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なぜ市場では低迷も選ばれ続ける!? 自動車教習所でセダンが採用され続けるワケ

掲載 更新 11
なぜ市場では低迷も選ばれ続ける!? 自動車教習所でセダンが採用され続けるワケ

 国内のセダンの販売台数は、SUV人気に押され年々厳しいものになっているが、こと教習車となると、マツダの『マツダ2』もそうだが、わざわざ海外生産のセダンを教習車にして販売しているくらい、セダン推しとなっている。

 SUVが人気で、セダンの乗る人が少なくなった中で、変わらずセダンが教習車として採用され続ける理由とは何なのか? そのナゾについて考察していきたい。

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文/高根英幸
写真/MAZDA、TOYOTA、HONDA、Audi、Adobe Stock

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■現在教習車仕様として販売されているクルマは、セダン3車のみ

 筆者の自宅の周辺は道路環境が比較的整っており、近くの教習所以外の教習車もよく見かけるが、最近はほとんどがマツダの『アクセラセダン』だ。なぜアクセラなのかと言えば、まずはMTとATの両方が揃っているセダンが少ないことが、大きな理由だろう。今や普通免許用の教習車として販売されているのはトヨタ『カローラアクシオ』とマツダ『MAZDA2セダン』、ホンダ『グレイス』の3車種だけなのだ。

国産車で教習車仕様を販売しているのは3車種のみ。ただし、ホンダグレイスは既にベース車両の販売は終了しており、いつまで継続販売されるのか不透明である

 希望者は少ないとはいえ、AT限定免許のためだけに車両を設定する訳にはいかない。そうなると、MTとATでは同じ車種で教習をした方が、生徒には車両感覚が掴みやすくて、上達も速い。そう考えるとたとえ一般ユーザーへのMT車の販売比率は少なくても、教習車用にMT車を用意するのは、なかなかいい戦略なのではないだろうか。

 だが今はSUVが圧倒的に人気があり、免許取得後にSUVを購入したり、家族のクルマとしてSUVを運転する機会が多いハズだから、最初からSUVで運転の練習をしたほうが上達が速くて安全なのでは? そう思う人もいることだろう。

 実は教習車として使用できるクルマには制限がある。道路交通法で普通免許を取得する際に使用する教習車は車体の大きさが定められている。それは乗車定員5人以上の普通自動車(小型乗用車を含む)で、全長4400mm以上、全幅1690mm以上、ホイールベース2500mm以上およびトレッド1300mm以上となっているのだ。

教習所内を走る場合、様々なコースでの車両感覚の取りやすさや見切りの良さは大変重要。実際に視認しながら感覚を養っていく用途を考えると、教習車の選択肢は限られる(Josiah.S@Adobe Stock)

 しかしSUVでも車高が高いだけで、この数値自体はクリアしているクルマも多い。それなら使えるのではないか、と思うかもしれないが、教習の都合でSUVはあまり適さないのである。

■運転教習車としてセダンが優れているからこそ、教習所からも支持されている

 教習車としてセダンは優れた点が多いことが、まずはセダンが選ばれる理由だろう。低いボンネット高に低いシート高は、乗り降りしやすく、ボディの見切りや目の前の路面も見やすい。

 SUVでは既存の施設では見切りが悪いことが、運転を難しくしてしまう。一般道などと違い建物やガードレールなどがないS字カーブやクランクは、背の高いSUVでは路面の形状が掴みにくいのである。

今人気のSUVは意外に全長が短く、CセグのSUVすら教習車の条件を満たしていない場合もある。また着座位置がセダンにくらべて高く、路面状況の把握という点では不利になる

 ならばハッチバックや軽自動車で練習したい、という人もいるのではないだろうか。それは先の道交法で決まっている車体の大きさを満たさない可能性がある。それば昭和35年に定められた規格が古すぎるのが悪いのであって、それだけが問題なら改正すればいい、と思うかもしれないが、意外とそれは簡単なことではない。

 もし教習車が軽自動車やハッチバックだと、縦列駐車やクランクなどがだいぶ簡単になる。それは免許の取得基準が甘くなるということにもなるし、危険で不平等なことだ。もっとも昔は軽自動車限定の免許もあったのだから、今のように軽自動車の販売台数が乗用車の大半を占めるようなら、軽自動車限定の免許があってもよいかもしれない。

 ともかく教習車の場合、ドライバーからリアエンドまではある程度の距離を必要とするのだ。そして前方の見切りのよさなどを考えると、やはりほぼ5ナンバーサイズのセダンしか選択肢はないのである。

