自宅納車がなくなった今「納車費用」はそもそも存在しない
新車購入の際に計上される販売諸費用のなかでカット可能なものとして、車庫証明申請及び交付手続き代行費用(以下車庫証明費用)と納車費用がある。
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車庫証明費用は文字通り、セールスマンが警察署への車庫証明申請と、その後交付された際の引き取りを購入者に代わって行う費用であり、これは購入者自身が行えばカット可能となる。ただOSS(ワンストップサービス/オンラインを活用した新規登録の一括申請システム)対象地域の場合は、“OSS手続き手数料”などとして一括計上されるため、車庫証明費用分だけをカットすることはかなり難しい状況となっている。
納車費用とは、新車を購入者の自宅や勤務先などへ回送して納める場合にかかる手数料となる。これも店頭に引き取りに行けばカット可能となっている。
昨今の販売現場では、各店舗におけるセールスマンの数がギリギリとなっている。納車はどうしても土曜・日曜の週末に集中しがちで、しかも大安と重なればまさに納車ラッシュとなってしまい、お客の家などへ納車に出かけていれば、店舗にセールスマンがほとんどいなくなり、開店休業状態になってしまう。そのため、今では長い付き合いのある“お得意様”などの例外を除けば店頭納車を大原則としている店舗がほとんどとなっている。「何かと物騒な世の中なので、セールスマンが自宅にくるのを嫌がるお客様も多く、そのようなこともあり店頭納車が主流となっています」とは業界事情通。
そのため、初回見積りの段階から納車費用を計上しないディーラーがある一方で、基本的に店頭外納車を行わないのに、初回見積りに納車費用を計上するディーラーもある。「もともと店頭納車しか行わないので、納車費用など徴収する気はないのに、『店頭納車をご希望なので納車費用はカットします』として、あわよくば値引きに積極的なイメージを植え付けようとしているようなのです」とは前出の事情通。
初回見積りから納車費用を計上しないところのほうが、どちらかといえば良心的なイメージが強い。始めから徴収する気もないのに納車費用を計上しておき、あえて商談途中でカットするディーラーは、「ほかにも何か“小細工”があるのでは?」と疑いたくなるし、事実ほかの項目についても細心の配慮を持ってチェックしたほうがいいだろう。
限りあるスタッフのなかで、効率的な販売活動を行いたいがゆえに店頭納車が主流となっているのだが……、販売現場では「お客様の自宅などへ新車を回送する途中での事故などのトラブルが起きるリスクを回避する意味も大きいです。気心の知れたお得意様でなければ、自宅納車などはトラブルが怖くてできないのも現状です」というような話も聞く。
筆者が少年時代だった遠い昔には、自宅納車が当たり前であった。いまでは代替え購入(下取り車があって新車に乗り換える)がメインとなったが、その当時は初めてマイカーを持つといったパターンのほうが多く、そのためセールスマンが新車を回送してくる自宅納車がメインでもあった。
店頭でしかも、新車引き渡し時に花束を渡して、店舗スタッフ総出で送り出すなど“セレモニー化”も目立つ納車だが、本来は注文した車両になっているのかを確認して引き取る事務作業なのである。装着されているナンバープレートや車台番号が車検証表記のものと同じか(冗談ではなく稀に異なることもあるのだ)。ボディカラーや頼んだオプションは間違いなく装着されているかの確認。
そしてもっとも大切なのが外観の傷の有無と内装の汚れである。そう滅多にあるものではないが、新車に傷があるケースもあるのだ。さらにセールスマン同乗でディーラー近くを軽く試乗して、異音などの不具合がないかを確認する。そして問題がなければ初めて新車を受け取り無事納車となる。
仮にひとつでも不具合があれば、その場での新車の受け取りは保留にすること。そのまま受け取れば、仮に傷があったとしても納得して受け取ったことになってしまうのだ。
受け取りを保留にしたあとは、ディーラーとどのような解決策があるかを話し合うことになる。車両交換はなかなか現実的に難しいし、たいていはそれほど大規模な傷でもないので、それほど高額ではないディーラーオプションの無料での追加装着などで事態の解決を模索することになるだろう。レア中のレアなケースでは、新車なのに板金修理済みやパネル交換してあったり、小傷が多すぎて、納車前にミクロン単位で研磨をかけたなどというケースも過去にはあったと聞いている。
最近は屋内に納車スペースを設ける店舗もあるが、蛍光灯やLEDなどの室内灯では傷の有無は確認しにくいので、必ず外光で確認すること。太陽が真上にくる正午前後がベスト。雨天や夜間の納車は極力避けることをおすすめする。
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