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「さらば、ジムニー」 レンジローバーとオフロード対決

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「さらば、ジムニー」 レンジローバーとオフロード対決

もくじ

ー スズキ・ジムニー 20年の歩み
ー レンジローバーと戦わせよう
ー どうせジムニーは負けるだろう
ー 真のオフローダーとしての資質
ー ジムニー、ケーターハムっぽい?
ー 中古のジムニーを手に入れるには?

スズキ 新型ジムニー導入で、欧州販売「30万台」を目指す

スズキ・ジムニー 20年の歩み

まず何よりもそのルームランプに惹きつけられる。

ジムニーのルームランプは天井板にぴったりくっついているタイプではなく、透明なプラスティック製のいかつい塊が不格好に突出して取り付けられている。

ルームランプの他にも脆いプラスティック製のダッシュボードや薄く擦れたカーペットなど、すべてが過去の時代のものだ。

この奇妙な小型車のキャビンはグレー1色で、近代的なものが何ひとつない。

実際、キャビンの中はどこもかしこも滑稽なほど古臭い。今でも手動のヒーターコントロールを製造できるサプライヤーがあるとは誰も思わないだろう。

だが、ここにあるのは昔懐かしい内装をした2017年製の新車なのである。

かつてこの小型オフロードカーが新モデルとして投入された頃は、おそらく最新式のクルマとして華々しく登場したことだろう。

3代目ジムニーが発売されたのは何と20年も前のことなのだから。その後の長い年月の間、四駆のサブ・ジャンルが誕生したり、ルームランプが品よく天井にはめ込まれたりするなど、周りがどんどん変わっていくのを困惑しながら見守ってきたのだ。

レンジローバーと戦わせよう

ようやくジムニーは世代交代することになるが、その披露は間もなくだ。1970年のデビュー以来、わずか4度目のフルモデルチェンジとなる。

ここではこのクルマのキャビンがいかに悲惨であるかを述べたいわけではなく、陰のヒーローであり続けたこの四駆に最後の勇姿を見せてもらい、温かく送り出したいのだ。

直接的な競合車ではないレンジローバーを対戦相手に選んだのはなぜか。約1515万円するレンジローバーのオートバイオグラフィーにオプショナル装備品を取り付けたらスズキよりもはるかに高くつく。

だが、多くのひとにとってレンジローバーはオフロードカーの典型なので、ベンチマークだと言える。そして、ジムニーがいかに素晴らしく泥の中から這い上がってくるか、実際にオフロード対決をさせてみるのが一番の餞別になると思ったからだ。

現在販売されているオフロードカーの中ではおそらく最も安くて古いモデルと、最も高級で洗練された四駆の一騎打ちが繰り広げられることになる。

大抵のひとはジムニーにまともなオフロード性能が備わっているとは思わないかもしれない。小型四駆を好むひとというのはオフロードを走るためではなく、子供の送迎や、ちょっとした用事に使いたい、というひとも多いだろう。

しかし実際、ジムニーのシャシーは強度の高いラダーフレーム構造で低速レシオ用の副変速機も装備されているので、どんな泥道でも大概は上手く走り抜けることができるのだ。

わたし自身そこまでのオフロード愛好家ではないので、レスターシャー州の「Avalanche Adventure」というアクティビティー・クラブでジムニーの走りを目にするまでその真の実力を知らなかった。

どうせジムニーは負けるだろう

当日はわたしがレンジローバーで先頭を切って泥の中を走り、ジムニーが付いてこられるか確かめることになった。

無知なわたしが描いたのは、泥だらけの石切場でV8ターボ・ディーゼルの出力を上げて難なく緩やかな坂を駆け上がり、ちっぽけなスズキを運転するマット・プライヤーが坂の下で動けなくなったと無線で知らせてきたら大笑いし、贅沢なレザーシートに包まれて予定通りゴールする、という流れだった。

15分もかからないだろうと踏んでいたのでお気に入りの赤のトレーナーという普段着だったし、ウォーキングブーツを履いてこなかったことを後悔した。

このジムニーはトップ・スペックの1.3ℓSZ4バージョンで価格は約224万円、4気筒ガソリンエンジンは85.2psを出力する。しかも重量はたったの1090kgしかなく、レンジローバーのテールゲートよりほんの少し重い程度だ。

スズキには何も期待していないわたしがレンジローバーでリードし、プライヤーがすぐ後を追ってきた。まず手始めに、土手を右カーブする泥だらけの轍道へと向かった。

レンジローバーにとっては楽勝で、ミラーに映る小さな白いジムニーもぴったり背後に付けてくる。わたしはヒルディセントコントロールに車速の制御を任せ、タイヤがスリップした痕跡を残すことなく急勾配を下った。スズキもやすやすと滑るように下って追い掛けてくる。

忌々しい白いクルマを立ち往生させるためその後の10分間はあらゆることを試してみた。ブーツで歩いたら足が抜けなくなってしまうようなドロドロのぬかるみを突き進んだり、石切場にある二階建て相当の埃っぽい急斜面をレンジローバーで一気に上ったり、レンジローバーでさえボディをこすってしまうような深くてカチカチに固まった泥の轍道をバウンドしたりした。どこへ行こうにも、うっとうしいスズキはすぐ後ろから付いてくる。

