日産アリアと同じEVプラットフォーム
2022年に英国で発売された、ルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリック。デザイナーのジル・ヴィダル氏が担当したスタイリングは、コンセプトカーのようにオシャレで、セニックやシンビオズ、キャプチャーなど、ブランドのイメージを牽引してきた。
【画像】快活・快適なEVハッチバック ルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリック 競合サイズのモデルは? 全193枚
一方、後方視界はやや狭めで、現代のバッテリーEVとして航続距離は今ひとつ。ライバルが多い、このクラスをリードする存在とはいえなかった。
しかしルノーは、2024年仕様のアップデートで低価格化。高効率なヒートポンプ式エアコンを標準装備とし、ダッシュボードには3インチ大きい12インチのタッチモニターを採用した。その最新版の実力を、確認してみよう。
メガーヌ Eテックがベースとするのは、日産アリアと同じ、CMF-EVプラットフォーム。フロアに大きな駆動用バッテリーが敷かれるのは他メーカーと共通だが、駆動用モーターがフロント側に載る、前輪駆動レイアウトを採用する。
英国仕様の駆動用バッテリーは60kWhで、駆動用モーターの最高出力は218psの1択。欧州市場などでは、40kWhの容量も提供されている。
アリアにはツインモーター仕様もあるが、電動パワートレインの一式を前方へ集約することで、車内空間を広く取れる点が強み。前後を結ぶハーネス類も不要で、軽量・簡素に仕上がっている。
実際、メガーヌ Eテックの車重は1636kg。英国の競合、クプラ・ボーンより100kg以上軽く、荷室も広い。
スタイリッシュな見た目 タッチモニター拡大
全長は4210mm、全幅が1780mm、全高が1500mmで、サイズはフォルクスワーゲンID.3よりひと回り小さい。ホイールやボンネットの存在感が強い一方で、前後のオーバーハングは短め。躍動感のあるスタイリングだと思う。
同クラスのライバルより、好印象ではないだろうか。2024年でも誘目性は高く、購入候補を絞る際にも有利に働くはず。後方視界が狭いことは、変わらないが。
車内を観察すると、今回のアップデートで大きく変化したのが、ダッシュボード上のモニター。インフォテインメント用は12.0インチ、メーター用は12.3インチという、ワイドなパネルが鎮座する。位置が低く、前方視界にはかからない。
インフォテインメント・システムはグーグルをベースとした、ルノー独自のオープンリンク。グーグル・マップや音声アシスタントを利用でき、スポティファイなど追加アプリのダウンロードにも対応する。
アンドロイド・オートなどと異なり、グーグル・マップ上にはバッテリー残量を表示可能。メーターパネル側に、ナビ情報を表示できるのも便利だ。反応が素早く操作性は良い。ステアリング・スポーク上の、実際に押せるボタン類も評価したい。
荷室容量は440Lと大きい。ボディがひと回り大きい、キア・ニロ EVの475Lへ迫る。床下にも、充電ケーブルをしまえる33Lの収納空間がある。だが床面の位置が低く、開口部との段差が大きい。後席を倒しても、フラットにはならない。
ファミリーハッチとして丁度いい動力性能
乗員空間は、後席側で腰付近の前後長が685mm。高さ方向も含めて、このクラスのハッチバックでは平均的な広さがある。少し、閉じ込められた感があるけれど。
前席側も空間は平均レベルながら、センターコンソールの小物入れなど使い勝手は優秀。シートの座り心地は良く、ステアリングコラムの調整域が広い。メーター用モニターのカスタマイズ範囲は限定される。
内装は、シートやダッシュボードがクロスで覆われ、上質なラウンジのよう。ステアリングホイールは合成皮革が巻かれるが、本皮のようにタッチが良い。他方、ドアパネルの上部は硬いまま。アルカンターラも用いられているが、統一感はやや低いかも。
観察はこのくらいにして、発進。メガーヌ Eテックの0-100km/h加速は6.9秒、最高速度は159km/hが主張される。110km/h以上の速度域でも、パワー感は衰えにくいように感じた。
ファミリー・ハッチバックとして、丁度いい動力性能だといえる。充分に軽快で、ドライバーが求めればシャシーの能力を引き出せる。運転免許が危うくなるほど過剰ではなく、通常はトラクション・コントロールのお世話になることもない。
ドライブモードは、エコ、コンフォート、スポーツ、パーソ(パーソナル)の4種類。パドルで回生ブレーキの強さも選べる。ただし、ブレーキペダルを踏まずに済む、ワンペダル・ドライブには対応しない。
アクセルペダルの反応は、若干敏感かもしれない。だが、すぐに慣れるレベルだろう。
快活に操れるステアリング 有能なクルコン
メガーヌ Eテックを、ルノーはスポーティに仕上げたと主張する。同様な特長を掲げる競合は多いが、アップデート後のステアリングは、従来より漸進的に反応。乗り心地はしなやかでありつつ、姿勢制御も落ち着いている。
きついヘアピンカーブなどでは、ボディロールを示すとはいえ、快活に操れる。本物のスポーツ・ハッチバック、とまでは呼べないとしても。
グリップ力は高く、回頭性は鋭い。アクセルペダルを急に緩めると、スタビリティ・コントロールが介入する手前で、フロントノーズを巻き込んでいける感覚がある。全体的には、リラックス傾向の特性といえるが。
110km/hでの巡航時の車内は、基本的に静か。ソフトなシートはサポート性が高く、長時間でも疲れにくそうだ。
試乗車は20インチと大径のホイールを履いていたこともあり、ロードノイズはやや大きめだった。通常の18インチならサイドウォールが厚くなり、より静かで乗り心地も向上するはず。
運転支援システムは、クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、車線維持支援などが標準。中級グレード以上では、車線追従機能にブラインドスポット・モニターなどが盛り込まれる、アダプティブ・クルーズコントロールを得られる。
このアダプティブ・クルコンはかなりスムーズで、車線の中央をしっかり保ってくれる。ステアリングホイールを握っていなくても、手を添えていれば認識してくれ、安楽に高速道路を移動できる。
1度の充電で450km 多くのユーザーが好感を抱ける
アップデート後の航続距離は、カタログ値で450km。今回の試乗では、市街地や高速道路などを約120km走らせて、6.6km/kWhの電費が表示された。この効率なら実際に400kmは走れる計算で、優秀といっていい。
急速充電は、最大130kWに対応。残量10%から80%まで、最短30分で回復できる。
確実に競争力を高めたといえる、メガーヌ Eテック。一新された車載技術や優れた電費、運転のしやすさなど、ライバルと対峙するのに不足ない内容にある。扱いやすいステアリングや快適な乗り心地は、お買い物でも長距離旅行でも、恩恵を感じるはず。
コンセプトカーのようなスタイリッシュな見た目は、従来からの強みでもある。ボディサイズの割に、車内空間は驚くほど広い。多くのユーザーが好感を抱くであろう、電動ハッチバックへ仕上がったようだ。
◯:高度なインフォテインメント・システム 前方視界を遮らないモニターパネル スタイリッシュな見た目 競争力の高い電費
△:優れない後方の視界 きついカーブではボディロールが大きめ そこまで走りはスポーティではない
ルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリック(英国仕様)のスペック
英国価格:3万9545ポンド(約759万円)
全長:4210mm
全幅:1780mm
全高:1500mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.5秒
航続距離:450km
電費:6.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1636kg
パワートレイン:AC同期モーター
駆動用バッテリー:60kWh
急速充電能力:130kW
最高出力:218ps
最大トルク:30.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
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