■昭和に登場した「AE86」はどんなクルマだった?
トヨタのFRスポーツカー「86(ハチロク)」がフルモデルチェンジし、2代目となる新型モデルが2021年秋に発売される予定です。
新型モデルでは「GR」ブランドのモデルとなり、新たに「GR86」という車名で展開されます。
86といえば、かつてのコンパクトFR車であるトヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ(AE86)」に由来しています。
昭和に誕生して平成に復活し、令和に進化する86とはどのようなモデルなのでしょうか。
AE86を含む5代目「カローラ」、4代目「スプリンター」は、1983年(昭和58年)のフルモデルチェンジで登場しました。
当時は、世界的に多くの小型車がFRからFFに移行していく時期で、日産「サニー」やマツダ「カペラ」「ファミリア」はFFに移行しており、カローラとスプリンターのFF化は「最後のビッグネーム」と呼ばれていました。
しかもこのフルモデルチェンジでFF化されたのはセダン系のみ。当時のトヨタは、とくにハイパワーエンジン搭載車のFF化に慎重でした。
そのためか、カローラレビン/スプリンタートレノはFRのままでフルモデルチェンジを受け、上位グレードのエンジンは新開発の1.6リッターDOHC「4A-GEU型」を搭載。車両型式の「AE86」から、「ハチロク」と呼ばれました。
AE86は旧型モデルであるE70系のスタイルを継承し、2ドアクーペと3ドアリフトバックが設定されていました。
なお、エンジンは1.5リッターSOHC「3A-U型」も設定され、こちらの型式は「AE85」だったことから「ハチゴー」と呼ばれます。
AE86には3種類のグレードが設定され、装備を簡素化し、リアブレーキを初期制動力に優れるドラムブレーキとした2ドアクーペの「GT」、ステアリングギア比をクイックにして走りの性能を高めた3ドアリフトバックの「GTV」、デジタルメーターやパワーステアリングを始めとした豪華装備で、2ドアクーペと3ドアリフトバックの「GT-APEX」です。
このモデルチェンジのなかでも特筆されるのが、新開発の4A-GEUエンジンです。130馬力(グロス)を6600回転で発揮する高回転高出力型の特性で、それまで排出ガス規制対策でパンチを失っていた先代の「2T-GEU」エンジンから15馬力もパワーアップしていました。
レビンとトレノは、シャシは旧型から継承するもエンジンが130馬力と15馬力もアップしたことにより、モータースポーツベースとして大幅に戦闘力が向上。
限界性能が低いリアサスペンションとハイパワーなエンジンの組み合わせで、当時からドリフトマシンとして評価されていました。
しかし、直接のライバルとなった135馬力(グロス)を発揮する「ZCエンジン」を搭載したホンダ「シビック」や「バラードスポーツCR-X」などFF車はシャシ性能が高く、当時のAE86の評価は必ずしも高くはありませんでした。
しかし、レビンやトレノを購入したのは、モータースポーツ層だけではありません。
とくにレビンの2ドアクーペは「ミニソアラ」として、トレノの3ドアは「ミニセリカXX」として、若者向けのおしゃれなクーペモデルとしての需要にも十分対応しました。
ほかにも、居住性が良好なことからカローラの2ドアセダンモデルとしての需要や、女性の通勤車としても売れたのです。
なお、レビンとトレノの違いは、レビンが固定式ヘッドライト、トレノがリトラクタブルヘッドライトと、外観が区別されています。
※ ※ ※
そんなレビン・トレノも、1987年のフルモデルチェンジでFF化され、「AE92型」が登場。こちらも2代目となった「ソアラ」のミニ版として、おしゃれなクーペを求める層に人気が高まりました。
AE86が旧型になったことから、乗り換える人が増えてきたのもこの頃です。さらにカローラ・スプリンターが「E100型」になった後の1992年頃になると、安価で程度の良いAE86の中古車が多数出回るようになってきました。
そのため、峠道でクルマを壊しながらでも腕を上げようとする「峠の走り屋」にも好んで使用されるようになっていきます。
