BEVのラインナップを一気に充実させているグループPSA。なかでもDS3クロスバック E-テンスは、独特のハイセンスが光る。ガソリンモデルと走り比べれてみれば、さらにその魅力が際立ってきた。(Motor Magazine2021年2月号より)
タイムラグの少ない加速感が心地よい
BEV(バッテリーエレクトリックビークル)を「選ばない理由」って、いったいなんだろう・・・DS3クロスバックE-テンスでみなとみらいの街並みをのんびり走っているとそんな疑問が浮かんだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)
実は今回、同じシチュエーションでBEVモデルと1.2Lピュアテック直3ターボエンジン搭載のDS3とを初めて乗り比べてみたのだけれど、素直に「不思議」に思ってしまったのだ。
あえてICE(内燃機関)を「選ぶ理由」って、なんだろう。そんな逆説的な疑問を覚えるほどに、街中でのE-テンスの走り味は好ましいものだった。
世界中のメーカーがさまざまな形で電動化ラインナップの拡大に力を注ぐ中で、グループPSAはBEVのバリエーションを一気に投入してライバルを驚かせた。プジョーブランドにはe-208とSUV e-2008、DSオートモビルからは今回テストしたDS3クロスバックE-テンスが日本市場にもデビューを果たしている。
最新のプラットフォームに50kWh容量のバッテリー、最高出力136ps、最大トルク260Nmで前輪を駆動する電気モーターなど、基本的メカニズムは共通だ。
好印象の鍵を握るのはやはり、電気モーターが生み出すタイムラグの少ない加速感だろう。アクセルペダルを踏み込めば踏み込んだだけ自然に加速していく気持ち良さは、BEVならではの魅力だ。文字どおりスルスルと速度を増す感覚は、なかなか楽しい。
ガソリンユニットが持つ脈動感は慣れ親しんだもので、それはそれで好ましい。けれど電気モーターと比べると、どうしてもワンテンポ「遅れ」を感じてしまう。
そしてもうひとつ、乗り比べて感じたことがある。それは減速する時の気持ち良さもまたBEVならではの魅力だ、ということ。普通に考えればエネルギー回生を積極的に行う電動化モデルのブレーキングは、違和感をともないそうに思える。だが、E-テンスの減速感は加速感と同様にとても自然で、ありがちな「カックン」ブレーキになることも少なかった。
アクセルペダルで減速まで絶妙に制御できるBモード
想定外に楽しめたのが、Bモードにした時だ。アクセルペダルを離すと通常以上に強いエネルギー回生力が生まれる設定だが、その感覚がとても自然で、自在に減速具合を操ることができる。完全なワンペダルドライブ(停止まで対応)には至らないものの、交通量も信号も多めなみなとみらいエリアで、ブレーキペダルをほとんど踏まずに走ることができた。
もちろんそのためには、前走車との間隔を適度に保ちつつ、信号の変わり目などのタイミングを先読みすることが必要。しかしそれが結果的に、スムーズで安全な運転につながってくれる。こと走りに関しては、ICEに対する引け目はまったくない。
結局、残る課題は「充電環境」に尽きるのだろう。ガレージ付きの一軒家は理想だけれど、たとえば日常的に通っているショッピングセンターなどに気軽に使える急速充電器の設備があれば、マンション住まいだって大丈夫だ。
旅行は交通機関を使うことが多く、マイカー利用は家族の送迎やお買い物などがほとんど。思い切り遠くへ足を延ばすことはほぼない。そんなライフスタイルとE-テンスの相性は、抜群にいい。
同グレードならICEと装備系はほとんど変わらない。価格差は確かにあるけれど、優遇税制やランニングコストを考えれば、そのギャップは非常に小さなものになるという。生活習慣に「たまには充電」という項目を追加すれば、ほとんどの人々がBEVの魅力を気軽に楽しむことができるのだ。
さらにDS3クロスバックE-テンスなら、そこにおしゃれ、とかセンスがいい、とかいうプラスアルファの魅力がもれなくついてくる。おそらくは人生初のBEV体験・・・どうせだったら、フランスならではのハイセンスに彩られた個性派モデルから、始めてみるのはどうだろう。(文:Motor Magazine編集部 神原 久/写真:村西一海)
DS3 クロスバック E-テンス グランシック 主要諸元
●全長×全幅×全高:4120×1790×1550mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1580kg
●モーター最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●モーター最大トルク:260Nm/300-3674rpm
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):534万円
[ アルバム : DS3クロスバックE-テンス はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
クラッチも、変速機も、エンジンの欠点を補うために仕方なく作られたものだ。
電気モーターは発進加速は滑りもストレスもないし、街中の速度なら中間加速もいい。
反面、高速走行中の加速はトルクが出ないから、シフトダウン出来ればな、という願望が頭をよぎるが、モーターの場合はシフトダウンは逆効果か。
資質は素晴らしいが、まだまだ未熟な部分もある。これからの進化が楽しみ。