「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、レクサス LSだ。
レクサス LS(2012年:マイナーチェンジ)
2006年にレクサスのフラッグシップとして誕生したLSが6年目に入って(編集部註:2012年)ビッグマイナーチェンジを受けた。CT200hから始まったスピンドルグリルも違和感なく、レクサスの新しい顔が明確になった。インテリアも12.3インチの大型カラーディスプレイとリモートタッチを中心とした新デザインに一新された。
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試乗したのはLS600hのFスポーツだ。これはもっともスポーティで、走りのための装備も充実。全高が10mm下げられたことと相まってドライバーズカーになった印象だ。タップリしていながらホールド感の良いドライバーズシートに座ると、ややヒップポイントが高い。運転しやすいし視界も良いが、もう少し下げたいところだ。ディンプル形状のハンドルは握りやすく、かつバリアブルギアレシオのために少ない操舵量で小回りも意外なほど効く。操舵力は重めで個人的にはもう少し軽い方が好ましい。
ドライブセレクトは従来のノーマル/エコ/スポーツS/スポーツS+に加えてコンフォートの5種類の走行パターンが選べる。エコではエンジンやエアコンの制御を行うためにアクセルの反応が鈍く、パワー感はそれほどないが、踏み込むとノーマルに匹敵する。コンフォートはダンパーを緩くし、スポーツSはノーマルのダンパー制御に加えてエンジンレスポンスを向上、さらにスポーツS+ではステアリング操舵力とギアレシオを早くし、ダンパーも硬くなる。
使いやすいのはノーマルとスポーツSで、コンフォートはウネリなどで姿勢制御が甘くなる。突き上げは緩められるので、市街地をのんびり走るときには良いだろう。いずれのモードも極端に振られていないので違和感はあまりなく、LSらしい快適なドライビングができ、アクティブスタビライザーを採用しているFスポーツでは、スポーツS+モードは高荷重時にもロールを良く抑えている。
レクサスのフラッグシップにふさわしい全方位の進化
LSの使用条件を考えると、ほとんどのドライバーが満足のできるハンドリングを得たと言える。これにはボディの剛性アップの効果も小さくない。溶接方法を変更し、ステアリング支持部、エンジンサポート部、トンネル部、前後サスメンバー部などに強力なブレスを加えて、ボディ剛性は一気に欧州車に肩を並べるレベルに達したことが大きな効果も上げている。ハンドル操舵をしたときの追従性が一気に高まり、ドライバーとの一体感が強くなったのは嬉しい。
また、もともと静粛性には定評があるLSだが、ロードノイズのピーク音が下げられて、さらに磨きがかかった。しっとりとした乗り心地とともに快適な居住空間はレクサスの真骨頂だ。
パワートレーンは5L V8+モーターでこれまでと変わらないが、相変わらず速い。6ポッドのブレンボ製ブレーキはこれに見合うだけのストッピングパワーを備えており、踏み応えもカッチリして好ましい。
安全装備についてもレクサスは地道に進化させている。オプションだが衝突回避ブレーキを一歩進めて、歩行者の衝突回避にも対応。実際に体感したが、40km/h走行だと歩いて横切ろうとしている人を想定した人形をミリ波レーダーとステレオカメラで感知し、0.7Gのブレーキをかけて見事に止まる。カメラが見える限りはブレーキが作動するという。
さらに夜間の歩行者事故が多いことに着目して、ハイビームを中心に対向車や先行車があった場合、単眼カメラとハイビームの遮光システム、それに首振りヘッドランプの機能を使って道路のわきだけを照射するシステムも開発された。これらの技術はいずれ低価格のクルマにも展開されることを思うと心強い。
レクサス LS600h Fスポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:5090×1875×1465mm
●ホイールベース:2970mm
●車両重量:2270kg
●エンジン:V8 DOHC+モーター
●総排気量:4968cc
●エンジン最高出力:290kW(394ps)/6400rpm
●エンジン最大トルク:520Nm(53.0kgm)/4000rpm
●モーター最高出力:165kW(224ps)
●モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・84L
●JC08モード燃費:11.6km/L
●タイヤサイズ:245/45R19
●当時の車両価格(税込):1230万円
[ アルバム : レクサス LS600h はオリジナルサイトでご覧ください ]
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