さらに1995年には車両法が改正され、11年超車の車検有効期間が2年間になりました。車検の有効期間が1年間から2年間になると、古いクルマでも維持しやすくなります。
また、重要保安部品からサスペンションスプリングが除外され、大腕を振ってサスペンションの改造が出来るようになっていきました。
そこでAE86は、クルマを改造しては走りに行き、腕を上げるための道具としてうってつけのクルマとなったのです。
翌1996年にはAE86(トレノ)が峠道で活躍するマンガ「頭文字D」が発売され、以後年々カルト的な人気が高まっていきました。
中古車でのAE86は、1991年から1995年頃までが底値時期でしたが、今では新車価格の数倍にもなってしまい、もはや骨董品ともいえるようになったAE86は、気軽に乗れるスポーツクーペではなくなっていったのです。
■平成に復活し、令和に進化したトヨタ「86」
2012年(平成24年)に、現行モデルのトヨタ86が発売されました。発売前からコードネーム「FT-86」としてモーターショーなどで展示され、FRスポーツカー再来で盛り上げたなかでの登場でした。
トヨタとスバルの共同開発によって誕生したFRスポーツカーとして「ハチロク」という名前が復活。スバルでは「BRZ」として販売されます。
エンジンはスバル製の水平対向4気筒「FA20型」で、直噴とポート噴射を併用するトヨタの「D-4S」システムと吸排気連続可変バルブタイミングを採用。トランスミッションは6速MTと6速ATが組み合わされました。
その後も86は、特別仕様車の設定やアップデートが施されるなど、常に進化を続けてきました。
毎年おこなわれる年次改良では、サブフレームを固定するつば付きボルトのつばを厚くしたことや、ボディ後部の剛性向上、MT車のエンジンをパワーアップなどが挙げられます。
面白いところでは、アルミテープによる放電チューニングが施されるという改良もありました。
86が特別だったのはクルマだけではありません。登場当初、トヨタは販売店を「AREA86」という専門店形式で展開。店舗自体に走りのクルマを販売する雰囲気づくりをおこなったのです。
AREA86はその後、「GR GRAGE」として発展し、さらにトヨタ自身も各車に「GAZOO」や「G’s」、そして「GR」などといった走りのグレードを設定。
86にも、GAZOO Racingが手掛けたコンプリートカーの「GRMN」(100台限定)やスポーティグレードとして「GRスポーツ」などが投入されました。
そして2021年(令和3年)にフルモデルチェンジし、新型GR86へと進化します。
エンジンの排気量は2.4リッターにアップし、6速MTと6速ATの展開は継続。パーキングブレーキもレバー式を継承しており、電動化が急速に進む時代においても古き良き走りの性能を演出しています。
なお、現代のスポーツカーでも重視される安全装備として、安全運転支援システムの「アイサイト」がAT車に搭載されました。
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現行モデルのオーナーのなかには、新型モデルの購入する人もいるでしょう。そして中古車市場に86やBRZが潤沢に流通し、販売価格がこなれてより購入しやすくなっていくことが予想されます。
安くなった中古車は、予算が限られている若者だけでなく、セカンドカーやサードカーとしての需要や、子供の手が離れて自分が楽しめるクルマを求める人が購入するようになるかもしれません。
これは86登場当初に開発設計責任者の多田哲哉氏がいっていたことで、「中古車がスポーツカー市場をより広めてくれる」という理論です。
AE86が手放されて市場にたくさん流通していた1990年代初めのように、現代の86も若者からベテランドライバーまで、多くの人に「スポーツカーやスポーティカーも良いね」と感じてもらえるようなクルマになるのではないでしょうか。
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みんなのコメント
スプリンターとかで良くない?
20年以上、時々見かけていたのに、ここ2年くらい見ない。
盗難にあってなければいいのですが…。