■過去に登場したユニークな派生車を振り返る
自動車メーカーが新型車を開発するには、莫大な費用と時間がかかるため、ラインナップの拡充は慎重に検討を重ねたうえでおこなわれます。
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一方で、既存の車種をベースに手を加えて、ボディバリエーションを増やす派生車の場合は、費用と時間の大幅な削減が可能です。
そこで、これまでに販売されたユニークな派生車を3車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「SX4セダン」
現在、スズキのラインナップにはクロスオーバーSUVの「SX4 S-CROSS(エスクロス)」がありますが、その前身は「SX4」というグローバルで展開されたコンパクトSUVでした。
このSX4をベースに派生車として2007年に発売されたのが「SX4セダン」です。
ショートワゴンタイプのSUVをベースにセダン化した例は非常に珍しく、SX4の欧州テイストのデザインを活かしながらセダンに仕立てられていました。
SX4セダンは、広い室内空間とクラストップレベルとなる515リッターの大容量トランクルームが特徴的な、優れたユーティリティのベーシックセダンです。
エンジンは1.5リッター直列4気筒で、組み合わされるトランスミッションは4速ATのみ。駆動方式はSX4という名を冠していながらもFFの2WDのみだったため、ベース車とは完全に異なるコンセプトのクルマとして販売されます。
2014年まで販売されましたが次世代のSX4 S-CROSSではセダンが設定されず、一代限りで消滅してしまいました。現在は中古車市場でも滅多に見られない、非常にレアな1台です。
●三菱「ギャランスポーツ」
三菱「ギャラン」は1969年に初代が発売され、同社を代表するスポーティなミドルクラスセダンとして代を重ねていきました。
そして、7代目には「ギャランスポーツ」が設定され、ギャラン史上で特異なモデルとして知られています。
1994年に発売されたギャランスポーツは、欧州仕様の5ドアハッチバックをベースに、フロントに小ぶりなバンパーガードとルーフレールを装着した、当時のRVブームを意識したモデルです。
「GT」と「RV」を融合した「GTRV」という新ジャンルのクルマとして開発され、トップグレードのエンジンは最高出力240馬力(5速MT)を誇る2リッターV型6気筒DOHCツインターボを搭載。
フルタイム4WDシステムを組み合わせ、大型のリアウイングを装着するなど、本格的なスポーツ走行も可能となっていました。
ステーションワゴン並のユーティリティを持つ高性能な4WD車ということで、オールマイティなクルマとして評価されてもおかしくないはずですが販売は低迷し、ギャランスポーツは一代限りで生産を終了してしまいます。
■デザインが変!? ユニークなステーションワゴンとは!?
●日産「マーチBOX」
日産初代「マーチ」は1982年に発売され、新世代のコンパクトカーとして日本のみならず欧州でもヒットしました。
1992年に2代目が登場すると、3ドアハッチバックと5ドアハッチバックに加えカブリオレが設定されるなど、ボディバリエーションを拡充。
そして1999年にはステーションワゴンの派生車「マーチBOX」が登場しました。
マーチBOXのホイールベースはベースと同じで、ステーションワゴンに仕立てるために荷室部分を240mm延長しています。
さらに全高も25mm高くすることで広い居住空間を確保するとともに、ゆとりある荷室空間を実現。
また、マーチBOX専用の装備として、折りたたんだリアシートと荷室の段差を無くすために、ダブルフォールディングシート機構を採用しています。
搭載されたエンジンは1リッターと1.3リッターの直列4気筒をラインナップしました。
マーチBOXは使い勝手に優れたコンパクトなステーションワゴンでしたが、ヒットすることなく3代目マーチの登場とともに生産を終了。いまでは激レアなモデルです。
※ ※ ※
文中で紹介したギャランスポーツは5ドアハッチバック車ですが、1980年代から1990年代頃まで「5ドアハッチバックは売れない」というジンクスが存在していました。
当時、欧州では人気があったボディタイプですが、日本ではヒットすることはほとんどなく、各メーカーとも出しては消えての繰り返しでした。
しかし、徐々に受け入れられるようになり、2代目以降のトヨタ「プリウス」など、現在は5ドアハッチバックでもヒットしています。
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