 そして「これまでと変わらぬ運転評価ができる」というのも教習所で運転を教える教官にとっては重要なことだろう。クルマの仕様が大きく変わってしまうと、これまでと同じ評価では運転の技術レベルが判断しにくくなる。

 各段階での運転評価の見極めを長年の経験で行なってきた教官にとっては、それはかなりの負担になり、現場は混乱することになるのだ。

 以上は教習する上での問題点だ。さらに教習所の都合というものも、当然考慮しなければならない。

■教習用の装備や耐久性を向上させた、教習車仕様をメーカーが用意

 前述のボディ寸法などに加え、教習車には定められた仕様や装備などがあるが、長年の慣例によって自動車メーカーが教習車仕様を用意していることも選択材料として大きい。タクシーとして使われるクルマにタクシー仕様の設定(LPG仕様など)があったように、教習車仕様という車両が存在しているのだ。

 最後にちょっと生々しい話をさせてもらうと、教習車は1台ずつ購入するようなことはほとんどない。大抵の教習所は何年かごとに一定台数の車両を入れ替える。これによってクルマの美観や信頼性を確保して、運転教習の品質を維持しているのだ。

 路上教習をする性質上、あまり老朽化した印象の教習車を使っていたら、地元の人はなかなか寄り付かないだろう。実際に路上で立ち往生や交通事故を起こしていなくても、免許を取ろうとする人はなるべく不安要素を取り除きたいものだ。それに同じ教習料金を払って入所するなら、新しい綺麗なクルマに乗りたいと思う心理があることも重要だ。

 そのため定期的な入れ替えをするのだが、まとめて購入すれば、当然1台ずつ購入するよりも値引き幅は大きくなる。教習車仕様は、そんな需要に対応するためにも専用品が作られているのだ。

 そのため装備類も個人オーナー向けより絞り込まれたものとなっており、そのいっぽうで教習車ならではの装備を充実している内容となっているのだ。例えば2019年に発売された、マツダの『MAZDA2セダン』(タイ生産車)をベースとした「マツダ教習車」の仕様を見ると、なかなか面白い。

「マツダ2セダン」ベースの「マツダ教習車」。タイ生産の車両に補助ミラーや助手席補助ブレーキといった教習車用装備を日本で装着。また、MT車はクラッチも強化され、耐久性を格段に高めている

 助手席の足元に補助ブレーキペダルが追加されているだけでなく、MT車はクラッチ板の耐久性を高めるなどの工夫が施されている。発進停止、それも初心者が何度も繰り返し行なうことを考えれば、これは大事なことだ。

 高速教習用やAT限定免許取得用に、輸入車を教習車として導入している教習所もある。これは輸入車ユーザーが多い都市部の教習所などで、免許取得後に購入しようと思っている輸入車ブランドのクルマに乗りたい、せっかく免許を取得するためにクルマに乗るなら、憧れのブランドを選びたいというユーザー心理を利用しているもので、その分費用をかけても集客に役立っているのだ。

より快適な教習生活?をウリとしている教習所の中には、輸入車を教習車として採用している例もある。ただし、高速教習等教習内容が限定されるケースもあるので、要確認だ


 クルマのボディサイズが決まっているように、クランクの道幅や縦列駐車のスペースなども道交法でキッチリと定められているから、教習車が大きいボディになるのは、教習を受ける点で不利となるから、こうした例は限定的だ。

 個人的にはMAZDA3セダンはボディ剛性が高く、乗り味もいいので、MAZDA2セダンにも乗ってみたい気がするのだが、一般に販売しても多くのドライバーに受け入れられることは難しいだろう。そうなると、今後はますますセダンの生産が減少していくことは考えられる。そうなったらCセグメントのハッチバックあたりに一気に変わるようなことも有り得なくはない話だ。

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みんなのコメント

11件
  • 昔はマークⅡセダンだったり、クレスタだったりしたんですけどね。
    近所の教習所2か所あって、片方はディーゼル車が教習車だったからエンストしにくくて教習時間オーバーしにくいって言われてた。
  • 見切りがしやすいってのはあると思うが、ある意味現実的ではないのかな。
    セダンが絶滅危惧種だし、おそらく免許取得後に乗る車は、ほぼセダン以外だし。

    自分の頃は、ほとんどクラウンセダン(コンフォートかどうかは覚えてない)だったな。街中走ってるタクシーと色以外(草色)では区別がつかなかった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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