数々の障害をくぐり抜けてきたジムニーには弱点がなさそうだが、上り坂でやっつけられるかもしれない、とわたしは考えた。目の前の坂はレンジローバーのルーフよりも低いが、重く粘着性がある泥の坂は急で鋭く、入り口は石切場の中でも最も湿った滑りやすい泥道だ。

真のオフローダーとしての資質

わたしはレンジローバーで傾斜路の麓に向かい、速度を維持した。轟音を立てて坂道に突入したいかつい2.6トンの野獣は、ほんの一瞬だけ上ったかと思うと激しく振動して停止し、アクセルをベタ踏みしている数秒間、4つのタイヤは空転した。見事にスタックしたのだ。

わたしはギアをリバースに入れて坂道から後退した。残念ながら勝機を逃してしまった。プライヤーとスズキが頂上まで上り切れば、記念すべき番狂わせの勝利を見届けることになる。その決定的瞬間がやってきた。

マットは少し停まってから85.2psを出力するジムニーのエンジンを全開にして発車した。小型の白いスズキはスピードが出るクルマではないので、坂道に向かってゆっくりと進んだ。

麓で上向きに跳ね上がった後、30度の斜面で重い泥に捕らわれてはまり、まるで逆さにひっくり返るかのように見えた。プライヤーもまた4輪をすさまじい勢いで空転させた後、その場から後退した。

勝負は互角だったが、マットはもう一度トライする気になった。スピードを上げれば成功率も上がると考えたようだ。腹立たしいことに、今回は泥にはまることなくトップまで上って勝ち誇ったように停止した。

わたしも再チャレンジしてみることにした。今回はもう少し強気でスピードを出してみたが、坂を上り始めるとわずかに左にスリップし、タイヤが激しく空転して車体が思わしくない角度に傾き、どうにも動けなくなった。驚くべきことに、小さなジムニーがレンジローバーでも乗り越えられない高さをクリアしたのだ。

しかし、マットのように熟練したオフローダーではないわたしにも責任の一端があることは認める。そして、わたしは他人の非常に高価な四駆をそれ以上泥の丘に打ち付ける気にならなかった。

とは言え、今回の勝負でジムニーが真のオフロードカーであることが証明されたので、わたしは実際に運転してみたくなった。

ジムニー、ケーターハムっぽい?

レンジローバーから乗り換えると室内は笑えるほど狭い。

まず、四輪駆動のローレンジに切り替える4WD-Lボタンを押して、仮免許中のひとのようにしゃくりながら発進した。

ローレンジの1速はすぐ吹け上がるので2速に上げたが、4000から6000rpmの領域を回転するエンジンはてんてこ舞いのような印象を受ける。それに対してレンジローバーは静粛で、アイドリング不調以外ではほとんどエンジンに問題が起きない。

ジムニーではバウンドしまくって投げ飛ばされそうになりながらもロック・トゥ・ロックが4回転のステアリングをグルグル回すことになる。

湿った泥道で発揮される細身のオールシーズンタイヤの牽引力は凄まじい。そして急勾配の泥道を駆け上がる時の四輪がスピンする感覚は最高だ。レンジローバーの静かなコーナリングに対して、ジムニーはまるで激しい暴動の最中にいるかのようで楽しい。

わたしはケーターハムがオフロードカーを造ったかのようだ、と感じた。ジムニーには余計なものが一切なく、素晴らしく実用的な性能が備わっている。

だからこそ3代目ジムニーは最後の脚光を浴びてしかるべきなのだ。長年の間、このクルマは最も有能で面白い四駆としてトップに君臨し続けてきたのだから。

中古のジムニーを手に入れるには?

販売期間が長い割には、中古のジムニーはそんなに多く出回っていない。1.3ℓのガソリンエンジンはタイミングベルトを走行距離約13万kmごとに交換する必要があるので、交換済みか否か確認してみると良い。

時速80km/hぐらいでタイヤがガタつく場合は単なるタイヤの重量不均衡ではなく、キングピンの摩耗やベアリングの疲弊、あるいは等速ジョイントの疲労などが考えられる。

四輪駆動に切り替わらない場合は、バキュームホースが破損しているだけかもしれない。最後に、底面に衝撃損傷の形跡がないか確認しよう。ラダーフレーム構造のシャシーは強度が高いが、壊れないというわけではないので。

2003年製ジムニー1.3ℓO2バージョン 約13万km 約23万円

O2バージョンには幌型の仕様がラインナップされている。幌を開けて丘を上れば泥を浴びることになるが。約23万円 以下のクルマは走行距離がそこそこある。

2004年製ジムニー1.3ℓMODEバージョン 約11万km 約45万円

販売業者によると、内装にハーフレザーと合金が使われたMode特別仕様車はジムニーの中でも特に好まれる。この時販売されていたクルマは状態が良さそうだった。

2013年製ジムニー1.3ℓSZ4バージョン 約2万km 約141万円

今回の比較テストで使用したのと同じトップ・スペックのジムニーには、CDプレーヤーやエアコンなどの最新設備が備わっている。中古車であれば約152万円以下で買える。

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