2021年7月14日、欧州委員会が2035年にハイブリッドを含むガソリン車の販売を禁止する方針を発表した。本当にこんなことは可能なのか?
欧州でHV車が販売できなくなったら、日本の自動車メーカーの新車戦略は変わるか、モータージャーナリストの国沢光宏氏が解説する。
ホンダeオーナーが激白! 航続距離200km台では使いものにならない!? EVの航続距離は何kmだったら満足するのか?
文/国沢光宏
写真/VW、SGMW、テスラモーターズ、Adobe Stock(トビラ写真:Adobe Stock@agrarmotive)
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■なぜこんなに電動化を急ぐのか?
堰を切ったように各自動車メーカーがEVシフトを急激に進めている。写真はVWのEVブランド、ID.の先陣、ID.3
2019年4月に導入されたロンドン市内中心部に世界で最も厳しい乗入れ規制である「超低排出ゾーン」(Ultra Low Emission Zone、”ULEZ”)の看板。このゾーンに規制対象の乗用車・オートバイで乗り入れると12.5ポンド(約1900円)、大型トラックやバスで100ポンド(約15000円)が徴収される(Adobe Stock@alena)
地球規模での気候変動を防止すべく二酸化炭素の排出量削減を目指す欧州委員会は、突如「2035年以降ハイブリッドを含むエンジン車の新車販売をやめる」という方針を打ち出した。
といってもすでに2025年からエンジン車の販売を禁止する法案を採用しているノルウェーを始め、多くのEU加盟国は遅くとも2040年のエンジン車絶版を打ち出している。
昨今、一段と二酸化炭素の排出量について厳しくなっているため、2035年と決めたのは個人的に驚かない。そもそも我が国だって2050年以降、ガソリンや軽油の販売をしないと公約している。
既存のエンジン車はハイブリッドを含め、2050年以降使えなくなることを意味する。クルマの寿命を15年と考えたら、2030年代中盤に買わなくなるだろう。
以上、法規的な側面であり、決めるだけなら簡単ともいえる。はたしてエンジン車の新車販売停止などできるのだろうか?
カーボンニュートラルを2050年に目指す、転換イメージ(出典:資源エネルギー庁)
主要国の電動化政策(出典:資源エネルギー庁)
■主力になるだろう電気自動車普及のためのハードルとは
上海通用五菱が販売している宏光MINI EV。ボディサイズは全長2920×全幅1493×全高1621mm
以下、様々な側面から考えてみたい。主力になるだろう電気自動車です。電気自動車普及のためのハードルは4つくらい考えられる。現時点で最大の課題は車両価格。みなさん「電気自動車は割高」だと認識してます。
2つ目は航続距離に代表される実用性能の低さ。3つ目が電気自動車を走らせるための電力をどうするのか、という点。
4つ目として希土類を使う電池やモーターを大量に作ったら資源が枯渇し高騰するというもの。電気自動車を否定する人たちは少なくない。ネットで電気自動車を調べると、否定する記事の多さに驚くと思う。
それぞれ考察してみたい。価格だけれど、プジョーe208などを見ると、すでに最新の電気自動車は補助金を使い、ガソリンと電気のエネルギーコストの差を考えたら、普通のクルマと同じレベルになっている。
みなさん「生涯コスト」など考えないため、電気自動車はイニシャルコスト(最初に払う金額)の高さだけ見てしまう。
とはいえガソリン車とトントンくらいなら、利便性に課題を抱えている電気自動車は選ばないと思う。電気自動車、イニシャルコストでガソリン車並みにならないと普及しないと考えます。そんな時代になるかと聞かれたら「遠からずなると思う」。
ここにきてバッテリーは急速なコストダウンが始まった。驚くほど安くなってきた。なぜコストダウンしてきたのか? 2つ目と4つ目のハードルとも関係するのだけれど、格安&希土類を使わず耐久性抜群という『リン酸鉄リチウムイオン電池』が普及し始めたのだった。
この電池、希少素材の使用量、極めて少ない。そして燃えない。寿命にいたっては下を見て3000回の充放電性能を持つという。1充電100kmとすれば、30万kmだ。
バッテリー容量9.3kWh、NEDCモード1充電あたりの航続距離120kmのエントリーモデルが約45万円(暖房のみ)。13.9kWh、170kmの中間グレード(エアコン付き)が約50万円、上級グレード(エアコン付き)が約60万円
世界のベストセラー電気自動車になったGM五菱汽車の『宏光MINI』は、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用することで新車価格約60万円(上級グレード)とし、同等の性能を持つガソリン車より明らかに安価。寿命だって長い。リン酸鉄リチウムイオン電池、急速に普及が始まっており、数年後は安くて優れた性能を持つ新世代電気自動車もたくさん出てくる。
ちなみに上海ギガファクトリーで生産しているテスラのモデル3はリン酸鉄リチウムイオン電池を採用している。満充電航続距離は350kmほど。3000回の充放電性能を持つため、クルマとしての寿命は100万km近いということ。希少素材を使わないモーターなど開発されており、電気自動車を大量生産しても問題なくなると考えていい。
パナソニック製から中国CATL社製バッテリーを使う上海ギガファクトリー製のテスラモデル3。2021年2月17日、テスラモーターズジャパンは大幅な値下げを行い、モデル3のスタンダードレンジプラスは82万円値下げされて429万円、モデル3ロングレンジは156万2000円値下げされて499万円
3つ目の電力事情は、2021年の状況を考えたら「その通り」だと思う。今の電力事情のまま電気自動車が4000万台走り出せば電力不足になります。
ただ文頭に書いた通り、欧州で14年後の2035年。日本でも同じ時期から電気自動車の販売台数が急増する目算になっている。そして電気自動車だけが純増するのは2035年以降になるだろう。
■我が国では遅くとも2022年末までに次世代のエネルギー戦略が決まる
一方、動きの鈍い我が国でもついに政府が危機感を持ち始めており、遅くとも2022年末くらいまでに次世代のエネルギー戦略を決めると思う。そのなかにはモビリティの電気化も含まれているだろう。
そもそも家庭用の太陽光発電規模で、クルマ1台くらい動かせる電力をガソリンのコストより安く作れる。エネルギーの自給自足すら可能なのだ。
現在、給電設備を持たない集合住宅においても数年後に国が設置を義務づけていくと考えていい。あっという間に標準装備になるだろう。
少なくとも10年スパンで見ると乗用車についていえば、電気自動車がスタンダードになるためのハードルなし。繰り返すが2021年8月時点で評価すれば、課題山積のためガソリン車と勝負できないです。
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