を輸入に切り替えていたのである。
大黒ふ頭で見かけたSUVは「ホールデン・トラックス」で韓国GMの仁川(インチョン)工場にて生産されていることがわかった。
韓国GMの工場で生産され、オーストラリアに向かう途中のクルマが大黒ふ頭にある…という状況なのである。
なぜ大黒に? 横浜税関に聞いてみた答えは
この他、大黒ふ頭のT3-8バース地区には、日本車(右ハンドル)や韓国車(左ハンドル)の中古車もたくさんあった。
これらは日本と韓国で使用されていた中古車である模様。フロントガラスに貼られた紙を見ると、いずれも行先はウクライナやロシアとなっていた。
日本車は海外に輸出されるのだろうが、他のクルマはなぜ大黒ふ頭にあるのだろうか?
気になったので、横浜税関の大黒ふ頭出張所に聞いてみた。
「これらのクルマは『トランジット』のために、一時的に大黒ふ頭で降ろされている状態です」
「韓国からオーストラリアに向けた自動車専用船による便のタイミングによって、日本(大黒ふ頭や神戸六甲アイランドなど)を経由して、大黒ふ頭で一度車両を降ろし、別の船に積み替えてオーストラリアやロシア方面に向かうことがあります」
「日本の道路を走るわけではないので、簡単な審査のみで船から降ろし、また積み替える作業を行います」
「航路によってはフィリピンやシンガポールでトランジットを行うこともあります」
ということだった。
日本ではまず見ることができない珍しいクルマを見たい人は大黒ふ頭出入口で降りて海釣り施設を目指してみてはいかがだろうか?(大黒PAに入ると、大黒ふ頭では降りられないので要注意)
ここでは日本の中古車も大量に船積みを待っており、異国の地で第二の人生を送る日本車たちにエールを送ることもできる。
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みんなのコメント
輸入車もトランジットがあるのね